研究課題/領域番号 |
22K02700
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
杉本 英晴 関西大学, 社会学部, 准教授 (20548242)
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研究分担者 |
寺澤 朝子 中部大学, 経営情報学部, 教授 (40273247)
佐藤 友美 (分部友美) 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (80633825)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | キャリアにまつわる神話 / ライフキャリア教育 / 学校から仕事への移行 / 進路選択 / 進路適応 / 思い込みの脱構築 / キャリア発達 / キャリア神話 / 大学から仕事・社会への移行 |
研究開始時の研究の概要 |
長期雇用慣行を前提とした安定的な社会から流動的で不安定な社会への加速度的な転換が起こる中,大学の教育課程におけるキャリア教育への見直しが進み,ライフキャリア教育の拡充が求められている。本研究では,「キャリアにまつわる神話」に焦点をあて,神話が限定的な進路意思決定に及ぼす影響とともにそうした神話の脱構築メカニズムを解明する。そのうえで,神話の脱構築を促すライフキャリア教育プログラムを開発し,大学生の進路意思決定,さらには卒業後の職場適応への有用性を示す。本研究は,大学におけるキャリア教育の再考のみならず,早期離転職の抑制効果など成人初期のキャリア発達への波及効果をもたらすことが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では,大学におけるキャリア教育プログラムとして,ワークキャリアへの偏重を見直しライフキャリア教育プログラムを構築すべく,「キャリアにまつわる神話」(以下,キャリア神話)に焦点をあて,神話が限定的な進路意思決定に及ぼす影響とともにそうした神話の脱構築メカニズムを解明することを目的としている。 3年間の研究期間の二年目にあたる令和5年度は,令和4年度に引き続き,1)標準的なライフキャリア教育の基準を明確化すべく,開発されたライフキャリア教育の効果測定を行うこと,2)学生のみならず社会人からの回答をもとに「キャリア神話」の尺度を作成することが目的であった。 1)については,令和4年度で確認されたライフキャリア教育の効果が単年度に限定されない十分な効果を有しているか,ライフキャリア教育の授業の受講者・非受講者の大学生を対象に,質問紙調査による検証を行った。その結果,受講者は授業に対する高いコミットメントやキャリア意識の深まりを毎回の授業で促され,授業全体を通して非受講者に比べ,性格特性の開放性の向上,自尊感情の向上,進路選択に対する自己効力の向上,時間的展望における現在の充実,目標指向性の獲得,キャリア・アダプタビリティの向上,さらにはコミュニケーション・スキルの獲得など,十分な教育効果が確認された。 2)については,令和4年度で検討が不十分であった社会人の「キャリア神話」を検討するため,社会人を対象に,ワークキャリアやライフキャリアの中でのキャリア神話,および,そのキャリア神話の構築・脱構築した理由などについて,自由記述による調査を実施した。その結果,学生調査からは得られなかった進路選択・適応を阻害するキャリア神話が抽出された。 なお,これまでの研究結果の一部は,中部大学研究23号,および,日本心理学会第87回大会,日本発達心理学会第35回大会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度の第1の目的は,令和4年度から継続して,標準的なライフキャリア教育の基準を明確化すべく,開発されたライフキャリア教育の効果測定を行うことであった。継続の検討課題ということもあり,授業の実施,データの収集,データの入力,およびデータ入力補助の確保も順調に進み,滞りなく研究を進めることができた。 他方,令和5年度の第2の目的は,令和4年度の学生調査によって示された「キャリア神話」に関する尺度項目を社会人調査から検討し直すことであった。その際,学生調査とは異なり,社会人からのデータ収集が非常に難航した。また,得られた社会人データを分析した結果,学生調査に見られなかった偏りがみられた。分析結果の検討から,社会人の調査対象者が企業に勤めている人に限定されており,起業や自営業,フリーランスでの就業に関するキャリア神話が抽出されていないことが確認された。こうした調査対象者の偏りを考慮し,起業や自営業,フリーランスの就業形態の社会人調査も追加で行った。「キャリア神話」に関するより高い信頼性・妥当性を兼ね備えた尺度を作成すること,そのための尺度項目を設定することは非常に重要であり,検討に時間を要したが,十分なデータを収集できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の前期には,学生・社会人から得られた「キャリア神話」に関するデータをもとに構成された「キャリア神話」尺度の妥当性の検証を行う。学生・社会人に調査を実施したうえで,十分な信頼性・妥当性を有した尺度を作成する予定である。 さらに令和6年度の前期には,並行して抽出された神話をKJ法により分類したうえで,回答者数名を神話ごとに抽出し計20名程度にインタビュー調査を行う。半構造化面接によりデータを収集し,M-GTAによる質的な分析から,キャリア神話が学生の進路選択・決定,新入社員の職場適応に及ぼす影響に関する仮説モデルを構築する。 令和6年度の後期には,構築されたキャリア神話が学生の進路選択・決定,新入社員の職場適応に及ぼす影響に関する仮説モデルの検証を行うべく,質問紙調査を実施する。さらには,キャリア神話の脱構築メカニズムについても明らかにするために,インタビュー調査を行う予定である。 なお,これらの研究成果は,日本発達心理学会や日本キャリア教育学会にて,学会発表や学会誌への投稿により行っていく予定である。さらに,研究協力者には,研究成果公開パンフレットを最終年度に作成し配布するとともに,インターネットでも公開する予定である。
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