研究課題/領域番号 |
22K02636
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
金野 誠志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (50706976)
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研究分担者 |
太田 直也 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (10203796)
永田 成文 広島修道大学, 人文学部, 教授 (40378279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 価値の多元性 / 価値の階層性 / 価値の並列性 / 学校間遠隔授業 / 富岡製糸場と絹産業遺産群 / 価値の相対化 / 対外認識 / 自己認識 / 国際社会への参画 |
研究開始時の研究の概要 |
世界遺産教育をESDのための15の戦略的テーマ「文化の多様性と異文化理解」」に位置づけられる。しかし,その理解は,世界遺産等が有する価値の多元性を抜いては浅くなってしまう。また,それらが,国際社会への参画意識を高めることができてこそ,SDGsともつながり、意義深いものとなる。自他の文化遺産が有する価値の多元性や関係性を踏まえた価値認識を高め,それぞれの文化の価値尊重,価値への対応について探究し伝え合う授業を開発する。その際に重視するのは,対外認識を鏡として生まれる自己認識の変化の自覚である。そして,実施・検証して他国にも望まれる国際社会への参画意識を高めるESD授業のモデルを提示する。
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研究実績の概要 |
本研究を進めるにあたり整理しておかねばならない「多元的な価値」を以下の2点から整理し、可視化することができた。それは、まず、価値の階層性から見た「グローバルな価値」、「リージョナルな価値」、「ナショナルな価値」、「非真正でローカルな価値」、「真正でローカルな価値」の関係性である。次に、価値の並列性から見た異なる労働組合,教会,慈善団体,女性団体,環境保護団体,エスニック集団等,無数の自発的集団の一員として有する価値の関係性である。このことによって、児童が伝え合う「多元的な価値」を理解し明確にすることができると考える。これらのことは、令和5年3月に発刊された国際異文化学会学会誌『異文化研究』第16号で論文として公開している。 また、具体的な研究対象である文化遺産として教材化を進めている世界文化遺産『富岡製糸場と絹産業遺産群』が有する「多元的価値」の調査が具体的に進んでいる。従来注目されがちであった外国から技術導入して稼働させた「富岡製糸場」のみならず、日本の近代化を支え、日本で磨かれ続け養蚕技術に視点を当てた「高山社跡」および「荒船風穴」が有する「グローバルな価値」、「リージョナルな価値」、「ナショナルな価値」、「非真正でローカルな価値」、「真正でローカルな価値」が具体的な実地調査・聴き取り・文献収集によって明らかになってきた。このことによって、児童が学習で用いるために作成予定のテキストを作成する準備がほぼ整った。 以上のことは、共同研究者、研究協力者との間で情報共有できているが、近代化以前の絹産業に関する知見を整理し、近代化へ繋がる土壌を確かなものとするよう現在調査を進めている。 今年度、来年度実施する予定の遠隔授業に関しては、複数の学校においてや実際のコミュニケーションの状態について機器を試用しつつ確認を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での実地調査を中心とした海外の文化遺産が有する「多元的な価値」の調査が、コロナ禍の影響を受けて、進んでいない部分がある。最も該当するのが、イギリスの首都ロンドン南西部のキューにある王立植物園 (Kew Gardens)に関するものである。この王立植物園とアフリカ・熱帯アジアをはじめ世界各地に大英帝国がつくった植民地植物園との間に張り巡らされたネットワークのなかで、王立植物園が果たした役割とその内容を、現在のイギリスでは学校教育あるいは社会教育のなかで具体的にどのように扱っているのか、調査していく必要がある。具体例としては、王立植物園とシンガポール植物園との関係性を取り上げる予定であるが、シンガポール植物園の果たした役割と、シンガポールの学校教育、社会教育での取り扱いについてはかなり明確になってきている。今年度は、コロナ禍による影響は大きく減少すると考えられるため、シンガポール、台湾を含め、実地調査並びに文献による調査を進め、授業化が実現するようにしたい。 遠隔授業実施にあたっての協力校間の打ち合わせや実際の試験的交流も、コロナ禍にあって、十分進んできたとは言いがたい。この点についても、遠隔授業が実現するよう準備を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計画では、「日本が台湾に残した潜在的な世界遺産」及び同時期に機能していた「日本の世界遺産」、「イギリスがシンガポールに残した世界遺産」及び同時期に機能していた「イギリスの世界遺産」について協力校と連携し,教材化を進めるということであったが、後者について協力校と連携し,教材化を進めることが別記の通り遅れている。この遅れをコロナ禍の影響が減少する機会を逃さず協力校と連携し,教材化を進めていくようにしたい。具体的には、6月及び9月には、台湾及びイギリスへ渡航し、調査研究を進めていく。コロナ禍の影響が再度深刻になった場合は、これまで同様に、直接渡航しなくてもできる調査研究を進めつつ、場合によっては研究の進捗を鑑み研究計画の見直しを進めることも想定しておきたい。 また、本年度は、シンガポールと台湾に残され現在まで機能している世界遺産等の文化遺産に関して構想した授業を実施し分析することを計画している。よって、まずは、授業に用いる教材を確定・作成し、授業計画を整えていきたい。その際、これらの文化遺産が,統治国や被統治国において,近代化や国際社会への関与という面でどのような深い関連性がみられるか理解できるように準備しておく。そして、実際の遠隔授業が滞りなく行われ、授業の結果が検証できるよう、児童のアンケートやワークシート分析を中心とした授業の分析指標を設定しておく。 そして、最終年度に、日本と台湾,イギリスとシンガポールの関係性を対照し,学習者が自文化認識を高め、自他の文化尊重と国際社会への参画意識の高まりが確認できるように進めていく。更に、開発授業の検証を行い試案化できるようにする。
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