研究課題/領域番号 |
22K02640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中山 京子 帝京大学, 教育学部, 教授 (50411103)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | パラオ / キリバス人 / 焼津 / 環太平洋意識 / ポストコロニアル / 環大平洋意識 / 教材開発 / 太平洋シティズンシップ |
研究開始時の研究の概要 |
日本では、一般的に太平洋との関わりに関する認識や知識が乏しい。それは戦後、学校教育において太平洋について十分に扱ってこなかったことに起因する。環太平洋国家として、パートナーシップを構築するために、次世代を担う児童・生徒及び教師が太平洋島嶼国への理解を深め、ポストコロニアル時代の関係構築のための基礎的な教養を身につける必要がある。 本研究では、太平洋理解に必要な視点を明確にして教材を開発するとともに、授業用資料、指導案、実践事例という具体的な方策を示し、教師や児童生徒に太平洋への意識を覚醒させ、環太平洋市民の育成を図るモデルを示す。
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研究実績の概要 |
<海外調査>パラオにおけるコロニアル時代の影響とポストコロニアリズムの様相を調査した。パラオは日本が南洋を統治した時代の拠点であり、太平洋のコロニアリズムを日本との関わりの中で検討すべき事例地として着目した。パラオ人コミュニティには日本統治時代の「シューカン」などの習慣が根付き、人々の生活に負荷をかけている事例がある一方、兵庫県のガラス工房が支援しながらパラオの環境改善のプログラムとしてガラスのリサイクルや工芸作品の生産など、現代における「連携」のモデルを見ることができた。環太平洋意識の育成を考える教材のための具体例や視点を得ることができた。また、グアムでは、ケンコーポレーションの協力を得て先住民族チャモロのインタビュー記録を収録することができた。 <国内調査>キリバス人漁業就労者と雇用をマネージメントする会社の取材を焼津にて行った。鰹一本釣り漁船はキリバス人とインドネシア人によって支えられている。近年ではマグロ漁船も同様である。焼津に停泊する漁船で働くキリバス人にインタビューを行い、船内を見学した。また、キリバス人の漁業就労を斡旋する会社の営業所で働くキリバス人へのインタビューや社長の仕事の取り組みを見学した。これらのことから、日本の学校教育で扱うべき水産業の視点や、太平洋に関する教材開発の視点を得ることができた。 <研究会の組織>日本国際理解教育学会で「ポストコロニアル時代における環太平洋意識の育成ー連帯性を養う教材開発に向けてー」として研究の枠組みを発表し、そこで研究への参加者を募集した。小学校・中学校・高等学校(日本各地・アメリカサンフランシスコ)の教員、大学の教員(合計12名)による研究会を組織して11回のオンライン研究会を実施した。そこでは、太平洋について教材開発することの意義や教材開発の視点を共有すること、試行的に取り組んだことの報告などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度に予定した焼津、パラオでのフィールドワークを実施することができた。教材開発に向けて小中高大の教員で研究会を組織し、オンラインにて研究会を実施し、研究視点の共有や実践に向けてのアイディアを出し合う生産的な議論ができた。当初の計画以上に進展したのは、ケンコーポーレーションの協力を得て、グアムにおいて太平洋戦争経験者、太平洋戦争の家族の物語を引き継いだ人、チャモロ文化研究の専門家、チャモロダンスの若い指導者にインタビュー記録を収録し、教材利用のための編集作業が進んだことである。
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今後の研究の推進方策 |
主に2023年度は、資料収集や人類学者の知見を得ながら、静岡県焼津(キリバス人コミュニティの取材)、グアム島でのフィールドワーク、インタビューを行う。「教材開発に向けた問い・テーマ」をもとに、取材して教材として使用できる資料収集や撮影 (動画、写真)を行う。研究のプロセスにおいてアメリカ領サモア島などでの調査の実施可能性も検討する。感染症による航空便数の減少の影響や費用も検討する。 研究会は、継続して主にオンラインで 行うことで全国の教師と繋がりやすくし、また移動のための経費や時間を節約し、より効果的に教材開発に労力を使えるようにする。主に2023後半-2024年度は、教材研究(知識の蓄積、分析と整理、授業づくりへの視点や使用資料の抽出)と発達段階や教科に合わせた教材開発を行う。現在、想定している教材のテーマは、「環境問題解決に取り組むパラオの人々の願いは何か」「ハンセン病に苦しんだ太平洋の人々の共通の物語」「太平洋の島々に見る『ドイツパン』『フランスパン』『イギリスパ ン』」「コロナが太平洋の島を襲う-守られる人々と守られない人々-」「パシフィックアイランダーは誰のことか』「米軍によってもたらさ れた『スパム』は環太平洋のシンボルなのか」「ポスト・コロナの太平洋ツーリズムのあり方の模索」「太平洋島嶼の音楽の多様性から見るダ イバーシティ」「環太平洋におけるシティズンシップはどのように発展したらよいか」などである。教材の解説資料を作成する他、指導案に書 き起こして議論をする。 研究の進度と成果に応じて、日本国際理解教育学会や日本社会科教育学会での発表、シンポジウムの開催などを計画する。2025年度は、刊行できるレベルの報告書や普及のためのブックレットなどを作成し、公開する。これらの方法を経て、太平洋について意識化することの意義と具体的方策の可能性を明らかにする。
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