研究課題/領域番号 |
22K02576
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤原 一弘 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40824082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | だれ一人取り残さない学校づくり / ESDの積極的推進 / 探究的な学び / 地域連携 / 総合的な学習の時間の充実 / 地域一体型のESD学習システム / ESD/SDGsの評価方法の開発 / ホールコミュニティアプローチ / 地域リソースの活用 / 個人と社会の変容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ESDに関する地域のリソースを最大限に活用し、質の高い探究的な学びを実現するESDの学習システムを開発するとともに、汎用的で効果的なESDの評価方法を開発し、実証することを通して、その有用性を明らかにすることである。本研究を行うことにより、探究的な学びやESDの課題を克服し、地域社会総ぐるみでESDを推進していく仕組みが形成されることが期待できる。 「持続可能な社会の創り手」を育成するためには、ESDを通じた個人の変容が社会の変容につながる仕組み作りが重要であり、本研究では、そのモデルとなるシステムを作成して、地域の教育力を底上げするとともに、学校教育の質を高めていく。
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研究実績の概要 |
本研究2年目は1年目で進展させた愛大ESDラボの機能を生かしつつ、地域のESD推進とネットワークの構築、ESDの学習システムを開発するための準備体制を整えることができた。具体的な成果は以下のとおりである。 1点目はホールコミュニティアプローチを推進・浸透させていくための環境整備である。地域一体となったESDを推進するためには、学校教育だけで実施するのではなく、地域・自治体など多様なステークホルダーが共通理解を図り、協働して取り組まなければならない。本年度も愛大ESDラボをプラットフォームとして、域内の様々なESDを支援・推進することができた。ESD未来都市に認定されている松山市や新居浜市、過疎化が進む宇和島市などと地域創生や活性化を目的にした学習会や勉強会、課題解決活動などを実施することができている。地域リソースを活用しながら学校と地域をつなぎつつ、持続可能な地域社会の構築に向けた取組が継続的に行える環境整備ができつつあるので、3年次はさらに学校教育が軸となる地域のESDの取組を積極的に支援しつつ、愛媛県内だけでなく四国及びその周辺に広がるウェルビーイングの学びのネットワークを創り出していく機運を高めていきたい。 また国際連携ネットワークについても大きく前進させることができた。SDGsについて熱心に取組を行っている台湾の小学校を視察し、ESDやSDGsについての取組について調査することができた。3年次には愛媛県内の小学校との交流から共同単元へ発展させることができないか検討を進めることにしている。 2点目はESD学習システムの開発に向けて進展が見られたことである。概念型探究を軸にした研究単元づくりや評価について研究を進めている。またESD勉強会や実践交流会も続けて実施することで学びのコミュニティができつつある。次年度は、実践上でESD学習システムを試していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、愛大・ESDラボをプラットフォームにして、域内の様々なSDGs、ESD実践をつなぐことにより、地域全体のESDを推進していくことを目的にしている。昨年度までの成果を生かしつつ、今年度もSDGs研修会を複数回実施し、多くのステークホルダーと連携を深めつつ、学びを深化させることができた。特に「誰一人取り残さない学校づくり」を実現するため、各方面の専門家に登壇いただき、学校教員だけでなく全国各地から市民・行政・ユース・企業をはじめ様々なステークホルダーが集い、ESD推進について考える場を設けられたことは、地域にESDの意識が一定程度根付き始めた結果である。 また、学校教育において愛媛県内で総合的な学習の時間の充実やESD・SDGs推進を図るべく実態調査を実施し、その成果を公表することができた。その成果を踏まえ課題克服のためにESD/SDGsに関心のある学校と共同で授業づくりを行うこともできた。 さらに昨年度から奈良教育大学と共催で行っている「ESDティーチャープログラム」では新たに4名のESDマスターと8名のESDティーチャーを生み出すことができた。誕生したESDティーチャーは各地域でESD推進役として活躍しており着実にESDが浸透し始めている。継続的な学びのコミュニティを構築する体制づくりのきっかけが作れた。 国際連携では台湾の台北、新竹、台東の小学校やSDGs関連施設を視察し、ESDの日台比較を含めた協議を行うことができた。 本研究の2つ目の柱であるESD学習システムも一定程度進めることができた。本学部の富田英司教授及び有志とともに概念型探究学習に関する勉強会が本格的に指導し、地域の学校教員と実践を試行的に行っている。評価システムについては、まだ十分に成果を出しているとは言えない状況であるが、上記の実践を進めていく中で評価の在り方についても着手していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
県内では一定程度定着した愛大・ESDラボの活動をさらに積極的に推進し、研修会や勉強会を始め、各地域に「ESDの学びのコミュニティ」を構築していきたい。各地域にESD推進役となる学校教員や自治体職員などと連携し、ESD/SDGsのを広く浸透させていく。総合的な学習の時間やESD/SDGsの実態調査は2年次に引き続き3年次も実施し経年変化を含め重層的な調査を行い、学校教育におけるESD実施の課題や可能性などを明らかにしていきたい。新たに「探究」を実践している学校の掘り起こしを進め、県内に広く浸透させていきたい。ESDの実践事例集については、2年間で多くの実践を収集・発信することができたので、3年次はさらに広範に活用できるデータベースの充実を図る予定である。 愛媛県のESDの更なる浸透と並行し、四国内及び周辺地域との連携、国際連携のネットワークも進化させたい。これまでの研究成果を踏まえ、NPOや各自治体と連携しながら、四国内ESDの情報共有・発信を促進する予定である。四国は持続不可能な課題を抱えた地域が多いところである。本研究を通じて、課題解決のための学びを提供することでその解消や改善に貢献していく所存である。2年次の研究で台湾とのESD連携を模索するところまで進めることができた。政治情勢等もあり、モザンビーク共和国との連携は十分できている状況ではないが、どのような連携ができるか多様な方法を検討していきたい。 ESD学習システムや評価システムについては、本学で進めている「概念型探究学習」の研究と連携し、ESDの学びのモデル化を行い、地域の学校で実践するところまでこぎつけたいと考えている。評価システムについてもAIやオンラインを活用しながら学びの足跡をデータベース化し、それらを生かした評価システムの構築について検討をを重ね、個人の行動変容と社会全体のシステムの変容を促していきたい。
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