研究課題/領域番号 |
22K02297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
伊藤 博美 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (50410832)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | ケアリング / 関係 / 学び / ニーズ / 教育 / 対話 / ノディングズ / フェミニズム / 関係性 / ケア / 現象学 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、日本の教育には、子どもへの個別的ケアがさらに求められている。教育哲学者ノディングズのCaring(1984)は、関係概念としてケアリングを提示したが、第二版におけるフェミニズムから関係論への変更、The Maternal Factor(2010)の上梓により、思想的文脈が問われている。そこで本研究は、現象学的な関係論における諸概念を踏まえたケアリング関係概念の変遷を明らかにする。 次に保育におけるケアリング論や関係発達論との比較を通して、ケアリング概念の思想的位置を検討する。 第三に教育者や保育者のエピソード記述を収集し、ケアリング関係を観点として分析し、その実相を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和5年度は第一に、『ケアリングの視座―関わりが奏でる育ち・学び・暮らし・生』(晃洋書房)の編著者を務め、刊行した。同書所収の序章「ケアリング小史―『ケアリング』以降」においては、1980年代以降のケアリング論をめぐる実践と研究の動向を整理した。また前年度に行った2つの口頭発表をもとに第14章「fidelityと対話が示すケアリングの教育的関係」を著し、他者への思いやりある注視sympathetic attentionおよび他者をよく知ることaccuracyが対話の継続に必要であることを明らかにした。 第二に、日本乳幼児教育学会第33回大会(名古屋市立大学・12月9日開催)にて「教育者-子ども関係の現象学的な様相:鯨岡峻の関係発達論とノディングズのケアリング論の比較考察」と題した研究発表を行い、以下のことを明らかにした。第一に、子どもが育ち学ぶ大人と子どもとの関係とは、両者が各々欲求・願い・ニーズをもつ主体の相互的な関係、また大人が子どもをわかろうとして気持ちを向け、心の動きをつかむ、あるいは子どもを受け入れ、共に見たり感じたりする関係である。大人は関与に向かわされるが、子どもから焦点をずらした関与は、育ちや学びにつながらない、または関係を消滅させる。そこでは大人から二重のまなざしが注がれる。第二に、保育や教育の場は制度に基づくものではあるが、大人と子どもが各々ニーズをもつ主体として認められ、互いにニーズを修正しつつ「共に生きる」場である。 第三に、『椙山女学園大学教育学部紀要第17巻第1号』に「ケアリング教育理論における学び-佐伯理論における学びを観点として-」を投稿し刊行された。本論文では、佐伯胖の学び論では「本当の訴え」の見極めや学び手と大人の間のニーズの葛藤の調整過程が不明である一方、ケアリング教育理論では子どもの尊厳が明確に照射されていないことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、令和5年度の計画では、教育者と子どもの関係に関する思想的文脈の再検討だけでなく、その関係の現象学的実相を分析することを目標としていた。前者については令和5年度の成果において、子どもの学びや育ちに貢献する関係性を明らかにしたものの、『ケアリングの視座』刊行に向けた編者としての作業に時間が費やされ、後者の課題であるケアリング関係の実相を明らかにする課題について、分析の方法を検討するところまで進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、第一に、保育者や教師を志す学生のエピソード記述を引き続き収集し、分析方法を検討した上で、実相を明らかにする。この成果を踏まえ、当初予定していた現職保育職のエピソード記述の収集、分析を進めることを目標とする。
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