研究課題/領域番号 |
22K02848
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 九州女子大学 |
研究代表者 |
城 佳世 九州女子大学, 人間科学部, 准教授 (40722731)
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研究分担者 |
津田 正之 国立音楽大学, 音楽学部, 教授 (10315450)
石垣 悟 國學院大學, 研究開発推進機構, 准教授 (40373477)
施 光恒 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70372753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 郷土の音楽 / 郷土の伝統音楽 / ナショナル・アイデンティティ / 音楽科教育 / 民俗芸能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①小中学校の教員を対象にアンケート調査と面接調査を通して民俗芸能の学習指導の問題点を探り(令和4年度)、②包括的に日本の民俗芸能(アイヌ、琉球、小笠原等の芸能を含む)を理解できる学習プログラム(令和5年度)、及びタブレット端末で活用できるweb教材を開発する(令和6年度)。本研究は、ナショナル・アイデンティティを育むとともに、多様な文化と共生する教育の実現に大きく寄与する。
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研究実績の概要 |
1.ナショナル・アイデンティティとは何か、また、なぜナショナル・アイデンティティが必要なのか、について理論研究をおこなった。そして、ナショナル・アイデンティティが必要な理由を、①国家成立の基盤となること、②自由民主主義国家の基盤となること、③諸民族,多文化を尊重する精神の基盤となること、の大きく三点に整理した。また、ナショナル・アイデンティティを育むうえで、「伝統」が大きな役割を果たすこと、そのために「郷土の音楽」の学習指導が有効であること、についての理論を構築した。 2.2022年度に実施した「郷土の音楽の学習指導の実態調査」の結果について、第19回音楽学習学会研究発表大会で報告した。 3.国や各自治体が指定する文化財のなかから、各地域ブロック(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)のなかから、教材としてあつかうことが可能な盆踊りを抽出した。 4.「郷土の音楽」を教材とする学習プログラムを作成し、A中学校で実証授業を実施した。実証授業ではカリキュラム・マネジメントのもと、第1時に道徳科、第2時に音楽科、第3時に道徳科の授業を位置づけた。第2時の音楽科の授業では、デジタル教材を活用し、「日本の獅子舞」と「中国の獅子舞」の比較をおこなった。その際、「日本の獅子舞」を学習の基盤とすることで、日本の文化のよさを理解するともに、自国の文化への愛着を再確認する様子が認められた。また、第1時と第3時に道徳科の授業を位置づけたことで、道徳科の内容項目「郷土愛」の醸成に結びつけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度には、全国から小中学校1000校を無作為に抽出し、アンケートを通して、(ⅰ)音楽科の学習指導で扱っている民俗芸能の種目、(ⅱ)学習指導の内容、(ⅲ)他の地域の民俗芸能(アイヌ、琉球、小笠原等を含む)の学習指導の実施状況、(ⅳ)学習指導の課題、等について調査した。また、沖縄県、山口県、福岡県の小中学校の教員を対象に聞き取り調査を実施した。その結果、「子どもたちが生活する地域の芸能や音楽」と「日本各地の芸能や音楽」を比較する学習指導が、郷土愛の醸成において有意義であることが明らかとなった。またその教材例として盆踊りをとりあげることの有効性を見出した。 令和5年度には、令和4年度に実施したアンケートの結果を学会で報告した。また、令和6年度のweb教材の作成に向けて、国や各自治体が指定する文化財のなかから、各地域ブロック(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)のなかから、教材としてあつかうことが可能な盆踊りを抽出した。 さらに、「郷土の音楽」を中心に、ナショナル・アイデンティティを育む音楽科の授業のあり方について理論研究をおこなった。そして、これら理論研究をもとに、日本文化を中核においた学習プログラムを開発した。そして、開発した学習プログラムについて、デジタル教材(仮)をもちいた実証授業を実施した。その結果、日本の文化を基盤に比較聴取を仕組むこと、道徳科との連携を図ることがナショナル・アイデンティティを形成するうえで重要であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1 令和6年度は、令和4年度に実施したアンケート結果、また令和5年度におこなった理論研究を論文化し、公表する。さらに、研究代表者、研究分担者、研究協力者による公開シンポジウムを実施し、ナショナル・アイデンティティが必要な理由、音楽科におけるナショナル・アイデンティティを育む音楽科の学習指導のあり方について議論を交わす。また、令和5年度に開発した学習プログラムと実証授業について学会発表する。 2 日本の文化と海外の文化を比較する際に、日本の文化を基盤におくことの有効性を検証するために、海外の日本人学校における日本の音楽のあつかい方を調査する。また、海外の公立学校においてナショナルな音楽がどのようにあつかわれているのか、についても調査する。調査結果は、作成するweb教材に反映させる。 3 国や各自治体が指定する各ブロック(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)の文化財を抽出する。そして、国、及び各自治体が有する報告書及び映像記録を収集し、各芸能の概要や音楽的特徴等について整理、再構成するとともに、ポータルサイトを構築する。映像は動画共有サイトにおき、リンクを作成する。これにより、サーバに負荷をかけることなく、子どもがインターネット上で個別に活用できる教材を開発できる。web教材及び学習プログラムは、教員対象の研修会等で配布するとともにインターネット上で公開し、教育現場での活用を図る。
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