研究課題/領域番号 |
22K02773
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09060:特別支援教育関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
雲井 未歓 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70381150)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 読み書き困難 / 学習障害 / 学習困難リスク / メタ認知方略 / 学習支援 / 学習困難 / 読み書き |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、学習障害児およびそのリスク水準にある児童への読み書き支援を、学習方略の形成と利用に着目して検討する。目的は、漢字の学習方略の形成を促進する要因を明らかにすることとし、そのためにメタ認知方略に基づく介入の効果を検証する。これらの介入は、通常学級でのプリント教材による指導と、臨床事例のタブレット教材による個別指導において実施する。このことが、学習内容の定着や新たな内容の習得に及ぼす効果を分析し、読み書きの学習方略の形成とその促進要因を明らかにする。それに基づき、読み書き困難への自己対処方法としての有効性を考察する。
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研究実績の概要 |
今年度は(1)小学生の児童における特殊音節単語の読みの流暢性に関する検討、(2)読み困難のリスク把握に関する検討、(3)学習障害を伴う事例への具体的な介入について、それぞれ検討を行った。 (1)では特殊音節を含むひらがな単語を用いた語彙判断課題のペーパーテストを作成し、通常の学級に在籍する1~6年生の計295名を対象として学級ごとに実施した。その結果、課題の成績と対象児の学年との間に有意な相関を認め、特殊音節単語の読みの流暢性が学年に伴って増大することを確かめた。また、その成績は各学年とも特殊音節を含まない単語で行った結果と比較して一貫して低く、特殊音節が単語読みの流暢性に及ぼす影響を明らかにできた。(2)については、放課後等デイサービスを利用する3~6年生30名を対象に、単語読みの流暢性、漢字単語の読み、文章の内容把握、聴覚記憶の各課題の成績に基づいて計10項目の評価を行った。その結果、2つ以上の項目で低成績(10パーセンタイル以下)を示す児童が15名(50%)認められた。一方、保護者への聴取で学習面のニーズに言及された児童は3名と少なく、多くは集団への適応や友人関係等の行動面のニーズであった。この結果から、行動面のニーズが中心となる児童の中にも読み困難のリスクを伴う児童は比較的多く、学習面の実態把握と支援を並行して行う必要性は高いことが指摘された。(3)は漢字書字の学習困難を伴い学習障害と診断された事例を対象に、漢字をその構成要素に分解・命名する「部品分け」作業と、作成した部品による見本合わせ課題と漢字の構成課題を週1回行った。指導直後の書字テストでは正答率が72%であり、書字の直接訓練を伴わない学習方法としては比較的高い効果を認めた一方、1週間後の保持率は58%であった。保持に影響する要因の一つとして漢字の画数が指摘され、この点を考慮した指導の工夫が課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、学習障害児およびそのリスク水準にある児童において漢字学習の定着を促進する学習方略を示すことを目的としている。近年、顕著な学習困難に至る可能性のあるリスク要因の解明が進み、これらの評価に基づく早期予防的支援が、リスク水準にある児童への介入として効果的であると指摘された。漢字の読みに関してはひらがなの単語読みの流暢性と特殊音節表記がリスク要因となるが、これとの関連で本研究では今年度、ひらがなの特殊音節が単語読みの流暢性に及ぼす影響を明らかにし、これに基づきリスク水準の児童を含めた包括的な実態把握が可能なことを示した。この点は、昨年度に行った心像性の調査結果と合わせて、学習課題の作成や介入効果の分析を効果的に行うための指標を構成するものと言える。また、学習障害児の介入事例の検討を通して、漢字の部品を対象児自身が生成して学習した場合の効果とその要因を明らかにした。学習上の手掛かりや教材作成に対象児自身が関与することは自己説明に相当すると指摘でき、昨年度の事例と合わせて、メタ認知方略に基づく介入の有効性を示す結果と言える。 これらは、今年度の課題とした(1)小学生における調査を通して困難のリスク把握に有効な基準値を得ること、および(2)漢字学習の定着を促進する教材群の開発・検証に、それぞれ対応するものであることから、進捗状況を当初の通り判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえ、今後の研究においては(1)一斉指導で利用可能なプリント教材の作成とその効果の検証を行うとともに、(2)学習障害事例における個別介入の効果検証を継続して行い、読み困難のリスク水準の児童を含めた包括的な介入モデルを考察・提案することが課題である。(1)に関しては、今年度までにプリント教材の基本的な構成ができており、来談事例に対して試行的に実施して効果を確認してきた。そのため小規模な修正により一斉指導に利用できる段階にある。また、協力校への依頼は、これまでの取り組みを通じて可能な段階にあり、速やかに着手できるように準備を整えている。また、(1)と(2)ではともに、児童発達支援事業所の協力を得ることを検討するとともに、個別学習支援についてはインターネットを介したリモート学習支援も活用して、効果的に課題を推進する。
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