研究課題/領域番号 |
22K02837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
渡辺 雄貴 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (50570090)
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研究分担者 |
御園 真史 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (60467040)
稲葉 利江子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90370098)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 教育工学 / 自己調整学習 / ナッジ / 数学教育 / インストラクショナルデザイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,アクティブラーニング型授業,共調整学習の実現を目標に,ナッジ理論を援用した,学習方略使用支援システムの開発を行う.具体的には,学習者はリアルタイムに学習方略を学び合い,授業者はリアルタイムに学習状況を把握し,柔軟に授業内容を改善する教授学習環境支援を目的としたシステムを開発する.そのために,学習者の授業内における学習方略の使用と自己調整学習,ナッジとの関係性を明らかにし,システム開発に着手する.さらに,ID諸理論の観点から,目標を実現するための授業設計の在り方を検討する.開発したシステムは実際の教育現場で使用し,評価,検証,改善を行う.
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研究実績の概要 |
本研究は,一斉授業において各学習者がタブレットに配信された教材を閲覧しながら授業を受講し,ノートテイキングを行う中で学習者同士の相互作用を通して,能動的な学習を促すシステムを開発・評価するものである.授業中の自己調整学習の特に遂行,省察段階に着目し,学習方略に関して他者からの援助を得ながら自己調整学習能力の向上を目的として開発する.さらに,本システムの活用による授業者と学習者の相互作用を通して,アクティブラーニングの実現も図る.相互作用を実現するために,行動経済学分野で研究されているナッジ理論を教育に援用する.本研究の目的を達成するため,近藤ほか(2023)が開発したナッジを援用したタブレット型ノートテイキング支援システムであるNudge for Note Taking Assist System(NoTAS)を活用し,研究全体を3テーマ(ナッジと学習方略使用の関連調査・授業設計の提案・評価実験)に分け,順番に取り組む予定である. 2022年度は,ナッジと学習方略使用の関係を明らかにするため,実験室環境でNoTASを用いた実験を行った.NoTASは,他者のメモ・重要箇所マーカー・不明箇所マーカーの3種類が可視化される機能がナッジとしての役割を果たし,学習方略使用やSRLの育成を目的としている.本調査では,可視化機能に関する質問紙およびノートテイキングログを収集した.分析の結果,重要箇所の可視化によるナッジによって,学習者はメモや下線を書こうと思うことから,ノートテイキングを直接促進する可能性が考えられる.一方,メモや不明箇所の可視化によるナッジによって,学習者は授業者の説明に注意を向けることや,資料を確認するなど,ノートテイキング以外の学習方略を促すことが明らかとなった.さらに,ユーザビリティ向上のため,可視化のオンオフ機能などのシステム改修を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度では,本研究で開発したシステムに援用しているナッジと,授業時間中の学習行動との関係性を明らかにするため,システムの可視化機能を用いて,大学生,大学院生を対象とした実験室実験を行った.質問紙やノートテイキングログなどの収集データから,可視化機能がナッジとして機能し,授業中の学習方略の使用を促進している一方,可視化される情報の違い(他者のメモ・重要箇所下線・不明箇所下線)によって,異なる学習方略使用が促進されていることが明らかとなった. さらに,ユーザビリティ評価から得られた結果から,システムの可視化機能のオンオフを授業中に自身で切り替える機能や,ページ操作のスワイプやスクロール機能の改善を行った. 隔月で行っている研究打ち合わせでは,インストラクショナルデザインの理論やモデルをベースにシステムを取り入れた授業指導案を作成した.さらに,システムの有効性を拡張し,アクティブラーニングの実現に向けて,数学やプログラミングのように階層的構造で構成された科目に関して実践を行うことも考慮し議論した.また,調査に関する測定方法や評価方法について量的・質的の両側面から検討し,質問紙項目の選定や,システムによって収集したノートテイキングログから,記述内容の質的な評価方法などを検討した.本実践結果に関しては,研究代表者・分担者が,成果を段階的に国内外の学会において,報告・発表しており,本研究についてあらゆる観点から意見交換を行い,研究の一助となっている.これらを踏まえて,本研究はおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,研究の進捗はおおむね順調である.したがって,研究2年目にあたる2023年度も,申請書に記載した研究計画に従って進めていく.これまでの研究では,学習者間の相互作用に着目し,システムに援用しているナッジと学習方略使用との関係を明らかにしている.この結果を踏まえ,2023年度はシステムを活用してアクティブラーニングを実現するために,授業者と学習者間の相互作用にも着目して本システムの効果検証を行う.具体的に,本システムの可視化がナッジとして働くことで,授業者が教室内の学習者のノートテイキングや理解状況を把握し,インストラクションを柔軟に変更することで,学習者中心の授業を展開することができるかを検証する.現在,システムを活用したアクティブラーニング型の授業設計および,アクティブラーニングが達成したかを評価するための測定方法を検討中である.
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