研究課題/領域番号 |
22K02934
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 徹哉 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40583745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 生体情報 / 眼球運動 / まばたき / 脳波 / 脈波 / 音の空間認知 / 音程認知 / 教育工学 / 脈動波形 / 認知機能 / ICT技術応用 / 認知トレーニング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はICT技術を教育・トレーニングに活かし、アンケートのような意識下の回答に依存せず、無意識の生体情報をベースとして学習者の取り組み状態を定量的に分析して、教育・トレーニング効果改善につなげる技術を開発する。 これまでの研究で培った英単語学習時の脈動波形解析により被験者の取り組み評価を行う技術を活かして、さらに本研究では眼球運動とまばたきの測定を加え、周波数分析を通じて被験者の取り組みを把握するための因子を明らかにすることと、それらを活かした適応的な教育も可能とする実践実験システムとして開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ICT技術を教育に活かすための実践実験プラットフォームの開発を目標として推進しているが、特に本補助事業期間においては『空間・周波数・数量的聴覚認知トレーニング』を提供するとともに、そのトレーニング取り組み中の被験者の脳波、脈波(脈動波形)の測定に加えて、新たに『眼球運動、まばたき』の測定も可能とし、認知機能の衰えとの相関が指摘されている聴覚認知機能の効果的なトレーニングを実現することを目標に取り組んでいる。
2年目となる2023年度は、初年度に立ち上げた生体情報(脳波・脈波・眼球運動・まばたき)のリアルタイムの測定値と、被験者からの回答情報(回答に要した時間と正誤情報)とを同時にデータ収集・分析できる装置を使用し、新たに音の空間認知と、周波数認知をテストするアプリを作成し、被験者が認知トレーニングに取り組んでいる時の生体情報と回答情報を統合的に分析することができるシステムとして開発した。
具体的には、小型Android端末で動作するアプリとして、音の空間認知テストアプリ(音が完全に左から聞こえる場合から完全に右から聞こえる場合までを5方向および7方向に分割した認知テスト)と、音の周波数(高さ)認知テストアプリ(音程を一音および半音ごとに認知するテスト)開発した。開発したアプリを用いて、被験者がスピーカを用いた場合とイヤホンを用いた場合のそれぞれについて取り組み中の生体情報と回答情報のデータ収集を行った。実際に認知機能に障害のある高齢者を含む7名を被験者として実践実験を行い、収集したデータを分析するところまでを達成した。特に脳波の分析においては、これまでに行ってきた評価値(集中度・リラックス度)の分析に加えて、脳波の各周波数成分(α波、β波、γ波)ごとの分析を行い、記憶の度合いとの関係が報告されているLowγ波において大きな差が見られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本補助事業期間2年目となる2023年には、初年度に立ち上げた生体情報(脳波・脈波・眼球運動・まばたき)のリアルタイムの測定値と、被験者からの回答情報(回答に要した時間と正誤情報)とを同時にデータ収集・分析できる装置を使用し、教育・トレーニング効果(認知機能テスト・トレーニング効果)の向上を目指した本研究の着眼である「音の空間認知と周波数(音程)認知」のテストを行うことができるシステムとして開発し、実際に実践実験に着手して、学会発表を行うとともに、そのプログラムも共有することを目指していたが、予定通りの進捗を達成することができた。 具体的には、本研究における第1の着眼である音の空間認知をテストするアプリとして、音が完全に左から聞こえる場合から完全に右から聞こえる場合までを5方向および7方向に分割した認知テストアプリを開発し、加えて第2の着眼である音の周波数(高さ)の認知をテストするアプリとして、音程を一音および半音ごとに認知するテストアプリを開発した。 そして開発したアプリを用いて、被験者がスピーカを用いた場合とイヤホンを用いた場合のそれぞれについて、実際に認知機能に障害のある高齢者を含む7名を被験者として取り組み中の生体情報と回答情報のデータ収集を行い、収集したデータを分析するところまでを達成した。 さらに脳波の分析においては、これまでに行ってきた評価値(集中度・リラックス度)の分析に加えて、脳波の各周波数成分(α波、β波、γ波)ごとの分析を行い、記憶の度合いとの関係が報告されているLowγ波において大きな差が見られることを見出したことも含めて、電子情報通信学会総合大会において口頭発表・ポスター発表を行った。ポスター発表では、開発した音の認知機能をテストできる実践実験システムの実機デモとプログラムの共有も行って、他の研究者との議論を深め、本年度の目標を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の2022年度は、まずは認知機能トレーニング時の生態情報を回答情報とともにリアルタイムに測定・記録するプラットフォームとして立ち上げることを優先し、認知機能は、本研究の狙いである聴覚認知機能ではなく、簡易的な認知クイズとして漢字の間違い探しを実装して実験を行ったため、2年目の2023年度は、新たに本研究の主目的である聴覚認知機能の測定・トレーニングを目指して、音の空間定位の認知テストと、音の周波数(音程)の認知テストが行えるアプリを開発して、リアルタイムの生体情報測定と回答情報の記録が行えるシステムとすることができたので、最終年度となる2024年度はそのシステムを使用して実際に被験者がテストに取り組んでいる時のデータを統合的に分析することで、認知機能のテストとトレーニングを効果的に行うための知見を見出せるように実践実験を推進する。 そのための要素技術として、先ず生体情報としては、昨年度新たに着眼した脳波の周波数分析をさらに発展させて、各生体情報と統合的な分析に寄与できるように推進する。 また、本研究の着眼である「音の認知機能」としては、昨年度に開発した音の空間認知テストアプリと、音の周波数(高さ)認知テストアプリに加えて、新たな着眼として、単なる音の認知より多くの高度な脳内の処理が必要と予測されるメロディの認知テストアプリの開発を推進する。 以上のように生体情報の測定と分析を進化させ、音の認知機能テストも多面的に実施可能として、様々な被験者の取り組み中のデータを収集し、統合的な分析を推進する。 そのようにして得られた知見は開発したプログラムとともに学会発表を通じて公開して、広く同じプログラムを用いて実験を行った研究者の方々との議論を深めて、認知機能テスト・トレーニングをより効果的に行う工夫に繋がるように研究を推進する。
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