研究課題/領域番号 |
22K02197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室) |
研究代表者 |
堀川 真希 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究参事 (50588465)
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研究分担者 |
永岡 昭二 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主幹 (10227994)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | シルク / フィブロイン / PEDOT / 導電性高分子 / 導電材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、申請者が以前開発した導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/硫酸化セルロースナノファイバー(PEDOT/s-CNF)とシルクをコンポジット化して、導電性シルクを開発する。シルク表面へのPEDOT直接固定化についても検討する。シルクタンパク質であるフィブロインの二次構造を制御(ランダムコイル、αヘリックスおよびβシート)して、PEDOT分子を配向させることにより、高導電性シルクの開発を行う。導電性シルク繊維は無機物がコーティングされた既存の導電性繊維と比べて柔軟性や吸湿性が高く、シルクの特性を生かした着心地が良いウェアラブルセンサーとしての利用が考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究では、申請者が以前開発した導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/硫酸化セルロースナノファイバー(PEDOT/s-CNF)とシルクをコンポジット化して、シルクの導電化を行い、ウェアラブルセンサーへの展開を目指している。令和4年度の目標は、フィブロインとPEDOT/s-CNFの混合比を変えてフィブロインとPEDOT/s-CNFのコンポジットフィルムを作製し、フィブロインの二次構造の解析と導電特性を評価することであった。 フィブロインは臭化リチウム水溶液に溶解した後、透析脱塩することによりフィブロイン水溶液を調製した。PEDOT/s-CNF溶液は既存の方法により調製した。フィブロイン溶液とPEDOT/s-CNF溶液を混合比が100:0、95:5、90:10、80:20、70:30(固形分重量比)となるように混ぜ合わせ、常温常圧にて乾燥させてコンポジットフィルムを作製した。得られたフィルムのFT-IR測定により、フィブロインの二次構造を評価した。FT-IR測定の結果、フィブロインに対するPEDOT/s-CNFの混合比が大きくなることによって、フィブロインはβ構造を取りやすくなる傾向を示した。PEDOT/s-CNFは分子内に硫酸基を有しており酸性を示す。フィブロイン溶液に対してPEDOT/s-CNF溶液の添加量が多い程、コンポジット材料のpHは酸性側に傾き、フィブロインの二次構造がランダムコイルからβ構造に転移したことが考えられる。フィルムの表面抵抗値と膜厚を測定することにより導電性を求めたところ、PEDOT/s-CNF含有量が多い程、導電性が高くなる傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の目標は、フィブロインとPEDOT/s-CNFの混合比を変えてコンポジットフィルムを作製し、フィブロインの二次構造の解析と導電特性を評価することであった。臭化リチウム水溶液にフィブロインを溶解して透析脱塩を行い、フィブロイン水溶液を調製した。s-CNF水溶液にEDOT モノマーを加えて酸化重合を行い、透析することによりPEDOT/s-CNF溶液を調製した。フィブロイン水溶液とPEDOT/s-CNF水溶液を混合比100:0、95:5、90:10、80:20、70:30(固形分重量比)となるように混ぜ合わせ、シャーレに入れて常温常圧で乾燥させてフィルムを作製することができた。得られたフィルムのFT-IR測定により、フィブロインの二次構造の評価を行った。フィルム中のPEDOT/s-CNF含有量が多い程、アミド結合由来のピークが低波数側へシフトしており、フィブロインがランダムコイルからβ構造に転移していることが示唆された。PEDOT/s-CNFは酸性であるため、添加量が多いほどコンポジット材料のpHが酸性に傾いたことが影響していることが考えられる。4端子法の低抵抗計を用いてコンポジットフィルムの表面抵抗値を測定した。膜厚を測定して導電性を算出したところ、PEDOT/s-CNF含有量が多い程、導電性が高くなる傾向を示した。コンポジットフィルムの導電性に関するフィブロインの二次構造の影響については、コンポジットフィルムの組成比を一定にした状態で、フィブロインの二次構造のみを変えることが必要であるため、調製条件については今後検討していく必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の目標は、硫酸化フィブロインと導電性高分子PEDOTを複合化してPEDOT/硫酸化フィブロインを調製し、二次構造と導電性を評価することである。フィブロインの硫酸化により、フィブロイン自体に硫酸基を直接導入して、硫酸化フィブロインを調製する。硫酸化フィブロインの元素分析により硫黄含有量を測定し、硫酸基の導入率を算出する。硫酸化フィブロイン水溶液中でEDOTの酸化重合を行い、PEDOT/硫酸化フィブロインコンポジット材料を調製し、フィルム化を行う。PEDOT/硫酸化フィブロインのコンポジットフィルムのFT-IR測定およびXRD測定により、フィルム中のフィブロインの二次構造の評価を行う。フィルムの表面抵抗値と膜厚を測定し、導電性の評価を行う。二次構造と導電性の関係についても解析を行う。 上記実験と並行して、PEDOT/s-CNFをシルク生地に直接的にコーティングする方法についても検討し、導電性繊維の開発を進めていく予定である。
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