研究課題/領域番号 |
22K02648
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
青木 香代子 茨城大学, 全学教育機構, 准教授 (00793978)
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研究分担者 |
森茂 岳雄 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (30201817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 社会正義のための教師教育 / 多文化教師教育 / 外国人児童生徒等教育 / 社会正義 / 教師教育 |
研究開始時の研究の概要 |
多様化する教育現場において、様々な背景を持つ児童生徒に対する教育が研究されてきた。しかし、教師自身が自らの特権性に気づき、抑圧構造を批判的に捉えて生徒と共に行動に移していくという社会正義のための教育の視点にたった教師教育は十分に行われていない。本研究では、アメリカの社会正義のための教師教育の理論研究及びカリキュラム分析を行い、そこで目指される教師の資質・能力を明らかにするとともに、日本において外国人児童生徒等教育や多文化共生教育等に携わっている教師や支援者に対するインタビューを通して、現状の課題を分析する。その上で、多文化社会日本における社会正義を志向する教師教育改革の視点を提出する。
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研究実績の概要 |
本研究は、多文化化・多様化する日本社会において、多様な背景を持つ児童生徒に対して対応できる教師教育について、社会正義のための教師教育(Social Justice Teacher Education, 以下SJTE)の視点から、そこで目指される教師の資質・能力を明らかにし、多文化社会日本における教師教育改革の視点を提出することを目的とする。これまで日本の大学における教員養成課程等では、多様な背景を持つ児童生徒に対する指導を行う教師教育として、主に年少者日本語教育や外国人児童生徒支援教育、異文化間教育論、多文化共生論といった科目が開講されてきている。しかし、そのような児童生徒が直面せざるを得ない不平等や不公正といった抑圧状況について教師自身が理解し、それに対して働きかけていくといったSJTEの視点は弱かった。そのため、本研究では、主にアメリカを中心に展開されてきたSJTEにおける理論的研究及びカリキュラム分析を行い、それらについて整理したうえでSJTEにおいて目指される教師の資質・能力を明らかにし、日本において直接外国人児童生徒等教育に携わっている教師やボランティアへの調査から、日本におけるSJTEで目指される資質・能力について探り、教師教育プログラムの開発について考察する。 初年度の2022年度は、アメリカにおけるSJTEが進められてきた背景として、多文化教師教育に対する批判的検討と、SJTEにおける議論として、社会正義のための教育におけるスタンダードの検討を行い、そこで目指される資質・能力の視点を参考に、アメリカの高等教育のSJTEの事例をもとに、カリキュラムの分析及び日本におけるSJTEプログラムの開発の視点を考察した。2023年度はさらにアメリカ及び日本でインタビュー調査等を行い、SJTEのプログラム開発における課題を明らかにし、SJTEのプログラム開発を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2022年度は、アメリカにおけるSJTEが発展してきた背景として、多文化教師教育の発展から社会正義を志向するSJTEが強調されるようになった経緯を検討したうえで、SJTEで目指される資質・能力について考察した(森茂・青木、2023)。これまで多文化教師教育は、文化的差異の表面的理解にとどまっているということが指摘されてきた。そのためSJTEでは、社会正義の問題をプログラムの中心に据えること、教師自身が自らの特権性に自覚的になり、構造的抑圧に対して批判的に分析すること、そしてそれを教授に取り入れること、さらに児童生徒と共に教室の外に働きかけるための知識とスキルを身に付けることが目指されるということが分かった。また今年度の研究では、アメリカにおいて社会正義のための教育を実践している教師を支援している団体であるLearning for Social Justiceが示している社会正義のためのスタンダードの分析を行い、先行研究であげられたSJTEの事例をスタンダードに沿って検討した。このスタンダードでは、①肯定的な自己アイデンティティ、②多様性への理解と尊重、③不公正・不正義の認識と公正・正義の追求、④差別や偏見、排除、不正義に対する行動、の四つの領域にアンカースタンダードが設けられていることが分かった。これらの分析を基に、日本における教師教育プログラムの改革のための視点として、多様な背景を持つ教員の採用、社会正義の視点を中心としたカリキュラムの編成、多様な児童生徒が通う学校での実習やコミュニティ体験といったことをあげることができる。 2023年度はアメリカ及び日本においてインタビューを行い、日本におけるSJTEの視点を取り入れたさらに具体的な教師教育改革の課題を研究する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、SJTEにおける理論的研究及びアメリカにおけるSJTEのカリキュラムの分析をさらに進めるとともに、SJTEプログラムを実施している高等教育の教員や、SJTEプログラムを受けた教師にコンタクトを取り、高等教育における教師教育と、それが教育現場でどのように実践されているかについてインタビュー調査を行う。さらに、日本におけるSJTEプログラム及びスタンダードの開発を行うため、日本において外国人児童生徒等教育に携わっている団体や日本語教育コーディネーター、また多様な背景を持つ児童生徒の支援を行う教師の育成に関わってきた教員にインタビューを行い、SJTEの視点から分析し、日本におけるSJTEで目指される資質・能力を探り、スタンダードの開発を試みる。 具体的には、サンフランシスコ大学大学院、サンフランシスコ州立大学大学院、モントクレア州立大学大学院、茨城NPOセンター・コモンズ等、国内外の高等教育機関及び多様な背景を持つ児童生徒の教育にあたる教師、及び教師を支援する団体に直接、または紹介を通してコンタクトを取り、インタビュー調査を行う予定である。異文化間教育学会、日本理解教育学会等において研究発表を行い、参加者から助言を得て改善を試みる。
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