研究課題/領域番号 |
22K02627
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
光永 伸一郎 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (20260549)
|
研究分担者 |
佐藤 ゆかり 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40510813)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 教科内容 / 地域資源 / 教科横断 / プラットフォーム / 発酵食品文化 |
研究開始時の研究の概要 |
伝統や文化に関わる「地域資源」には各教科内容が多く含まれており、次世代における教科横断的教材としてもふさわしいものと考える。そこで、『教科内容を包含した「地域資源」を、教科横断的に学ぶためのプラットフォームの創出』について検討する。「地域資源」の学びを通して、各教科内容の習得・理解を確実なものとし、教科横断的学びを強固にすることが本研究の目的であり、そのためのプラットフォーム(枠組み)の創出を試みる。
|
研究実績の概要 |
伝統や文化に関わる「地域資源」には各教科内容が多く含まれており、次世代における教科横断的教材としてもふさわしいものと考える。そこで、『教科内容を包含した「地域資源」を、教科横断的に学ぶためのプラットフォームの創出』について検討した。ここでいうプラットフォームとは「枠組み」の意味であり、いわば「地域資源」に関する学術的根拠のある情報の一覧といえる。すなわち、「地域資源」の学びを通して、各教科内容の理解・習得を確実なものとし、教科横断的学びを強固にすることが本研究の目的であり、そのためのプラットフォームの整備・活用を進めている段階である。「地域資源」の授業実践を通して、子どもたちが地域に関する豊かな学びを得ることはもちろん、地域への誇りや愛着を高めることにも期待をしている。 特徴的な「地域資源」として、まず、上越地域の発酵食品文化についての調査・分析を行い、そこに含まれる教科内容を顕在化させた。具体的には、学習指導要領等を参考に、家庭、国語、外国語(英語)、社会、及び理科の5教科に関わる内容を抽出した。並行して、調査・分析により得られた情報を教科内容との関連のもと、体系的に整理・再編(プラットフォーム化)した。プラットフォームから得られた情報をもとに、実験・実習等の教材を考案・作成した。作成した教材については、小・中・高等学校の授業実践に導入し、教科内容の理解や教科横断的学びを深める試みを行った。また、教材を考案・作成する際には、学年縦断的要素も加味し、発達段階に応じた授業展開が可能になるよう配慮した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上越地域の発酵食品文化に含まれる家庭の内容として、『国菌「こうじ菌」が作り出す伝統的発酵食品』を抽出したが、それに関連する情報として地域の特産品である「浮きこうじみそ」に着目した。小学4~6年生を対象とした学習講座においては、地元のみそ業者さんによるみそ作り体験と並行して、その材料と製造方法についての解説を行い、教科内容の理解・習得を図った。具体的には、材料の「米こうじ」が、蒸米にこうじ菌を培養したものであり、「浮きこうじみそ」の甘味は、「米こうじ」の使用割合が高いことに起因することを試食・実習を交えて解説した。 理科の内容として『発酵の過程における「こうじ菌」酵素の役割』を抽出したが、関連する情報として「こうじ菌」に含まれる強力な消化酵素に着目し、これを、中学3年生を対象とした出前授業の教材とした。発酵の過程で生ずる反応は複雑であるが、その中の例として、微生物のもつ酵素による消化反応をあげることができる。中学生になると、理科の内容として消化酵素が登場することから、「こうじ菌」の消化酵素の1つであるアミラーゼが、蒸米のでんぷんを分解し、ぶどう糖を生ずる様子について、実験教材を交えて解説した。また、ぶどう糖が、「浮きこうじみそ」をはじめとする発酵食品の甘味の要因となっていることを補足解説し、家庭との教科横断的要素についても言及した。 一方、「こうじ菌」のアミラーゼによるでんぷん分解を扱った実験教材については、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の一環の講演において、探究学習の課題例として提示し、探究の進め方についても言及・解説している。「こうじ菌」を中心に据えた授業実践を、小・中・高等学校間で有機的に連携することで、学年縦断的要素を加味した展開も可能になるものと考えた。 なお、上述の実践に活用した実験・実習教材については、現在,学術論文としての投稿準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、上越地域の発酵食品文化についてのプラットフォームを活用した教材開発や、授業実践を進めていきたい考えである。具体的には、先の「こうじ菌」に関わる社会の内容として『上越の気候・風土と「こうじ菌」』を抽出しており、日本海側の高温・多湿と「こうじ菌」の生育に関する教材を検討する考えである。また、「こうじ菌」とは別に、家庭の内容として『和食の基本となる「うま味」を支える発酵食品』も抽出しており、「うま味」に関する教科横断的授業展開についても検討していく予定である。外国語(英語)の内容としては『世界に認められる和食と「うま味」』を抽出しており、国際コミュニケーションツールとしての「うま味」や発酵食品文化の活用を検討中である。国語の内容としては『「うま味」研究の祖である地域の偉人・坂口謹一郎博士』を抽出しており、歌人としても知られる博士の和歌や、多岐にわたる交友関係を教材として活用することができればと考えている。最終的に、このプラットフォームについては、本研究のスタンダードとして学術書等にまとめたい考えである。 なお、今後は教材開発や授業実践を行うだけではなく、その評価についても検討していきたい考えである。実践の結果、児童・生徒においては、教科内容の理解が伴っていたか?教科横断的・学年縦断的な支援ができていたか?地域への誇りや愛着を高めることができたか?などの点について、検証を進める予定である。 また、その他の特徴的な「地域資源」についても、有効なプラットフォームの作成を進めていく考えである。具体的には、上越地域のサメ食文化と麦芽水飴文化についての情報収集を進めている状況である。なお、サメ食文化については、関連の情報を取集している過程で、新規の事実を確認することができたため、日本家政学会第75回大会において発表を行うことになっている。
|