研究課題/領域番号 |
22K02229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
芥川 祐征 岐阜大学, 教育学研究科, 准教授 (80757542)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 校長免許状 / 現職教育 / 戦後教育改革 / 教育委員会法 / 規則制定権 / 教育職員検定 / 教育職員免許法認定講習 / 日本教職員組合 / 学修単位認定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本で校長養成が制度化されていた戦後初期(1949年~1954年)に焦点を当て、校長候補者を対象とした現職教育制度における学修単位の認定方式について解明することを目的とする。具体的には、①大学の非正規課程(研究生・科目等履修生・公開講座・通信教育)の受講や、②自主的な研究集会(全国・地方ブロック)の参加に対して、③校長免許状取得のための学修単位として認定(教育職員検定)する場合の基準・体制を明らかにする。従来の研究では、主として日米政府レベルの文書史料をもとに諸制度の立案過程が解明されてきたのに対し、本研究では全国各地に点在する地方レベルの文書史料をもとに運用過程を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度においては、校長養成が制度化されていた戦後初期日本(1949年~1954年)に焦点を当て、現職校長・校長候補者を対象とした現職教育制度の運用過程の一端を明らかにした。まず、1949年度の時点では一部自治体において文部省・国立大学の協力を得て校長講習が開設され、必修科目について単位付与(credit)がなされていたが、1950年度の時点では乏しい財政的条件の中で認定講習を全国的に展開せざるを得なかった。そのため、受講者の抱える経済的・地理的・時間的制約が次第に顕在化したことで、日本教職員組合による社会運動の要請が都道府県教職員組合にも波及し、認定講習受講拒否闘争および受講者旅費増額運動が全国各地で展開されるようになった。 これに対して、校長免許状の取得機会が次第に多様化していった。すなわち、従来のような認定講習に加えて、①大学の指導と承認を受けた教育研究団体の講習会・研修会の受講、②講習内容が準拠した各郡市・県教育委員会の主催する講習会・研究会の受講、③実施対象・主催者を制限・拡大した諸講習の受講、⑤各論的な実務講習の受講、⑥一般教諭を対象とした認定講習の受講を通じて、所要単位を修得できるように緩和された。 これらを受けて、都道府県教育委員会においては、①基礎資格、②一定の勤務年数、③現職教育等において修得した単位数をもとに教育職員検定が行われ、各候補者には免許状の種目ごとに書類(願書、個人調書、基礎資格・学修状況に関する証明書)の提出が求められた。その場合、検定の具体的な手続・過程および校長免許状の授与基準については、教育委員会規則によって定められるはずであった。しかし、上記の認定講習受講拒否闘争の全国的展開を受けて、文部省から都道府県教育委員会に対して、法令の趣旨や事務処理方法に関する「免許事務連絡協議会」を通じて規格化がなされるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、4年間の研究計画のうち1年目に当たり、戦後初期日本の現職教育制度における諸講習・講座の開設主体として、国立大学と都道府県教育委員会の双方に焦点を当てて研究活動を進めることができた。このことについて、当初の研究計画どおり「大学における研究生・科目等履修生への現職派遣状況」を主題として、校長養成を担う国立総合大学(旧帝国・文理科大学)の運営条件を解明するために、「辻田力旧蔵資料」(国立教育政策研究所所蔵)、「森戸辰男関係文書」(広島大学文書館所蔵)、『教育刷新審議会会議録』等を蒐集・分析した。そして、当初の研究計画では予定していなかった「都道府県教育委員会の免許検定事務・人事行政事務」に関しても、諸史料をすべて蒐集・分析した。すなわち、各都道府県における校長免許状の学修単位認定の実態を解明するために、46都道府県(琉球政府は除く)の教育委員会規則「学校教育法施行細則」「公立学校処務規程・職員服務規程・就業規則」「教育職員免許法施行細則(教育職員免許状に関する規則)」「教育公務員採用志願者名簿に関する規則」「教員検定審査委員会規則」を対象とした。また、校長候補者(仮免許状取得者)の登用傾向を解明するために、文部省調査局統計課『学校教員調査報告書』『学校教員需給調査報告書』の蒐集・分析も完了している。 これらの戦後教育改革に関する史料については年間で12,014枚も分析してきており、その成果として5篇(うち査読付き論文1篇)の学術論文を執筆した。従来の先行研究では、日米政府レベルの文書史料をもとに同制度の理念および創設・改廃過程が解明されてきたが、本研究では戦後の教育行政改革が地方分権を基本理念としていたことに鑑みて、新たに都道府県レベルでの現職校長・校長候補者を対象とした現職教育制度の運用過程の一端を明らかにした。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、4年間の研究計画のうち2年目に当たり、戦後初期日本の現職教育制度における諸講習・講座の開設および所要単位の付与に関する規制緩和の実態を明らかにしていく。すなわち、戦後教育改革においては当初から国立総合大学(旧帝国・文理科大学)こそが校長養成機関として構想されていたが、全国的な現職校長の人員不足を背景として、講座開設方式・科目開講形態・単位付与基準が多様化していった。そのため、まずは「大学公開講座・通信教育の運営とカリキュラム」を主題として、校長免許状を取得するための代替的な課程として、①地方国立大学(教育学部・学芸学部)の大学公開講座、②私立大学(日本大学・法政大学・玉川大学・慶應義塾大学・日本女子大学)の通信教育課程の実態を解明するために、各大学の学内文書(各大学文書館所蔵)を分析する。また、大学教員の力量形成過程を解明するために、教育学部教授講習に関する史料群も分析する。 そして、「免許法認定講習・認定通信講習の運営とカリキュラム」を主題として、各都道府県教育委員会による校長講習の代替的課程として位置づけられていた認定通信講習(遠隔地の勤務者を対象)の実態を解明する。そのため、各自治体の『教育委員会時報』『教育要覧』『教育広報』等(各公立図書館所蔵)を対象として、当時の現職校長・校長候補者にとって主たる単位修得方法であった校長講習との比較により分析する。さらに、「全国・地方ブロック研究集会の討議内容と運営条件」を主題として、当時の現職教員が自主的に参加していた研究集会(全国・地方ブロック)の討議内容と運営条件を解明するために、各集会の『研究集会要項』『研究集録』を分析する。また、研究集会の講師は教育指導者講習(IFEL)修了者が担当していたため、それぞれのIFEL『講習小史』『研究集録』『修了者名簿・受講者評価』(各大学文書館所蔵)もあわせて分析する。
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