研究課題/領域番号 |
22K02510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
黒川 哲也 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (50390258)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 体育の学習指導論 / capability approach / グループ学習論 / collective capability / 平等 / 学習指導論 / Capability Approach / 平等主義 / 学習過程モデル |
研究開始時の研究の概要 |
体育科では,技能差を前提とした学習集団編成が中心課題とされてきたが,スポーツとの関わり方や価値意識が多様化する中で,学習者の多様な差異を考慮した学習指導への発展が求められている. そこで本研究では,現代平等論の観点,特にCollective Capability概念から体育科の学習指導論の「平等主義」を検討し,学習者の様々な差異を考慮した平等主義的学習指導論にもとづく学習過程のモデルを構築する. 本研究において明らかにされる平等主義的学習過程モデルは,現行指導要領で強調される「主体的・対話的で, 深い学び」の課題をも明らかにし,体育授業の改善に向けた具体的 提言を示すことに寄与する.
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研究実績の概要 |
初年度である2022年度は,Amartya Sen及びMartha NussbaumのCapability Approach(CA)の理論的内容を明らか異するため,両者によるCA関係文献及び彼等のCA理論にもとづく広範な文献の検討を行い,両者に共通する特徴と相違点について明らかにした.つまり,Senが人間の多様性の観点から「分配的平等」原理を批判し,主体の結果(functioning)だけでなく,彼等が自ら価値を置く存在様式・行為を選択する自由(capability)を平等の判断基準とした点は,Nussbaumにおいても共通していることが明らかとなった.他方,Senがすべての個人に保障されるべき基本的ケイパビリティのセットを同定することに消極的であるのに対し,Nussbaumはすべての個人に保障されるべき「10大人間的ケイパビリティのリスト」を提案している点で両者は異なっている.CAを教科指導に適用しようとする場合,SenのCAよりも具体的なfunctioningを想定する余地を残すNussbaumのCAに依拠する方が有益であると考えられる. ただし,両者のCAに対しては「過度に個人主義的である」という批判が存在しており,複数の論者が集団を個人的capabilityを規定する要因としてだけでなく,所有主体として捉える「集団的ケイパビリティ」と呼称可能な複数の概念的提案が行われている.これらは,capabilityの所有主体として集団を捉えるものと,capabilityの獲得・拡大にとって集団が不可欠であることを強調しつつも,所有主体としては捉えないものとが存在することを明らかとした.このうち教科における学習集団論を発展させるためには,前者の捉え方が重要であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度である2022年度は,Sen及びNussbaumのCAにおける理論的共通点と相違点を明らかにし,併せてcollective capability概念の理論的内容を明らかにすることを目的としていた.以上二つの課題については,多数の文献の検討を通じて明らかにすることができた. 併せて2023年度以降の課題としている中学校体育教師へのインタビューによって,彼等の「体育科の学習指導」及び「保障すべき平等の中身」についての予備的なインタビューを複数実施することができた点で,当初の計画以上に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,初年度に明らかにしたCAの理論的特徴を土台に,中学校体育教師へのインタビューを本格的に実施し,彼等の学習指導及び保障すべき平等についての認識についての資料を収集する. 同時に,戦後体育科における代表的な学習指導論である「めあて学習」論及び「グループ学習論」,そして「主体的・対話的で,深い学び」論に含まれる平等主義的側面/不平等主義的側面を明らかにすると共に,これらの理論における「個と集団」の捉え方について検討する. また,2024年度実施予定の研究授業の研究協力者・協力校への依頼・承諾及び授業計画の立案に着手する.
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