研究課題/領域番号 |
22K02459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
滝口 圭子 金沢大学, 学校教育系, 教授 (60368793)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 乳幼児 / 探究 / 自然 / 科学体験を支える素材 / 保育 / 物理的な現象 / 環境構成 / 素朴理論 / 科学的な現象 / 因果関係 / 擬人的把握 / STEAM教育 / 科学 / 探索 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は以下の3点である。第一に,乳幼児の「科学につながる現象に遭遇した時の反応」と「疑問の解明に向けての試行の形態」における個別性と協同性を明らかにすることである。第二に,科学の保育実践に現れる乳幼児の素朴理論を部分的に明らかにすることである。第三に,小学校就学以降の科学教育を視野に入れながら科学の保育実践を体系化し,提案することである。以上を通して,乳幼児期に適した科学の保育実践を推進する環境を整備する。
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研究実績の概要 |
令和5(2023)年度の研究の目的は,(1)科学の思考と試行における個別性と協同性の分析,(2)素朴理論の内実の分析であった。本項では,主に(1)について述べる。 日本乳幼児教育学会第33回大会の自主シンポジウム(滝口ら,2023)にて,3,4,5歳児クラス別の土遊びの話題提供があった。6種の道具(型抜き,バケツ,蓋付き容器等)コーナーに,それぞれ4種の土(珪砂,真砂土,腐葉土,土粘土)を配置した。「蓋付き容器」コーナーで,幼児が「珪砂」を選択した時の他の土の使用頻度の年齢差は,5歳児は「珪砂のみ」を(p < .01),4歳児は2,3種類の土を使用した(p < .05)。「0歳児の“試しながら試す”試行から5歳児の“検証を楽しむ”試行へ」という本研究の仮説を踏まえると,本状況下では「4歳児の“試しながら試す“試行から5歳児の“検証を楽しむ”試行へ」の変転があったようだ。一方で,「個別の探索」は生じたが,「個別の探索を経ての協同」は頻出せず,「各自が自身専用の道具を用いての探究」が可能ではなかった点も一因であろう。 Harlan & Rivkin(2011)の「幼年期の科学体験を支える素材」に「土」は含まれない。日本の風土と幼児の「土の探究」とを意味づける作業が求められる。
Harlan, J. D., & Rivkin, M. S. (2011). Science experiences for the early childhood years: An integrated affective approach. 10th edition. New Jersey: Pearson. 滝口 圭子・小谷 卓也・長﨑 元気・富田 昌平(2023).保育のなかの科学4――土遊びを通して考える幼児教育からの学びのつながり―― 日本乳幼児教育学会第33回大会研究発表論文集,20-21.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5(2023)年度の研究計画は,(1)科学の思考と試行における個別性と協同性の分析,(2)素朴理論の内実の分析であった。第39回全国保問研夏季セミナー(科学)での湯谷(2023)の実践を,主に(2)の視点から考察する。【事例1「スイカとっちゃった」(2歳児)】小さいスイカができた,2歳児クラスの子どもたちは毎日眺めている,ある日,待ちきれずにスイカをとった,切り分けたら中身は白い,食べてみたがおいしくない,後日,大きくなった赤いスイカを食べた子どもたち「白いのよりおいしいなぁ」【事例2「わからない種」(3~5歳児)】子どもたちが育てたい野菜とそれ以外の種を混ぜて“透明の袋”に入れた,担任も子どもたちも何の種かわからない,種に名前をつけた(おしりちゃん等),発芽後,双葉についた種の皮を見て「みどりちゃんやん!」,育った野菜でクッキング,晩秋にオクラの種を見て「みどりちゃんや!」 自然現象に真っ直ぐに,反射的に応じる2歳児と,擬人化と認識とが重なり合う3歳以上児の姿は「3歳以上に意図性に基づく擬人的把握が認められる」という本研究の仮説と部分的に符合する。乳幼児が,生活の中で遭遇する自然(現象)を生活の中で説明しようとする際に,素朴理論の萌芽が認められるのではないか。保育では「自然(現象)との遭遇」と「遭遇を見つめる保育者」があって初めて素朴理論の編成が可能となる。それは「その子らしさの実現を図る」(河﨑・湯谷,2023)ことにもつながっていく。 2024年1月1日発生の能登半島地震により,実験の実施が叶わなかった。その他については,概ね順調に進展している。
湯谷 道雄(2023).(2)保育をゆっくり,じっくり味わいたい 季刊保育問題研究,324,133-142. 河﨑 道夫・湯谷 道雄(2023).(3)対談 河﨑道夫×湯谷道雄 季刊保育問題研究,324,143-152.
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今後の研究の推進方策 |
令和6(2024)年度は,令和5(2023)年度までの成果を踏まえ,(1)科学の思考と試行における個別性と協同性の発展的分析,(2)素朴理論の内実の発展的分析に取り組む。(1)については,引き続き,K市保育士会第2及び第10ブロックの保育所・園,認定こども園の幼児を対象とする。本研究の第一の仮説(時間的,距離的に近い因果関係であれば,3歳未満児も関係を想定しながら探索する,年齢が上がるほど因果関係の時間や距離が遠くなる)については,個別の実験調査,観察調査,事例分析から検証する。第二の仮説(自然発生的な科学の保育実践と保育者が意図的にしかける実践には,共通する意義と個別の意義がある)については,観察調査及び事例分析から検証する。第三の仮説(3歳未満児は物理的な現象に意図性を帰属する,3歳以上になると意図性を踏まえた擬人的把握が認められる)については,個別の実験調査,観察調査,事例分析から検証する。実験調査は,縦断と横断とを組み合わせて計画し,能登半島地震の発生により生じた遅延を解消する。更に,「小学校就学以降の科学教育を視野に入れた保育実践の体系化」に向けて,国立立山青少年自然の家との共同研究(令和3(2021)年度開始,継続中)で作成された「幼児期から小学校までの環境プログラム系統表」,「立少トントンまなびたい」の実践事例及び種々のデータを有機的に関連づけて理論化する。 日本心理学会第88回大会(2024年9月6日-8日,熊本城ホール)のポスター発表,日本発達心理学会第36回大会(2025年3月4日-6日,明星大学)のポスター発表及びラウンドテーブルにおいて,研究成果の一部を公表する。また,石川県保育士等キャリアアップ研修(2024年6月)や白山市保育士等キャリアアップ研修(2024年8月-10月)において研究成果を紹介し,現場関係者に直接的に還元する機会を確保する。
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