研究課題/領域番号 |
22K02388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
安部 芳絵 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (90386574)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 東日本大震災 / 児童館 / 放課後児童クラブ / 岩手県立児童館いわて子ども森 / 遊び支援 / 災害遊び / 子どもの権利条約 / 支援者支援 / 学童保育 / 遊び / 子どもの権利 |
研究開始時の研究の概要 |
自然災害など緊急事態下におけるトラウマからの回復には遊びが重要な役割を果たす。しかし、日本国内における災害後の子ども支援といえば、心のケアや学習支援が主流であり、遊びの支援は後回しにされがちである。避難所に遊び場が設置されることは稀であり、罹災証明の発行や片付けなど生活再建に向けて保護者が動き出すための日中の子どもの居場所が欠けている。災害後の遊び支援は子どものみならず社会全体の課題であるが、未だ顕在化していない。そこで本研究では、東日本大震災後の岩手県沿岸地域における遊び支援の実態を把握し、これを通して災害派遣遊びチームの社会実装に向けた具体的課題を抽出する。
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研究実績の概要 |
自然災害など緊急事態下におけるトラウマからの回復には遊びが重要な役割を果たす。しかし、日本国内における災害後の子ども支援といえば、心のケアや学習支援が主流であり、遊びの支援は後回しにされがちである。避難所に遊び場が設置されることは稀であり、罹災証明の発行や片付けなど生活再建に向けて保護者が動き出すための日中の子どもの居場所が欠けている。このような状況を受け政府は、2022年12月に「こどもの居場所づくりに関する指針」を閣議決定し、「災害時のこどもの居場所」に言及した。これにより、災害後の遊び支援は子どものみならず社会全体の課題であることがようやく認識されたが、1月1日に発災した能登半島地震では、避難所における子どもの遊び支援が十分とは言いがたい状況もある。 本研究では、広域大規模災害時に外部から被災地域に駆けつけ遊びの支援を行う災害派遣遊びチームの社会実装に向け、東日本大震災後の岩手県沿岸地域を事例として、その課題を明らかにすることを目的としている。具体的には、研究協力者である岩手県立児童館いわて子ども森の長﨑由紀チーフプレーリーダーから紹介していただいた外部から来た支援者と沿岸地域での受け入れ側支援者へのヒアリングを行っている。 令和5年度調査では、東日本大震災後の岩手県沿岸地域で行った遊び支援について、研究協力者から紹介していただいた、関西の児童館職員3名に訪問調査を行い、当時の支援計画や報告会資料などの提供を受けた。また、受け入れを行った大船渡市の放課後児童クラブ職員、釜石市児童館職員2名への訪問調査を実施し、当時の日誌等を閲覧させていただくことができた。これらの調査から明らかになったことは、第一に被災した児童館・放課後児童クラブの機能回復のようす、第二に支援者支援の重要性、最後に災害時の遊び支援による子どもの回復のありようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では災害後の子どもの遊び支援が立ち遅れているなか、支援者自身が被災した状況においても、遊びの支援を途切れさせないことを目的とする「災害派遣遊びチーム」の社会実装に向けた具体的な課題抽出を行っている。災害時に外部から派遣される専門職としてはDMAT( Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)があり、地域の医療体制では対応できない大災害や事故現場に急行する。「災害派遣遊びチーム」は、災害時に全国から被災地域の児童館・学童保育に駆けつけて遊びの支援をする専門職集団を想定している。 本研究の独自性は、遊びを支援するために外部から来る「専門職」に着目し、善意のボランティアによる自発的な営みではなく、継続性のあるシステムとして遊び支援の枠組みを実現するための課題を抽出することである。以上を踏まえ、災害時の子どもの遊びの権利を保障し、遊びによって子どもの回復を促す制度構築をめざしている。 令和5年度は、派遣された側として、東日本大震災後の岩手県沿岸地域で遊び支援を担った「いわて子ども遊び隊」と一般財団法人児童健全育成推進財団による「キャラバン」を中心に、訪問調査を行い、当時の資料の閲覧・複写をすることができた。沿岸地域の受け入れ側としては、大船渡市の放課後児童クラブ職員および釜石市児童館職員2名への訪問調査を実施し、当時の日誌等を閲覧することができた。 また、震災当時釜石市の児童館で過ごした小学生で、2023年度現在いわて県立児童館いわて子どもの森の職員に対し、災害後の居場所の経験についてヒアリングするとともに、県立児童館職員に対し災害時の大型児童館の役割についてヒアリングをすることができた。 以上のことから、おおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる令和6年度は、派遣側・受け入れ側への追加調査と、成果のとりまとめを主として実施する。 追加調査に関して、派遣側については、関西の児童館職員への追加調査を2名に対して行う。令和5年度の調査結果を踏まえ、阪神淡路大震災と東日本大震災後の経験から、BCPを含めた災害後の児童館機能の回復と、フェーズに応じた支援活動について焦点化したい。また、災害派遣遊びチームのモデルとなりえる能登半島地震の居場所支援事業である「能登地区のこどもの居場所ボランティア」に関して、主催する一般財団法人児童健全育成推進財団・全国児童厚生員研究協議会と連携機関である公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに対し、ヒアリングを実施する。受け入れ側は、岩手県内の児童館職員を予定している。 ヒアリングはいずれも本人の承諾を得てICレコーダーに録音、文字起こしを行う。文字起こしは郵送し、ヒアリング対象者に確認・修正をしていただく。ヒアリング協力者への謝金として1人1回あたり5000円を予定している。 成果発表として、こども環境学会大会での発表および論文投稿を予定しているほか、ヒアリング対象2名を岩手県から招いた災害派遣遊びチームの社会実装に向けた研究会を11月に都内で実施する。研究会の主な参加対象は、子ども支援の専門職とする。その結果は記録集にまとめ、PDFをクラウド上におき、リンクをSNSで公開する。
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