研究課題/領域番号 |
22K02809
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
植田 広樹 国士舘大学, 防災・救急救助総合研究所, 教授 (70794874)
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研究分担者 |
匂坂 量 中央大学, 理工学部, 助教 (20828652)
田中 秀治 国士舘大学, 救急システム研究科, 教授 (40245452)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 病院前救急医療 / 救急救命士 / 救急救命士教育 / ICT / VR / シミュレーション実習 / 疑似体験 / ヒューマンエラー |
研究開始時の研究の概要 |
救急救命士教育の問題点は、救急救命士学生は臨床医学を直接学ぶ機会が極めて限られているということである。救急救命士学生が臨床医学を学ぶ機会は、臨地実習と呼ばれる160時間の病院実習と救急車同乗実習のみであり絶対的に少なく、救急現場で働く救急救命士も含めて慢性的に臨床教育の要素が不足している状況であると言える。 そこで本研究は、いつでもどこでも何度でも疑似体験が可能な、仮想現実であるVRを活用した教育教材の開発および教育プログラムを構築することで、救急救命士学生が不足する臨床教育を補うことを目的としている。
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研究実績の概要 |
【本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」】 病院に到着するまでの救急現場において、一瞬の判断ミスが患者の救命を左右する。救急救命士のヒューマンエラーが重度外傷や脳卒中、虚血性心疾患、心肺停止患者などの重度疾患の救命率の低下に直結する。森村や川野らは救急搬送される患者の過半数に救急隊による判断ミスであったと報告している(Morimura N,et al. 2013; Kawano T, et al. 2014)。しかし、救急現場や搬送中の救急車内では短時間の間に救急救命士1名で同時多発的にインプットされる複数の情報を判断し、搬送先病院の選定・救命処置・通信・記録などを同時に実行しなければならない。これまで臨床医学教育において可視化したVR視覚教材は少なく、高い学習効果が期待される。実際、EricらはVRが優れた記憶力定着に寄与し、従来の学習方法と比較して学習速度が230%に改善、記憶定着速度が3倍になると報告している(Eric K, et al. 2018)。医療従事者の多くは、患者の容態が悪化してしまった経験を糧として学びを得る。この失敗から得られる経験をフィードバックすることは救命率向上に大きな意義を持つ。 【VR視覚教材のコンテンツの選定】 令和5年度は、救急救命士である植田(研究代表者)、救急医療の専門家である田中(分担)、および研究に協力をいただける救急救命士を含めて、特に観察が難しい症例、または判断を誤りやすい症例および救急現場の複数のシナリオを選定し、VRコンテンツの動画撮影が開始され、複数のシナリオ作成に取り掛かることができた。今後搬送時に高度な判断力を必要とする循環器疾患、脳外科疾患、高齢者や小児特有の疾患、搬送件数の多い内因性疾患、季節によって発生する疾病、地域によって発生する症例などのコンテンツを作成予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度からはVRコンテンツの動画撮影が開始され、複数のシナリオ作成に取り掛かることができた。今後搬送時に高度な判断力を必要とする循環器疾患、脳外科疾患、高齢者や小児特有の疾患、搬送件数の多い内因性疾患、季節によって発生する疾病、地域によって発生する症例などのコンテンツを作成予定である。しかしながら、初年度、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、VRコンテンツの撮影がスケジュール通りに進まず、更にウクライナ情勢の影響による物価上昇の影響を受け、外部への撮影委託費、動画撮影編集機材の値段上昇により、計画であった外部委託を断念し研究者で実施することとしたため、スケジュールや解析方法の変更を余儀なくされたため全体のスケジュールが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
【1. 救急救命士に対するエラーから学ぶVR教材の開発】 選定した症例に対して、VRのコンテンツを作成する。コンテンツの3D動画は、リアルなメイクを施した模擬患者の演技を360°カメラで研究者らが撮影し、VRコンテンツを編集・作成する。VRコンテンツの作成には、救急救命士の植田(研究代表者)と救急医療の専門家である救急医の田中(分担者)が内容を確認しつつ進めていく。 【2. VR教材を用いた救急救命士の教育プログラムの開発】 重症度や緊急度の高い疾病の中で起こりえるヒューマンエラーを危険予知訓練のグループワークで有名な「4ラウンド法」を基に教育プログラムの開発を行う。4ラウンド法とは、グループワークにより、1.現状把握:どのような危険が潜んでいるか、問題点を指摘させる。2.本質追究:指摘内容が一通り出揃ったところで、その問題点の原因などについてグループ内で検討させ、問題点を整理する。3.対策樹立:整理した問題点について、改善、解決策などをグループ内であげさせる。4.目標設定:あがった解決策などをグループ内で討議、合意の上、まとめさせる。といったプロセスで、グループ内での危機予知を訓練する方法である。病院前救急医療のVRコンテンツとこの危険予知訓練をワーキング作業で組み合わせることにより、エラーの予知を促し、結果、エラーの減少につながると考えられ る。
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