研究課題/領域番号 |
22K02363
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
長谷川 哲也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (90631854)
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研究分担者 |
内田 良 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (50432282)
上地 香杜 静岡大学, 教職センター, 特任助教 (00907652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 公共図書館 / 図書館利用 / 滞在型図書館 / サードプレイス / 学歴格差 / 教育社会学 / 地域間格差 / 資源 / 利用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,新たなサービスが展開される今日の公共図書館において,図書館を「利用しない人」も含めて日本「全体」を俯瞰する視点から,図書館の「資源」と「利用」をめぐる地域間格差の実態を明らかにすることである。具体的には,①図書館資源をめぐる地域の階層間格差の解明,②図書館利用をめぐる利用者の階層間格差の解明,③図書館の「資源」と「利用」を組み合わせた地域間格差の解明,という3つの研究課題を設定し,図書館資源に関する各種統計調査,一般市民を対象としたWeb調査,公共図書館への訪問調査など,量的手法と質的手法を用いた調査データの分析を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、国立国会図書館が実施した「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」の二次分析を行った。分析により、①図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていること、②非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、地域社会に対する公共図書館の存在意義を重視していることが明らかとなった。これらの研究成果を論文にまとめ、日本教育学会が刊行する『教育学研究』に投稿して掲載された。 また本年度は、「滞在型図書館」を目指してサービスを展開している愛知県内のA市立図書館を対象に訪問調査を実施した。A市立図書館は従来の公共図書館とは全く異なるコンセプトで運営されており、利用者目線による施設・設備の設計や、利用者が滞在を楽しむことができるサービスの企画・実施が積極的に行われており、こうした運営によって図書館職員の意識も変容していることが明らかとなった。ただし、訪問調査を行ったA市立図書館はいわゆる分館に当たるため、図書資料の収集・保存といった従来の公共図書館の役割は主に本館が担っており、全ての公共図書館がA市立図書館のようなサービスを展開することができるわけではないという課題も浮かび上がった。 さらに本年度は、上記の国立国会図書館調査やA市立図書館訪問調査の結果、および先行研究の知見を踏まえながら、図書館利用をめぐる利用者の階層間格差に関するWeb調査のデザインを検討した。これら検討により、「滞在型図書館」における利用者/非利用者の生活時間や世代・時代効果を調査のデザインに新たに組み込むことができた。現在、調査の枠組みは完成し、調査票の作成を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように本年度は、国立国会図書館が実施した「図書館利用者の情報行動の傾向及び図書館に関する意識調査」の二次分析によって、図書館利用の学歴格差や生涯学習社会における公共図書館運営のあり方に関する重要な知見を見出すことができたため、論文を執筆して日本教育学会が刊行する『教育学研究』第90巻第3号に掲載されるなど、研究成果のアウトプットが進捗した。くわえて本年度は、当初の研究計画にはなかったが、愛知県内のA市立図書館を対象にした訪問調査を実施することができたため、近年注目されている「滞在型図書館」における図書館運営の実態を明らかにすることができた。本年度は、図書館利用をめぐる利用者の階層間格差に関するWeb調査を実施する計画であったが、国立国会図書館調査の二次分析やA市立図書館訪問調査の分析等により、利用者目線による「滞在型図書館」のあり方に関わる重要な知見が得られたため、この知見を生かしてより効果的なWeb調査をデザインすることができた。また、そのデザインをもとに、公共図書館の「利用者」「非利用者」の行動や意識を明らかにするためのWeb調査票を作成している。 次年度は、図書館利用をめぐる利用者の階層間格差に関するWeb調査を実施する計画である。具体的に、年度前半では調査票の作成およびWeb調査会社の選定・打ち合わせを行い、年度後半ではWeb調査の実施およびデータの整理や基礎的な分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、図書館利用をめぐる利用者の階層間格差に関するWeb調査を実施する予定であるが、その推進のために次の二点を検討している。第一に、効果的な調査を実施するため、本研究グループがこれまで実施してきた国立国会図書館調査の二次分析やA市立図書館訪問調査の結果、および公共図書館を対象とした各種調査や先行研究等の知見を十分に生かしながら、オリジナリティある調査票を作成することである。本年度すでにWeb調査のデザインは済ませ、調査票の作成にも着手しており、来年度の早い段階での調査票完成を目指したい。第二に、調査を実施するにあたり、信頼あるWeb調査会社を選定することである。研究代表者はこれまでWeb調査の経験はないものの、研究分担者は複数回のWeb調査を経験しており、Web調査を実施するノウハウは得ている。このノウハウをもとに、信頼あるWeb調査会社を選定し、調査設計や調査票の内容、調査実施方法等について議論を重ね、効果的・効率的な調査を実施したい。 さらに次年度は、Web調査によって得られたデータの整理や基礎的な分析を行う予定である。これらを実施するにあたり、国立国会図書館調査の二次分析で用いた視点や得られた知見を生かしつつ、より利用者/非利用者の実態に迫るため、属性・階層・地域等の変数、生活時間をあらわす変数、世代や時代の影響をあらわす変数などを設定し、データ分析の枠組みを構築する予定である。なお、本Web調査は一般市民を対象に広く実施するため、調査データが膨大になり、分析までの準備に時間を要する可能性がある。そのため、必要に応じて大学院生をアルバイト雇用するなどして、データの整理を効率的に行いたい。
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