研究課題/領域番号 |
22K02310
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
村山 詩帆 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380786)
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研究分担者 |
伊井 義人 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10326605)
植田 みどり 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (20380785)
小島 佐恵子 玉川大学, 学術研究所, 准教授 (40434196)
丸山 和昭 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (20582886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | グローバリズム / 国連2030アジェンダ / ジェンダー格差 / 在外教育施設 / インターナショナルスクール / 寮制 / グローバル化 / 教育サービス / 生態学的相関 / 地域主義 / 地域化 / インターナシ ョナルスクール / 公設民営学校 / 民営化のプロセス / 地域主義と地域化 |
研究開始時の研究の概要 |
国家や地域の間に複雑な差異があれば、分析対象が何を代表しているのか、サンプリング・セオリーが曖昧になるため、グローバル化による地域間の諸関係の変化をより注意深く観察する必要が生じる。グローバル化には、制度の新設が優先される国家による政治的なトップダウン型の「地域主義」と、民間セクターが主導するボトムアップから発展する「地域化」という、関連しながらも別個のプロセスが作用する(Pempel 2005)。グローバル化する国家間の諸関係において、教育システムを構成する個々の事例がいかなる地域変容の過程に位置づけられるのかが、本研究課題にとって主たる学術的な「問い」となる。
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研究実績の概要 |
経済活動のグローバル化は、(1)為替レートの安定、(2)国内目標志向の政策、(3)資本移動の自由を要請するが、経済政策と同様、教育政策においても3項目すべてを同時に満たすことは困難であると考えられる。教育政策の国内目標志向の優先順位が低くなれば積極的には評価し難い地域変容がもたらされる可能性があるものの、地域変容がグローバル化に由来するものであるかどうかを判別するのは容易ではない。こうしたことから、日本人学校や補習授業校に代表される在学教育施設、インターナショナルスクールなどを、地域変容をもたらす諸施策の影響下にあるものとみなし、地域変容に方向性を与える指針になりうるグローバルな行動計画として国連2030アジェンダに焦点を当てた。 国連2030アジェンダにおける持続可能な開発目標(SDGs)は、先進国、開発途上国、所得水準を問わず、2030年までに男女の区別のない無償かつ公正で質の高い初等教育と前期中等教育を達成目標としているが、教育のモビリティにはジェンダー格差が観察される。このジェンダー格差には、親子関係を主なダイアッドとして構成される家族ないし親族ネットワークを維持する戦略的な行動選択の結果である可能性が考えられる。モビリティのジェンダー格差を解消するには、子供や親族に対するケアの代理執行を可能にする機制が要請され、それ故グローバルな労働力移動による子供の教育のエージェントとしては日本人学校のような在学教育施設が存在する。早稲田大学や慶應義塾大学を擁する学校法人の傘下校には海外展開するケースが存在していたが、親子の同居を前提としない国内展開するケースが現れている。日本への新規参入を試みるイギリスの寮制パブリックスクールのような伝統的な学校教育機関のなども、親子の同居を前提としたものではなく、グローバル化する社会の流動性に対する教育戦略として利用可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の場合、初等教育と前期中等教育は義務化され、日本国憲法第26条第2項は反対給付の原理により義務教育を無償としている。義務教育機会に関してはジェンダー平等を達成しているが、国立大学の附属学校や私立学校といった選択的な就学機会を併存させている。これらの学校群はあくまで選択的な利用を可能にするものではあるが、多くは無償で供給される就学機会ではなく、伝統的な女子校が含まれることから、男女の区別や男女間の差異を積極的に排除しているわけではない。 実証的な検討の結果、(1)女子は戦後初期から選択的な就学機会を利用しがちであり、近年は国立に見られた格差もほぼ消滅している。(2)国立の選択的な就学機会のジェンダー平等化には少子化の影響があり、後期中等教育卒業後の進学率は女子による国立の選択的な就学機会の利用を促進する。(3)短期大学の就職状況が女子による国立の選択的就学機会の利用に対し強い影響を与える。(4)少子化が顕著となる1990年代半ばまでに人口変動や進学率、就職状況による構造変化はピークに達し、近年は選択的な就学機会のジェンダー格差に変化がない、などの知見が得られた。 また、前年度に開始した北海道のニセコ町に設置されたインターナショナルスクールに続き、イギリスの寮制パブリックスクールを代表するハロウ校が岩手県に設置したハロウインターナショナルスクール安比、熊本県に進出したTSMC(台湾積体電路製造)に駐在する職員の家族に供給される教育サービスについて調査を開始した。熊本県の熊本インターナショナルスクール、九州ルーテル学院インターナショナルスクール小学部と菊陽町、大津町、熊本市間の移動手段(スクールバスの有無を含む)といった周辺状況の把握に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
収集したインターナショナルスクール、在外教育施設、公設民営学校等の個別事例については、公共セクター主導型のトップダウンと民間セクター主導型のボトムアップからなる2軸上にマッピングし、「官民連携」、「地域主義」、「脱ローカル/非計画」、「地域化」いずれの地域変容パターンへ分類する手続きを経て、4類型それぞれの特徴的な傾向を、統計データを駆使して詳細に分析する。 本研究課題に着手した当初、オーストラリアの市販オンデマンド集計システムであるTable Builder、アメリカ合衆国のPublic-use Sample等の購入を検討していたが、為替変動を含めた国際社会の情勢変化から渡航時期や調査対象となる個別事例の変更を余儀なくされ、購入を見合わせることとなった。しかしながら、台湾政府統計資料に関しては、市別集計が掲載されている年次報告書の統計表を20年分ほど収集することができ、未調査である新北市の国立台湾図書館で(台北市立図書館では不完全にしか揃っていなかった)台中市や台南市を含む時系列的な地区別集計を入手できる可能性が出てきた。また、令和4年の第 208 回通常国会において、「在外教育施設における教育の振興に関する法律」が可決され、同年6月に公布・施行された。在留邦人の教育を受ける機会、国内学校と同等の水準を確保することを明文化した同法を、国連2030アジェンダとは異なる地域変容に方向性を与える指針になりうるグローバルな行動計画とみなし、熊本大学教育学部附属小・中学校の英語授業クラス、一般財団法人「熊本市国際交流振興事業団」主催の日本語会話教室といった社会教育サービスと、台湾日本人学校など在外教育施設を新たにサンプリングし、それらの間の異同について、インテンシブな比較調査研究を実施し、報告書にまとめ刊行する。
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