研究課題/領域番号 |
22K02233
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤田 雄飛 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (90580738)
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研究分担者 |
茂見 剛 福岡こども短期大学, その他部局等, 講師 (90971557)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 人間と環境 / 身体 / テクノロジー / 制度 / 発達 |
研究開始時の研究の概要 |
人間を理性的・意識的に思考し生きる存在とする限り、身体として生きる側面は軽んじられてしまう。しかし、人間は周辺に開かれた環境のなかで身体的な存在として様々に影響を蒙りながら生きているのであり、そこには身体による微細な調整に伴う微細な学習と発達が生じている。そうした意識されざる相において生じる人間と環境の相互作用の視点から発達や変容について理論的に検討する。
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研究実績の概要 |
今年度は主に2つの研究に着手した。①人間の身体と環境との間において、技術がどのような役割を果たすのかについて検討を行う研究、②環境における秩序を問い直す契機についての研究である。 ①では、フェルベークの技術に関する倫理学研究を参照しながら、技術批判の系譜では、技術が人間からその主体性を奪うという忌避感において、従来の枠組みが技術と人間という二つの領域を前提としてきたが、今日技術は人間の生活において本質的な役割を果たし、人間と技術の根源的な相互浸透を考える必要がある。人間と技術とはハイブリッドな性質として環境のなかで行為しており、身体は技術を纏うことで環境との相互的な関係性を構築している点を、メルロ=ポンティの身体図式論および習慣の獲得について検討した。また、今日のテクノロジーの進化によって身体拡張の技術が現実化している。そうした技術を纏う身体の意義について、「技術と身体ーテクノロジーとの接続による世界-技術-人間の変容についてー」として九州教育学会においてラウンドテーブル発表を行った。 ②では、ある環境のなかで学校という場所が有する意義について検討するために、フーコーの「ヘテロトピア」の概念について検討を行っている。フーコーが空間論を分析する際に示した「ヘテロトピア」の概念は、都市空間の中にある学校がもつ意義について検討するための重要性を有している。通常の生活空間に対して現実的な異議申し立てを突きつけるような異質な場として学校を捉えるとき、社会秩序が自明とするような価値観を問い直す意義が学校にはあることが示されうる。学校内部での実践的な意義ではなく、空間論的な意義について検討することは、学校をその周辺環境や地域との関係性のうちで考えるための理論的基盤となる。その成果については福岡市アジア都市研究所の「都市セミナー」で講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究においては、特に技術と身体の関係および環境における秩序を問うことを目的とした研究を行った。特に後者については昨年度において次年度の研究として計画していたものであるフーコーのヘテロトピアの概念を検討している。昨年度からの進展として教育哲学者のマシュラインおよび哲学者のランシエールがヘテロトピアを学校を語るための概念として用いていることを確認することができている。その分析のための基本的な枠組みを構成することができているため、次年度は論文として成果を発表することが可能になることが予想される。また、技術と身体との関係性については、フェルベークの技術倫理学を扱っているが、メルロ=ポンティの身体図式論や身体性の概念との接続が充分に出来ているとは言いがたい。その点を今後の課題としており、論文化のためにまだ検討の余地を残している。そのため、おおむね順調に進展しているが、計画以上の進展とは言えないと考え、上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画としては、ヘテロトピアに関する研究を論文とすることを目指す。特にマシュラインとランシエールの文脈を踏まえたうえで、学校の空間論を明らかにし、その上で環境における教育の場の意義を根源的に問い直す作業に着手していくこととする。 また、人間と環境を相互的な関係性のうちで捉え、それらを全体的な体系として捉えるために、メルロ=ポンティの身体論およびギブソンの生態学に関する理論研究を継続する予定である。また、ギブソンの文脈を引き継ぎながら人間の成長や教育的な視点に立つエドワード・リードの研究、さらには教育と人類学の同型性に注目しながら注意の教育という図式を提示する人類学者のティム・インゴルドの研究についても検討を行いたい。 また、研究分担者の茂見剛氏とともに、デューイ哲学に関する研究に共同で取り組むなかで、人間と環境との「コーディネーション」という概念の意義を検討する予定である。茂見氏はデューイおよびショーンの省察概念の研究者として、人間の知的反省が人間と環境との関係性にどのように作用を及ぼすのかを理論的に検討する予定である。 また、本研究の開始後に、特別支援学校を実践的なフィールドとして共同研究を行う可能性が出て来た。特別支援教育と地域環境に関する研究、さらにはインクルージョンに関する理論的な基盤を構築する作業に取り組むこととする。
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