研究課題/領域番号 |
22K02339
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
加藤 潤 愛知大学, 文学部, 教授 (80194819)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | サマーヒルスクール / ニール / ナショナルカリキュラム / ofsted / イギリス教育 / 大正自由教育 / 世界システム / 手塚岸衛 / フリースクール / inspection / free school / summerhill school / national curriculum / UK |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、世界で最も自由だと言われるイギリスのサマーヒルスクールにおける教育実践が、政府が定めた学習指導要領(ナショナルカリキュラム)に抵触するという理由で閉校の危機にさらされた事件を追っていく。その中で、フリースクール思想は、必ずしも、カリキュラム内容を無視するものではなく、むしろ、生徒自身の中にカリキュラム内容を吸収する「受容体」を育成することを目指しているものであることを立証したい。それによって、現在、我が国でも、ともすれば対立する傾向をもつ、フリースクール型教育実践と公教育型教育実践とが統合され、これまでにない高い質の教育を実現できることを提示することをめざしている。
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研究実績の概要 |
本年度の研究では、以下の二つの点で進捗が見られた。 1)昨年度(2022年度)行ったイギリスでのサマーヒルスクール実態調査で得られたインタビューデータ、論文データから、2000年に行われた政府による査察の具体的な記録が明らかになった。とりわけ、査察直後に行われたインタビュー調査で、政府がサマーヒルのどのような点を批判し、サマーヒル側は、それに対してどのような論理的反論を行ったのかが明らかになった。しかしながら、それ以降のサマーヒルの変容についても明らかになってきた。すなわち、サマーヒルは政府と対峙し、フリースクール運動の旗手となっていた存在から、次第に、その思想が独立して他の学校、教育実践家に影響を与え始め、サマーヒル自体は、ニールの遺産を連綿と継承する場になっていったということである。学校が存続していることと、そこからフリースクール理論が発信されることが分離していったのが、2000年の査察以降の現象だったと結論づけられる。 2)サマーヒルのようなフリースクールが、先進諸国で増加し、公教育システムにまで入りつつある現象が、この30年ほどみられることが分かった。これは、かつて、J.meyer等が主張した、近代教育システムの異種同形現象(isomorphism)そのものである。つまり、近代世界システムの中に、フリースクールのイデオロギー的価値が取り込まれ、公教育と私的営みであるサマーヒルのようなフリースクールが同化していきつつあるということが明らかになってきた。この現象が、我が国の大正自由教育においても起きていることから、この二つの国で起きている教育システムの共振現象を解明する新たな課題が明らかになったことは、本年度の大きな研究成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画で、唯一遅れをとっているのは、イギリスまたは、ニュージーランドにおけるフリースクール実態と公立学校から見たフリースクールの認識についてのインタビュー調査である。第一回の現地調査は、2022年8月に行ったが、翌、2023年に計画していた現地調査が実施できていない。その理由は以下の二つにあると考えられる。 1)コロナ渦後、航空運賃、宿泊費が上昇の一途をたどっており、現地で安価な宿泊施設を見つけることが難しくなっている。当初計画で計上した予算では到底不足する事態が生じている。今後、現地の大学寮などをあたり、予算内で調査する計画を再度練り直す予定である。 2)サマーヒルスクール以外の、現地公立学校及び、フリースクールとの関係構築がまだ未完成で、インタビュー調査に応じてもらえる教員、学校がなかなか見つからない状況が続いている。この点は、継続して、様々な人脈を通じて新しい調査対象校を見つける努力をすること以外に解決法はないと考えている。 これら二点の解決方法を今後も続けていくことで、本年度中には現地フォローアップ調査を実現したい。それによって、日英比較とフリースクールと公立校との対立構造(もしくは共同構造)を計画年度末までに明らかにしたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画については、先に、遅れをとっている点を解決しながら、以下のように進めていく予定である。 1)2024年度で、日本におけるフリースクール運動の事例研究として、大正自由教育の旗手手塚岸衛の「自由教育真義」を分析し、彼のいう、既成の公立学校における教育と自由教育の相違点を明らかにする。 2)手塚の自由教育議論を基に、まったく別の社会で、極めて似た主張をしたニールのサマーヒルスクール教育についての方針、理論を分析し、両者の共振現象を比較分析する予定である。 3)この二つのフリースクール思想が、近代の公教育が一定の期間を経て、システム安定した時期に、それを揺り動かすかのように同時発生している共振現象を、かつて、J.Meyer等が主張した世界文化理論(world culture theory)によって理論化したい。 4)最後に、サマーヒルスクールを公立学校、または、他のフリースクールから見た時、どのような位置づけを成されているのか、世論と共に学校関係者に聞き取りを行い、フリースクールの位置づけが、かつてとは変化し、次第に公立学校に包含されつつあるという本研究の仮説を立証したい。 以上が、今年度の研究推進計画である。
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