研究課題/領域番号 |
22K02271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 新潟大学 (2023) 畿央大学 (2022) |
研究代表者 |
塩原 佳典 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40769650)
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研究分担者 |
松本 和明 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70825934)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 地域教育史 / 医療環境史 / 公立病院史 / 地域社会論 / 地域的共同性 / 長野県諏訪地方 / 地域医療史 / 在村医療史 / 共同性 / 地域社会史 / 公共性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、地域や家などの共同体レベル、また個体レベルにおける生活と文化の営為を総体として把握する視座から、地域と教育の関係史を再構築する。こうした研究課題に応える主題が、地域医療史である。19世紀後半の日本社会では、医療が人間の生存に直結する学知とみなされ、積極的に受容され始めた。その過程では、地域社会を構成するあらゆる人々が、病院・医学校の立地や費用負担、医師の養成や招聘、衛生・保健教育などをめぐり、協調/対立を繰り広げた。地域の生存環境を支える「共同性」構築の過程に、教育の文脈を読み込み、その動態史を描き出したい。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、信州諏訪地方を主たるフィールドとして、幕末維新期から近代にかけ地域社会における教育・生活文化を支える史的諸条件を浮き彫りにするものである。その際に諏訪市博物館所蔵の未整理文書(Y家文書)の目録編成とその解析を進め、新出史料にもとづき研究成果をまとめる。 計画の2年目となる2023年度は、パンデミックの影響を受けた昨年度の遅れを取り戻すべく、月に一度はフィールドワークを実施した。博物館の協力をえながら、研究分担者および協力者とともにY家文書の目録編成を進めた。現在までに、約1,500点の史料をデータベース化した。うち、近世では鉛山経営や諏訪社との交渉の留書、近代では学校設立など大区小区制期の行政文書や三新法期における区医養成などの史料が含まれている。また公立高島病院の設立(1880年)前後の地域社会の動向を伝える日記史料や諸文書が見出されたことも収穫である。これらの史料は本研究課題にとって重要なデータであり、次年度以降の研究成果とりまとめの素材となる。なお目録データは、博物館と共有している。 研究成果としては、松本市立博物館のリニューアル企画展および講演を通して広く公表することができた。筑摩県政期(1871~1876年)において、諏訪郡はじめ県内諸郡が「開化」に関わる知・情報を蒐集・蓄積する様相を、地方博覧会を焦点として描出した。とりわけ、県庁が所在する松本ばかりでなく、各地で盛んに博覧会が開かれていた状況からは、諏訪郡を含む諸郡が「開化」との距離をめぐり競い合うかのような姿が読み取れた。また博覧会の展示物には真贋すら不明確な古器旧物が多数含まれていた。このことについては従来、博覧会の趣旨をふまえない「遅れ」た博覧会と評価されてきた。これに対し、「古器旧物」がまとうあやしさゆえ、新たなコミュニケーションが生まれていた可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は継続的にフィールドワークを実施し、Y家文書の目録化を精力的に進めることができた。史料群全体のなかでは、およそ6割ほどの整理が完了している。 一方で研究成果としては、論文の公表ができなかった。ただし投稿は行っており、24年度での刊行を目指している。 以上から、23年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」ものと評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は研究計画の3年目(最終年度)となる。そのためまずはY家文書の目録化の完成を目指す。昨年度と同様、月に一度はフィールドワークを実施する。また夏期には複数大学の研究者の助力のもと、目録作成を協力に推し進める。取りまとめたデータは、所蔵元である博物館に提供し公表に備える。さらに研究成果の公表として、学会発表と論文の刊行に取り組む。
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