研究課題/領域番号 |
22K02261
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 福知山公立大学 |
研究代表者 |
大谷 杏 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (50760576)
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研究分担者 |
鳥羽 美鈴 関西学院大学, 社会学部, 教授 (00570417)
荒井 智行 南山大学, 経済学部, 教授 (70634103)
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 難民 / 移民労働者 / 職業教育 / ヨーロッパ / 社会的排除 / 機会の平等 / 格差社会 / 社会的流動性 / 職業訓練校 / 外国人 / フィンランド / イギリス / ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスの影響で数年間は例外ではあるが、労働を目的として日本に定住する外国人数は年々増加傾向にあり、コロナの収束後、再度増加傾向に転じる可能性は高い。日本では2016年に技能実習制度の見直しが行われたものの、外国人が専門学校等で日本人と同等の職業訓練を受け、専門的な技能を要す職に就くには高い壁が立ちはだかる。本研究では、ヨーロッパ3か国(フィンランドと類似した教育機関を持ち、同国よりも外国出身者の有職率が高いドイツ、イギリス)の事例から、職業訓練校の外国人受け入れ態勢が外国人住民の雇用統計に与える影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、新型コロナウイルスの蔓延が一段落した後の国際情勢を見据えて、ヨーロッパ3か国(フィンランド、ドイツ、イギリス)の事例から、職業訓練校の外国人受け入れ態勢が外国人住民の雇用統計に与える影響を明らかにすることを目的としている。1年目の2022年度は新型コロナによる渡航制限が予想されたため、当初の予定通り、それぞれの研究対象となる国の職業教育の実態、職業教育機関の現況、各国の移民や難民を取り巻く状況について、日本国内、または滞在国においての情報収集が中心となった。国別では次のとおりである。 フィンランドでは、2021年の義務教育終了年齢の引き上げに伴い、従来のVALMAとLUVAという職業教育の準備段階が統合され、TUVAに統一されたことが文献調査から明らかとなった。同時に、急激な国際情勢の変化により、隣国ロシアとの関係、ウクライナからの避難民への対応を含めた検討の必要性も生じた。 ドイツについては、担当者が現地滞在中であったことから、研究課題に関わる情報収集のため、ドイツのケムニッツ工科大学(Technische Universitat Chemnitz)で開催された研究大会「4th Conference of the German Network for Forced Migration Studies」(2022年9月28日-9月30日開催)に参加することができ、主に西ヨーロッパに居住する外国人たちの現状や就職に至るまでの困難な過程などについて、理解を深めることができた。 イギリスについても、教育格差の現状と実情について、国内で入手可能な文献や資料を入手し,キャメロン政権以降の教育格差の問題について考察した。また,国内でのイスラム系の学校が重視する安全で安心した教育の提供において、近年、いかなる変化が生じているのかについても検討を加えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィンランド、ドイツ、イギリスの3か国それぞれについて必要な情報の収集を進めた。詳細は以下のとおりである。なお、国によって事情が異なるため、取得情報は一律ではないが、2023年度以降の情報収集の状況や現地調査等の内容を鑑みた上で、特定の国に成果が偏ることのないよう補足していく。 2022年度、フィンランドについては職業教育の全体像を捉えるために、国家レベルの制度把握に努めた。その結果、新たな職業準備教育であるTUVAが設置されていたことから、職業教育のみに焦点を当てるのではなく、義務教育全般との関わりの中での検討が求められることとなった。次に移民・難民の現状についてであるが、ロシアと国境を接していることやウクライナからの避難民の受入れにより、こちらについても教育制度の変化と同様、当初の計画では予測できなかった事態に直面している。なお、職業教育全般やTUVAに関しては教育文化省、外国人住民の職業教育についてはフィンランド国内の外国人向け公的サイトであるInfoFinland、各種教育統計を中心に情報収集を進めてきた。 ドイツについては、同国で開催された研究大会への参加に加えて、研究課題に関わる文献の収集を進めている。研究拠点がドイツにあった2022年度は、主にドイツ語の文献の収集を重点的に行った。さらに、ドイツに居住する外国人たちとのネットワークの構築に取り組んでいる。 イギリスについては、職業訓練の仕組みと外国人にとっての課題を検討するとともに、教育格差の現状と実情について、日本国内で入手可能な文献や資料を入手し、キャメロン政権以降の教育格差の問題について考察した。また、イギリス国内でのイスラム系の学校が重視する安全で安心した教育の提供において、近年、いかなる変化が生じているのかについても検討を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランドについては、2024年の1月から3月の渡航を目標に国内全域におけるTUVAの実施状況と当初の計画に記載した訪問予定の教育施設について再度検討を行い、訪問先を確定し、現地との調整に入る予定である。その際、ロシア国境に近い教育機関やウクライナ難民を積極的に受け入れた地域の教育機関の状況変化も考慮に入れ、訪問先の追加を行うことが必要になる。現地調査と共に、引き続き国内での文献調査も行い、それらをまとめた成果を日本国際教育学会、日本比較教育学会、日本学習社会学会などの国内学会の発表の場において積極的に公表していく。 ドイツについては、日本語・英語等の文献収集にも着手するとともに、先に収集したドイツ語文献について、それを丁寧に読み込み分析する作業を進めたい。また、ドイツに再渡航して、前年度に構築した外国人たちとのネットワークを頼りに、ドイツでの就職に関わる経験などについて聞き取り調査を実施する予定である。 イギリスについては、コロナ禍の中、現地のイギリスで調査することができなかったため、「現在までの進捗状況」の中で記した通り、国内で入手可能な文献や資料の考察にとどまった。イギリスでのイスラム系の学校変化が生じている場合には、その問題や課題点、コミュニティとの関わりなど、さまざまな観点から現地で調査する必要がある。今後は、そうした観点から、学校教育のカリキュラムの問題や他人種との教育のあり方、ならびに教育方法との違い等についても調査する予定である。
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