研究課題/領域番号 |
22K02403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 四国大学短期大学部 |
研究代表者 |
松谷 和俊 四国大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70794741)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 徳島県立保育専門学院 / 県立保育所 / 保育日誌 / 県立保育専門学院 / 教育行政 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、地方小規模自治体では少子化や財政難を背景に、公立保育所の統廃合や民間移管が広く行われている。その結果、これまで地域保育の根幹を担ってきた公立保育所はその数を減らし、代わって民間事業者による保育所運営が主流となりつつある。少子化の改善が見込めない中、こうした傾向は今後も続くと予想され、地方小規模自治体が抱える保育・教育政策課題の一つとなっている。このような状況下において「質の高い保育の維持・継承」は喫緊の課題であると考える。そこで本研究では「県立保育所」設置過程 と同所における保育形態を歴史的に明らかにし、現在の保育・福祉政策における新たな視座を創出することを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は徳島県立文書館及び徳島県立図書館にて、史料の渉猟に専心した。今回入手できたのは、県立文書館にて保存されている1951年度から1962年度、1964年度、1968年度の「保育日誌」、ならびに「徳島県立保育専門学院沿革(昭和26年7月7日以降)」「昭和27年度保育専門学院関係綴」である。史料の内容については精査中ではあるが、概ね次に掲げる事項が明らかになった。これらは県立保育所の実態を解明する上で、有益な情報であると考えている。 ①県立保育所は「保育に欠ける乳幼児及びその他の児童」に保育を提供する機能と、「保育専門学院学生(以下、保専生と略記))に保育実習」の場を提供する機能を与えられていた。②県立保育所の保育内容は「健康状態の観察、個別検査、自由遊び(音楽・リズム・絵画・お話・自然観察・社会観察・集団遊び等を含む)・午睡・健康診断・給食等」であった。③保専生は自由に県立保育所に出入りでき、保育実習以外においても保育に参画することができた。 ③については、保専生らが休憩時間や放課後等を利用して度々同所を訪問し、保育に参加したとの記録が随所に残されていた。日誌中には「お手傳ひ」と記載されていることから、現在でいうところの「保育補助」のような役割を保専生が担っていたものと考えられる。通常、事前に立てた保育計画に支障をきたす恐れがあるため、「自由に」「いつでも」学生が附属園に出入りすることは困難だが、県立保育所側はイレギュラーに来所する保専生を柔軟に受け入れ、保育に参画させるなど、極めて寛容的であった。こうした保専生(学院側)と県立保育所との良好な関係性は、県立保育所が保育専門学院校舎と一体化した、非常にユニークな造りであったという物理的な要因のほか、保育専門学院長が県立保育所長を兼任していたという人的な要因が多分に影響し、成立していたものと推察できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、2022年度は徳島県立文書館を複数回訪問し、史資料収集に専心した。当館にて保管されている「保育日誌」等の保存状態は極めて良好であり、先方の許可を得て写真撮影を行い、デジタル画像として保存・収集することができた。 また徳島県立図書館を訪問し、県立保育所関係の新聞記事を目視により確認するとともに、県立保育所・保育専門学院に関する資料収集に努めた。新聞記事についてはわずかではあるが収集することができ、資料についても3冊の記念誌を閲覧・コピーすることができた。古書店では保育専門学院同窓会機関誌である「若草」を数冊入手することに成功した。県立保育所黎明期に在籍した当時の保専生らの「語り」から、同所の実態を解明する糸口をつかむことができそうである。
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今後の研究の推進方策 |
調査を進めていく中で、徳島県立文書館には「保育事務日誌」や「保育所給食献立表案」などをはじめとする、県立保育所に関連する公文書類が大量に保管されていることが明らかになった。通常、保育日誌等の公文書は個人情報が含まれるため非公開に設定されているケースがほとんどであるが、当館においては幸いなことに一般公開に付されている。当初、調査対象としていた石川・富山両県については、公文書類の閲覧が極めて困難であることが判明したため、今後は豊富に史料が揃っており、尚且つ閲覧・複写が可能である徳島県に焦点を絞って研究を進めていきたいと考えている。
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