研究課題/領域番号 |
22K02503
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
川上 知子 長崎国際大学, 人間社会学部, 講師 (20824501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 不登校・不登校傾向 / アイデンティティ発達 / 青年期段階 / 不登校対応モデル / PTG |
研究開始時の研究の概要 |
不登校研究を概観すると、不登校を予防する意図で論じられた研究や不登校状態にある当事者・家族への対応、支援等の研究が多く見受けられ,その多くの研究は,不登校がネガティブな現象であることを前提として論じられている。しかし,散見される追跡調査等の結果を見ると、不登校を呈したことで「得たもの」があり,不登校を呈したことへの「意味を見出している」という事例も少なからず存在する。不登校による得失とは何に起因するのか。また,不登校をライフイベントの一つと捉えると,青年期のアイデンティティ形成にどのような影響があるのかを検討し,それらの結果・考察から不登校対応モデルを構築することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究は、特に青年期(中・高・大)に位置づく生徒・学生を対象とし、不登校とアイデンティティ発達との関連について検討することを核に据え、その考察結果を踏まえた不登校対応モデルの構築を目的としている。文部科学省から毎年前年度の結果として秋に公表されている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では、各学校段階ごとに不登校の実数や実態、不登校の要因等が詳細に報告されている。また、近年はコロナ禍以降の不登校数が増加しているなどの指摘が報道によってなされ、不登校者数の増減のみに議論が焦点化されることは懸念すべきことであると考えている。不登校の要因・実態等は、人の数だけ存在し、予防可能な不登校がある一方で、不登校を呈したことで救われた命が存在する可能性もある。本当に予防すべきは、「不登校を呈する」ことではなく、「不登校の長期化」ではないかという問題意識に端を発し、不登校の心理的な側面における実態把握に焦点をあて、本研究を進めている。具体的には、アイデンティティの確立を発達課題とする青年期において、不登校を呈することがアイデンティティ発達にどのような影響を与えているのかを検討するために、まずは、不登校傾向の状態像に着目し、その状態におけるアイデンティティ発達を「探求」と「コミットメント」の視点で明らかにすることを試みている。 2023年度は、大学生の不登校傾向(五十嵐、2015の尺度を使用)についての研究動向を整理し、2020年度に実施した調査結果についての分析と考察についての再検討を行った。その結果、調査対象者(複数の地方私立)の大学生の不登校傾向の状態(全般的な登校意欲の喪失傾向、享楽活動の優先傾向、心理項目A:対人恐怖傾向、心理項目B:抑うつ傾向)に着目し、その状態ごとにアイデンティティ発達の「探求」と「コミットメント」との関連について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予備調査についての論文を学会誌へ投稿した結果を踏まえ、大学生の不登校傾向についての研究動向を新たに整理する必要性があり、その研究動向のまとめを執筆、その後に「大学生の不登校傾向とアイデンティティ発達との関連」についての論文修正を行ったことにより、次の研究に進むことができなかった。ただ、丁寧に研究動向を整理したことと、査読結果の視点を加味し、修正に取り組んだことから、分析結果の考察が、より深まったという側面があった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年リジェクトされた修正論文を再度学会誌へ投稿する。また、次の研究に進むにあたり、所属機関での倫理申請(博士課程在籍大学院、職場)を提出し、①中高生の不登校傾向とアイデンティティ発達に関するweb調査の実施、②中高で不登校を呈した大学生を対象とした質的研究を含んだ調査(webによる記述を含む調査)を進める準備、の以下2点を計画的に進める。①に関しては、修正を行った「大学生の不登校傾向とアイデンティティ発達との関連」についての研究結果を踏まえ、同じ青年期に属する、中学生、高校生を対象に同じ尺度で調査を行う。同じ青年期に属しているとはいえ、各学校段階でアイデンティティ発達の「探求」と「コミットメント」との結果に特徴や共通点が見られるのかについて検討をし、青年期における不登校傾向の状態ごとの理解を深めたい。②に関しては、当事者への調査の難しさから、倫理的な配慮を行ったうえで、不登校を呈していた際の当時の状態についての記述から、当事者視点に立った実態把握を試みる予定である。
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