研究課題/領域番号 |
22K02626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
加藤 圭司 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (00224501)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 知識統合理論 / 深い学び / 中学校理科 / 俯瞰する思考活動 / 立体型イメージマップ / 生徒の思考プロセス / 対話 / 知識構築 / 理科授業デザイン / 中等教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,現行学習指導要領の趣旨の中で,特に「深い学び」の概念的定義に包含される知識等の関連付け,すなわち「知識統合」の視点から学習者の姿を明らかにすると共に,その学びを具現化する理科の授業デザインのあり方を、デザイン原則として確立することを目指すものである。 本研究は,「知識統合理論」の我が国の理科学習への援用を超えて,科学に対する本質的な理解の獲得に至る理科授業のデザイン原則の抽出を試みるものである。さらに,抽出されたデザイン原則の妥当性を試行的な理科授業実践を通じて検証するなどして確立し,我が国の理科授業における「深い学び」の実現に向けた有用な情報として提供すること目指すものである。
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研究実績の概要 |
研究1年目で明らかにすることができた、我が国の学習者の理科学習における知識統合の実態の2点、すなわち、ア:「問題(課題)解決過程における学習者の知識統合は、Linnが狙ったような比較的大掛かりな科学的な知識間の統合というよりは、むしろ『自分の考えと他者の考え』、『既習の知識と自分の考え』を一つずつ結び付けていく小さな統合の蓄積によって成立していく可能性が高いこと」。イ:「異なる分野・領域間の内容を統合することで科学の本質的な理解に至る『視点①の統合』については、授業レベルでの実現が容易ではないこと」。この2点の実態を踏まえて、これまで以上に知識間の統合をはかる指導の手立てを検討したのが、2年次目の研究であった。 検討した指導の手立ては、①「学習材レベルの支援策と位置付けられる『立体型イメージマップ』の考案とその活用可能性の検討」、②「カリキュラムレベルの支援策と位置付けられる『学習事項を俯瞰する思考場面』の組み込みの可能性の検討」の2つである。 1つ目の「立体型イメージマップの活用」は、学習者がマップの作成方法を理解できれば、授業内容の整理やまとめとしてマップの作成に取り組めることから、普段から関連づけや統合の意識を持って授業にのぞめるメリットがある一方で、学習内容を図的に表現することの難しさから、個人差が顕著に表れる点に課題が残った。 2つ目の「学習事項を俯瞰する思考場面」の授業への組み込みについては、どの知識やどの分野の学習内容と結び付けるのかを教師側が十二分に把握して指導にあたらないと、学習者の適切な統合を実現できないという、教師側のカリキュラムデザインにおける課題が明らかになった。 3年目は、より多くの授業における知識統合の実現を目標に、特に2つ目の「学習事項を俯瞰する思考場面」の組み込みについて実践レベルで検討を加え、研究の成果として取りまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アフターコロナ期になり、学校現場でもほぼ通常通りの授業が実施されていたことから、外部研究者が学校に入って実態調査を行ったり、単元の授業全体を継続的にVTRで記録したりすることは、前年度よりは実施しやすい状況であった。ただ、以下の2点で想定以上の難しさに直面したことで、予定よりもやや遅れ気味になっている。 その理由の一つ目は、児童・生徒主体の問題(課題)解決過程を重視した理科授業を実践されている教師や、対話や表現の活動を多く取り入れるなど思考力重視を掲げる学校が、実態として思いの外少なかったことである。この傾向は、特に中学校において見られ、結果、分析対象としての理科授業を抽出・選定するまでに多くの時間を要することとなった。 理由の二つ目は、「習得した科学的知識を日常生活や既習事項に結びつける」ことまでを想定して、単元のカリキュラム全体を研究者と共同で再構築するとともに、その授業実践全体をVTRとして記録することにご協力いただける教師や学校が、思いの外少なかったことである。ある程度まで想定できた実態ではあったが、これらのことが研究の遅れにつながったと考えている。 いわゆる公立学校現場の授業実践の実態と、本研究が希求する理科授業の在り方に少なからず隔たりがあることが見えてきたことを受けて、今年度は、研究推進校である附属学校に協力依頼をするなど、実態調査の方向性を一部変更し理科授業のVTR記録と分析を進めた。次年度は、複数の附属学校に対して継続的な協力を依頼すると共に、県や市の理科研究会にも協力要請を行うなど、より質の高い理科授業を実践している教師の協力を得つつ、本研究の最終目標である知識統合を実現する理科授業のデザイン原則にを明確化することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記したとおり、我が国の理科授業で展開される問題(課題)解決過程の中での知識統合を促す指導の手立てとして、今年度の研究から以下の2点を措定するに至っている。 ・学習材としての「立体型イメージマップの活用」による学習者への知識統合に関する意識づけと、実質的な知識統合の実現 ・カリキュラムレベルでの「学習事項を俯瞰する思考場面」の組み込みの検討 立体型イメージマップは、特定の道具を用いる授業形態になっていくことから、普段の理科授業とは別物ととらえられる傾向があることと、本研究の主眼である授業のデザイン原則の抽出を目指すことにおいて、方向性を異にすることから、3年次目は、カリキュラムレベルでの検討を中心に置き、どのような場面で「学習事項を俯瞰する思考場面」を組み込んでいくことが、知識統合に有益なのかを検討することを主に進めていくことを考えている。そして、そのデザイン原則に従った授業実践を事例的なモデルとして打ち立てることを目指して、研究協力者に実際の授業を実践してもらうことまでを、本研究の最終目標として研究を進めていきたい。
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