研究課題/領域番号 |
22K02277
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
吉村 敏之 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (80261642)
|
研究分担者 |
本田 伊克 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 教授 (50610565)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 深い学び / 真正の学び / 教科内容研究 / 科学と芸術の基礎 / 教育臨床学 / 高橋金三郎 / 文学教育 / 宮沢賢治作品 / 真正の学習 / 巨摩中学校 |
研究開始時の研究の概要 |
これからの時代の教育に必要な「主体的・対話的で深い学び」を実現できる教師を育成するために、日本の授業研究の財産をふまえ、学校の内側と外側で研究集団を組織する指針を求める研究である。研究集団のあり方をさぐるため、山梨県巨摩中学校でかつて取り組まれた「科学と芸術の基礎」を学ぶ授業の創造の事実と、質の高い学習を生み出す原動力となった教科内容研究の実態をとらえる。さらに、巨摩中学校の教師が教材づくりと授業づくりの質を高めて生徒の力を伸ばせた研究集団の特質を明らかにする。校内の研究集団の活動を支えた、校外での民間教育研究運動とのかかわりについても、遠山啓から助言を得る研修会を中心に、教師への影響を示す。
|
研究実績の概要 |
これからの教育で求められる「深い学び」を創り出すには、学問・芸術の追求を根底とする「真正の学び」の推進が不可欠となる。子どもに質の高い学びを保障するには、教師が、まず「真正の学び」を体験しなければならない。先人のすぐれた実践事例を検討し、教師が深く学ぶために必要な点の解明を、教師個人、学校組織、教員養成大学について行った。 教師個人に関しては、自分が日々かかわる子どものかかえる学習の課題を切実に受けとめることが出発点となる。その上で、学問・芸術の成果をふまえ、探究を促す内容を教材とする授業を創ることにより、学習意欲を引き出せる。教材を「人類の文化遺産」ととらえて子どもの可能性を引き出す授業の創造を積み重ねた、斎藤喜博(群馬県島小学校長)の事実が証となる。本研究では、斎藤に学び続け、文学、歴史、合唱、体操、美術鑑賞を中心に子どもの力を伸ばした、前島正俊氏(東京都江戸川区立小学校)の遺した記録を分析し、深い教材解釈の重要性を明らかにした。学習を拒絶した高校生に数学の魅力を実感させた、仲本正夫氏(埼玉県私立高等学校)の実践についても、根底の思想・原理の意義を示した。 学校組織に関しては、「科学と芸術の基礎」を教えるため、山梨県巨摩中学校の教師集団が取り組んだ教科内容研究の事例を検討した。音楽担当の埴原美枝子氏による実践資料を分析し、合唱が「すべての教科学習を総合するもの」として展開された事実を示した。 教員養成大学に関しては、林竹二学長のもとで、宮城教育大学において展開された「教育における臨床の学」構築の試みに注目した。林が自らの歴史研究に基づき、「開国」の授業を小学生に行った際、学問に支えられた「イメージ」が推進力となった。専門の理科教育にとどまらず、教授学を追求した高橋金三郎は、学校教師とともに、子どもが文学を楽しめる授業の創造に挑み、宮沢賢治作品の新たな魅力を発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響で、巨摩中学校の教育実践と教科内容研究についての聴き取り調査が制限された。 ウクライナ戦争の影響による物価高騰と資源不足のため、前島正俊氏の記録を出版物として公表する作業が遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によって、当初の研究計画の遂行が困難な中でも、これまで30年近くにわたって収集を続けてきた巨摩中学校の教育記録(合唱の音声記録を含む)・資料、近年入手できた前島正俊氏の記録・資料を、整理、分析し、学問・芸術の追求をふまえた授業の意義と、授業創造の過程を明らかにすることができた。 また、宮城教育大学で展開された、教育臨床研究の成果の一端である、林竹二の歴史授業、高橋金三郎の文学授業の検討により、学問を根底とする授業の質を具体的に解明する作業が進んだ。 前島氏が小学校において実践した、学問・芸術の追求をふまえた授業の意義、林と高橋による、学問を根底とした授業の意義とかかわらせながら、巨摩中学校の授業と教科内容研究の意義を探る研究の深化が期待できる。
|