研究課題/領域番号 |
22K02608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 裕貴 桜美林大学, 健康福祉学群, 准教授 (50465811)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 安全配慮義務 / 予見可能性 / 体育授業無事故化 / 挑戦欲求 / 教員のやりがい / 教師行動指針 / 体育安全指導便覧 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで、文部科学省の有識者会議が「学校における体育活動中の事故防止について」という文書を出して、運動部活動を含む学校スポーツ事故の防止策を様々に講じてきた経緯がある。しかし、事故はなくならず、不幸にも大きな傷害を負う児童生徒が毎年多くいる。本研究の目的は、こうした現状を踏まえたうえで、これまでどこにも発表されてこなかった体育授業の無事故化に向けた法的行動マニュアルとして、「体育授業無事故化のための教師行動指針」(万一事故が発生した場合でも教師が法的責務を全うしていたと認定されうる行動指針を含む)を開発すること、実際の体育授業で実効性をもつ「体育安全指導便覧」を案出することである。
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研究実績の概要 |
体育事故の裁判例はいくつかあるが、2023年度は静岡地方裁判所の平成28年5月13日判決(損害賠償請求事件)を取り上げたうえで、「公立高校野球部における生徒の負傷事案に対する教師行動の適否の検討」と題し、『Journal of Kanagawa Sports & Health Science』(神奈川体育学会紀要)第57巻1号に投稿した。この裁判例を選んだ理由は、比較的新しい判決であることだ。判決文はこれまでに積み上げられた多くの裁判例を基にしてつくられるものであるから、より新しいもののほうが、誤りが少なく適切であるといえるからである。 結果、2名の査読者による厳格な査読を終えて、掲載に至った。内容や構成に法学研究者の意見を取り入れながら、運動部活動中の偶発的事故における教師の安全配慮行動に関する問題提起を行うことができた。具体的には、バッティング練習中の投手のヘッドギア装着の義務に関する教師行動の是非の考察である。 現場で部活動顧問を務める教師は、在学契約における安全配慮義務につき、正しい理解を深めるべきである。教師は、文科省やスポーツ庁、その他各種スポーツ団体から出されている指導の手引きを遺漏なく隅々まで読み込み、生徒とともに練習メニューや実践の仕方を計画・立案・実施すべきである。日頃から、自分に対し「これまで通りで問題ない」「事故など起こらない」といった「甘え」や「緩み」がないか、指導上の留意点に「漏れ」がないか、事故防止の観点に「見落とし」がないかを、自作のノートやスマートフォンのメモ機能などを使って確認・管理しておきたいものだ。万が一、事故が起き、裁判となってしまった場合、それらが自分を守る「証拠物」になりうることを深く心に停めておくことが肝要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体育事故の様々な事案(裁判例)につき検討している。運動部活動の顧問の教師には、生徒の生命及び身体の安全を保護するための指導監督(安全配慮義務)を行うとともに、事故を予見し、回避すべき義務(結果回避義務)があるということについて、野球部を例に、教師ないし教師志望者に熟慮を促す材料を具体的かつ実用的に提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の点にも注意を払って検討したい。裁判所は「学校現場の実情」を積極的に考察していないのではないか。より多くの教師たちの意見を聞き、運動部活動の練習・試合における事故というものがどれほど偶発的なものであるかを審理していないのではないか。裁判所からの回答は得られないと思うが、元判事であった人物などから詳細を聞けるよう努力したい。 また、体育事故を含む、スポーツ基本法の条文に焦点を当て、そこから裁判例を抽出し、どのようなことがどういう経緯で紛争に至っているのか、それを解決する手立てはないのかを探りつつ、提言という意味での書籍を出版したいと考えている。
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