研究課題/領域番号 |
22K02591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 山口芸術短期大学 |
研究代表者 |
小野 隆洋 山口芸術短期大学, 芸術表現学科, 准教授 (20826169)
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研究分担者 |
岩中 貴裕 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (50232690)
上村 有平 山口芸術短期大学, 保育学科, 准教授 (70611268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 音楽ワークショップ / 音楽ワークショップ型授業 / 音楽鑑賞 / 音楽表現 / 表現活動 / 自己調整学習 / しなやかなマインドセット |
研究開始時の研究の概要 |
近年、様々な教育現場において、アクティブ・ラーニングの隆盛により音楽アウトリーチ事業が活発化しているものの、実践に関する研究知見が乏しく、経験則にもとづく評価が主流となっていることは否定できない。そこで、本研究では以下の3項目に着目し、音楽ワークショップ型授業の効果、およびそのメカニズムについて解明することを目的とする。 ①子ども個人に及ぼす効果(知識・技能、思考・判断・表現力、学びに向かう力や人間性等、または動機づけ、対人関係能力や自尊感情等) ②クラス集団に及ぼす効果(学級雰囲気、集団凝集性等) ③効果が生起するためのメカニズム(音楽家と子ども個人・クラス集団の相互作用やグループダイナミクス等)
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研究実績の概要 |
音楽ワークショップ型授業に参加した山口県内の小学生の中から、調査協力者2,251名(男子1,083名、女子1,137名、性別無回答31名)に対して、2022年6月から12月にかけて質問紙によるアンケート調査を実施した。 6件法によって収集したデータを分析した結果、ほとんどの児童(96%)が音楽鑑賞活動を通してポジティブ感情(楽しさ・美しさ・感動・あこがれ等)について、肯定的な回答が得られた一方で、自らは演奏したくない等の表現に対して否定的な回答をした児童が全体の14%に上った。さらに表現活動に関して意欲を示さない否定的な回答をした児童は、低学年よりも高学年に多く見られる傾向であることが明らかになった。つまり、音楽鑑賞によって、音楽に対する態度には変容が見られたものの、「きくのは好きだけど演奏は苦手だから」と演奏したい気持ちまでは至らないケースが少なからず存在し、音楽ワークショップ型授業の効果は、過去の音楽体験やマインドセット=mindset(例:才能は変化しない=硬直マインドセット、才能は磨けば伸びる=しなやかなマインドセット)によって異なることが明らかになった。 上記について、2023年2月18日(土)に同志社大学で開催されたJAILA第11回全国大会で成果を学会発表した。 マインドセットは、いずれか一方に限定されるのではなく、同じ個人でも分野によって異なるマインドセットを持ち合わせることがこれまでの研究で明らかになっており、特に芸術分野においては前者の硬直マインドセットが多く見られる傾向にあることが窺えるため、更なる解明を進める上で、各分野における更なる能力向上が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、次の4つの調査を実施した。 調査①質問紙によるアンケート調査:2022年6月から12月にかけて音楽ワークショップ型授業に参加した山口県内の小学生の中から、調査協力者2,251名(男子1,083名、女子1,137名、性別無回答31名)を対象 調査②半構造化面接調査:音楽ワークショップ型授業を実施した学校の教員の中から、調査協力者7名を対象 調査③半構造化面接調査:音楽ワークショップ型授業で音楽の演奏披露及び音楽の演奏実技指導を行ったプロの音楽家5名を対象 調査④非構造化面接調査:音楽ワークショップ型授業の効果及びその生起するメカニズムを客観的に検討するため、国内外の著名音楽家5名を対象 上記4件の調査を実施し、そのうち調査①についてはデータを集計し、分析を行いこれまでの研究成果を学会発表できたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
音楽スキルの教授・学習プロセスに自己調整学習の理論を適用したMcPherson, Nielsen & Renwickを参照し、音楽家が経験的に導出したプロ演奏の鑑賞が子どもの表現に影響を及ぼすこと、あるいは授業内で生起する模倣や同一化といった発達・学習プロセスに焦点をあてていく。音楽ワークショップ型授業が子ども個人に及ぼす効果としては、文部科学省の学習指導要領における3つの資質・能力「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」に関わる指標、または対人関係能力や自尊感情、動機づけ等が考えられる。また音楽ワークショップ型授業がクラス集団に及ぼす効果としては、学級雰囲気や集団凝集性などが想定される。そこで、これまでの授業実践とその観察、文献研究を継続し、その成果に基づいて音楽ワークショップ型授業が子ども個人やクラス集団に及ぼす効果について、これまでの質問紙法や面接法によって得られたデータの解析・分析を行い、明らかにすることを試みる。さらに音楽ワークショップ型授業の効果が生起するためのメカニズムに研究範囲を拡大し、各種研究データから仮説を生成する。とりわけ授業内での音楽家と子ども個人・クラス集団の相互作用に着目し、プロの音楽家による演奏の鑑賞が子どもの表現にどのような影響を及ぼすか。またその際に模倣や同一化といったメカニズムがどのように働いているのか、あるいは音楽家の使用する言語が子ども個人やクラス集団にいかに作用するのかに焦点をあてて検討していく。 質問紙法による調査結果にくわえて、半構造化面接・非構造化面接といった面接法によって得られた質的データの分析も行うことで、量・質的の両面から有機的に融合したアプローチを試みる。
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