研究課題/領域番号 |
22K02911
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
鈴木 拓弥 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (10553935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 聴覚障害 / 実技 / 観察 / オンライン / 教材 / 自習 / 動画 / 共有 / つまずき / 動画教材 / 教示支援 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究において,字幕を中心とした情報保障及び教員のPC操作情報の可視化手法を検討し,教示支援ソフトウェアを複数開発し,有効性を検証した.開発した教示支援ソフトウェアを用いた教示映像教材は聴覚障害学生に対して有効であり,実技演習を円滑に進めることができるようになった. 一方で,オンライン学習時等など,教示映像教材を用いた学習時に,一部の聴覚障害学生が「つまずき」を自力で解決しにくい問題があることが分かった.通常の授業であれば,教員が観察して問題に気付き,解決に導くことができる.本研究では,教示映像教材を用いた学習時の「つまずき」要因を把握し,解決に導くための手法を研究,開発する.
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研究実績の概要 |
本研究は,実技演習に関わる自習やオンライン学修時などの場面において,動画等の教示映像を用いて学修する聴覚障害者が教員の直接的な介在を経ることなく「つまづき」を解消できるような手法の開発を目的としている.昨年度は研究初年度として,学習者の集合から得られる情報を基本とし,相互に観察したり助け合うことを可能とする手法を開発した.情報をリアルタイムかつ同時並行的に得るための手法として,オンライン学修時の学生の課題進捗や制作状況を一定時間毎に記録し,相互に観察できるソフトウェアを開発した. 今年度は研究二年目として,前度開発したソフトウェアの機能強化を実施した.また,これまでの成果を取りまとめ,研究代表者の所属する学会主催のシンポジウムにおいて発表した.ソフトウェアの改修について具体的に説明する.改修は複数回実施している.はじめに昨年度,当事者学生の試用実験によって得られた改善点を反映した改修や機能強化を実施した.本機能強化後に学会発表を行い,他の研究者との意見交換を実施した.学会後,他の研究者から頂いた意見を参考とした改修を実施した.改修前は,自身の操作内容を他のユーザが閲覧しているときに,閲覧状況を知る方法がない状態であった.教室における対面授業時には,誰かが自身の作業内容を観察しているときには,その様子を伺い知ることができる.そこでこの様な状況を再現し,自身の閲覧状況を把握でき機能として,他ユーザが自身の作業の様子を閲覧している時に,画面内にインジケータを表示する機能を追加した.上記機能追加後,改めて試用を依頼し,試用後にヒアリングを実施した.その際,追加した機能を評価する一方,他者の様子を観察しにくくなるという心理的負荷も示された.そこでインジケータ表示機能の詳細仕様を状況に応じて変更する微調整を追加実施した. 以上が当該年度の成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の取組として,オンライン学修時に学生の作業の様子を共有し,相互に観察し合う仕組みを開発した.具体的には学生の作業時の様子を指定した時間でキャプチャし,相互に閲覧できるWebアプリケーションソフトウェアを開発した.また,聴覚障害当事者学生の協力のもと評価実験を実施した. 当該年度の取組として,前年度実施した評価実験をフィードバックするなど,開発したソフトウェアの機能強化を実施した.改修や機能強化の具体的な内容は「研究実績の概要」で述べた通りである.ソフトウェアは公開し,活用可能な状態としている.また,所属する学会のシンポジウムにおいて,これまでの研究成果を取りまとめ,予定通り発表することができた.学会発表時やその後のディスカッションによって得られた知見や,当事者の評価を経るなどして得られた意見を複数回に渡りフィードバックして改修・機能強化できた.以上の進捗状況から,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」で述べたように,前年度末の時点で問題の解決に応用可能なアプリケーションのプロトタイプ開発まで進捗できた.開発について申請時の予定よりも順調に推移したため,当該年度は昨年度に開発したプロトタイプを改善・機能強化し,正式にリリースした.前年度末時点において実装していた学生の制作進捗状況を教員が把握することができるなどの基本的な機能に加え,学生間での進捗状況の共有の仕組みについても機能強化し,実用することができた.また,聴覚障害当事者学生の協力のもと実施した評価実験から得られた改善点などを反映することもできた.学生間の情報共有にあたり,実空間・実際の教室における観察時のメタファーを再現するなど,付帯すべき関連機能についても開発・実装できた. 研究推進について,「現在までの進捗状況」において述べたように順調に推移している.開発した手法の公表や研究発表,外部への発信なども予定通り実施できている.一方,本手法の特性として,学修中の学生の画像を大量に取得するが,現時点ではこれらの大量の画像を共有するのみの手法に留まっている.大量の画像を収集していることは,画像認識や機械学習との親和性が高いことを意味している.そのため,現時点では教員や学生が相互に学修状況を観察するという主たる機能に加え,画像認識や機械学習による補助的な情報提供を可能にするなどの機能拡張が考えられる.例えば学生の学修進捗状況をアプリケーション側で判断し,教員や学生間で共有できる機能などが考えられる. 以上のように,これまでの基本的な手法に新たな特性を加えるなど,今後もアプリケーションの機能拡張を推進し,引き続き研究発表や論文投稿を推進していく計画である.
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