研究課題
基盤研究(C)
文学的文章を扱う授業・単元において「翻案」という言語活動が国語科の学習の促進にどのような貢献をするのかを実証的に解明することを本研究では目指す。具体的には、「翻案」活動を組み込んだ小学校、中学校、高等学校の授業単元モデルの開発をゴールとする。そのために、「翻案」をどのような手続きで行うべきか、また、どのような教材において本活動は有効に機能するか、各学校種における授業研究を通して検証していく。
①研究協力者のひとりである長野県南木曽町立南木曽中学校・山口学教諭の協力を得て、中学生の翻案活動に関する調査を実施した。具体的には「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」という和歌を小説に書き直すという課題を中学生に取り組んでもらい、中学生たちが元テクストの和歌をどのように解釈し小説として2次創作をするのかについて検証するための調査である。今回の調査では35例のサンプル(作品)が収集でき、現在その内容を分析中である。②長野県国語教育学会研究会において「『読むこと』の学習の促進」と題した招待講演を行い、本研究を通して導かれた知見について、小学校・中学校の国語教員約50名を前に解説する機会を得た。そして本講演の内容の一部を論文化し「創作的・創造的行為としての『読むこと』の学習―『続き物語』の検証を通して―」と題して刊行した(コモンズ・ランガージュ『ランガージュ2』)。③研究代表者が本務校(信州大学教育学部)において担当する講義「中等国語科指導法基礎」において、「五月雨に物思ひをればほととぎす夜深くなきていづちゆくらむ」という和歌を小説にするという言語活動を実施し、受講生約50名とともに、翻案という活動の学習効果について検証した。また、同様の活動をchatGPTにも作成させ、研究代表者がみずから作成した翻案小説と比較しながら、人間と生成AIとでは作品にどのような相違が生じるのかについて考察した。
2: おおむね順調に進展している
中学生を対象にした調査の実施、講演会での研究成果の発表、論文発表による研究成果の公表など、おおむね当初の計画通りに研究を遂行することができた。
中学生が作成した翻案作成の分析を通して、翻案という活動が中学生の「読むこと」の学習をどのように促進させるのかについて検証していく。検証の結果については2024年度内に学会発表を行うか、論文として公表する予定である。
すべて 2024 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
信州大学教育学部研究論集
巻: 18 ページ: 188-201
10.50928/0002002030
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/records/2002030
ランガージュ
巻: 2 ページ: 52-61
信州大学教育学部附属次世代型学び研究開発センター紀要 教育実践研究
巻: 21 ページ: 151-160