研究課題/領域番号 |
22K02405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
岩渕 俊樹 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任講師 (20711518)
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研究分担者 |
千住 淳 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00557738)
土屋 賢治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (20362189)
高橋 長秀 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (50846714)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / MRS / グルタチオン / 酸化ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は本邦の一般人口を代表する浜松母と子の出生コホート(HBC)の縦断的データを活用し、産前リスク因子(母の糖尿病、高血圧、過体重)が臍帯血中レプチン変動の誘因となり、遺伝的リスクとの交互作用を通じて児のASD特性に関連することを検討する。さらにHBC参加者を対象に、脳内の酸化ストレス増加(グルタチオン低下)とASD特性の関連、および特に母が産前リスク因子を持つことが後の酸化ストレス増大に関連し、児の社会認知特性に影響するかどうか明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)の当事者においては末梢血中(Carvalho et al., 2020)および死後脳(Chauhan et al., 2012; Rose et al., 2012)におけるグルタチオン低下が繰り返し報告されてきている。グルタチオンは生体内の重要な抗酸化物質であることから、本研究ではASD当事者の脳内におけるグルタチオン低下が見られ、その背景には胎児期における炎症性という仮説を立てた。しかしながら、本研究の進捗において、成人のASD当事者の左側頭頭頂接合部(temporoparietal junction, TPJ)では定型発達成人に比べてグルタチオン濃度の上昇が認められ、一方で仮説に反してASD当事者における脳内グルタチオン濃度の低下はいずれの関心領域においても観察されなかった。T1およびT2強調画像を用いたミエリンマップを作成し、左TPJにおけるグルタチオン濃度との関連を検討したところ、左中前頭回(middle frontal gyrus, MFG)においてASD当事者でのみ正の関連を見出した。これはASD当事者の脳内において、グルタチオンとミエリン化の亢進が特異的に関連していることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの成果により、成人のASD当事者の脳内では酸化ストレスに関連したグルタチオン低下が確認されなかった。酸化ストレスの亢進はミエリン化の不全をもたらすことが推測されるが(Monin et al., 2015)、上述のミエリンマップ解析によりASD当事者の脳内ではグルタチオン濃度の増加に関連してミエリン化の促進が認められ、ここからも酸化ストレス仮説は支持されなかった。全体として仮説の見直しが必要であり、当初計画していた児での測定に関しては実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
特に成人のASD当事者においては、脳内における酸化ストレスの亢進およびそれに伴うグルタチオンやミエリンの低下は認められなかった。今後はグルタチオン、ミエリンマップに加え、機能的結合や行動的な表現型などとの関連についてもより詳細に検討する。並行して、浜松母と子の出生コホート研究(Hamamatsu Birth Cohort, HBC Study)のデータを用い、これまでに明らかにしてきた臍帯血清中レプチン濃度と自閉スペクトラム特性の関連に対する調整因子や媒介因子の候補などについても検討を進める。これらの検討を通じて、本研究における仮説の再構築を図っていく。
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