研究課題/領域番号 |
22K02956
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大西 浩次 長野工業高等専門学校, リベラルアーツ教育院, 教授 (20290744)
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研究分担者 |
早川 尚志 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 特任助教 (10879787)
大西 拓一郎 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 教授 (30213797)
野澤 聡 獨協大学, 国際教養学部, 准教授 (30599741)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 市民科学 / 天文学 / 天文文化 / 天文同好会 / 協働 / 太陽 / 太陽黒点 / 宇宙天気予報 / 市民科学プロジェクト / Citizen Science / 諏訪天文同好会 / 変光星 / 光害 / 天文学史 / 天文文化史 / 市民天文同好会 / 長野県は宇宙県 |
研究開始時の研究の概要 |
「長野県は宇宙県」を合言葉として市民と研究者の協働で行われてきた諸活動のネットワークを生かして、市民の生み出した天文文化の100年間を調査し、「市民科学によって天文文化はいかに誕生し、何を生み出してきたか」という問いを明らかにしたい。本研究は、地元の市民天文同好会や国立天文台野辺山、東京大学木曽観測所などの過去100年間の交流を調査する「市民科学」プロジェクトを通して、「市民科学」という用語が無かった時代の諸活動(天文観測や自然保護運動や光害防止活動)を見直す事で、「市民科学」のプロトタイプについて考察する。この活動によって、これからの「市民科学」の新たなモデルの提示とその有効性を実証する。
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研究実績の概要 |
「市民科学」の新しいモデルを提示することを目標に、「長野県は宇宙県」に関わる研究機関やプラネタリウム、天文同好会などのメンバーと研究者との協働で調査研究(「市民科学」)を行い、各活動の起源やこれまでの活動を「市民科学」として読み解く活動を行っている。 申請時点での具体的な研究対象は、(1)日本初の市民天文同好会である「諏訪天文同好会」の設立当時の活動、(2)光害防止運動と市民科学の関連、(3)長野県内の長期太陽黒点観測者のデータレスキュー・デジタルアーカイブ化であった。 (1)としては、諏訪天文同好会の設立時(1922年)の観測に関わる1次資料から、研究者との多彩な交流の様子を明らかにしてきた。初年度は、「市民科学で読み解く天文史」として、諏訪天文同好会の発足当時の学校教育、市民科学者による観測(太陽黒点、変光星)などを「同好会設立100 周年記念シンポジウム」(2022年11月)で示したが、2年目は、日本国内の変光星観測の黎明期に焦点を当てたプロアマ交流を調べ、変光星の研究会や展示を行なうことが出来た。また、(2)としては、国内外の光害防止運動の歴史を調査し、初期の活動が「市民科学」と言えると同時に、国際的にも最初期の活動であること。現在の光害に関する「市民科学」研究の発展を目指した(国立天文台研究集会)研究会を開催した。さらに、(3)としては、日本初の長期黒点観測者である三澤勝衛の太陽黒点の観測データを解析し、現在進行中の過去黒点観測の原典調査に基づく国際太陽黒点相対数の改定作業に、新たに組み込むべき貴重なデータであることを示し、科学論文として王立天文学会月報(MNRAS)に掲載された。同時に、長野県内の2名の長期観測者のデータのアーカイブと論文化の準備を進めた。また、早川尚志(研究分担者)は、在外研究中に太陽活動復元や宇宙天気予報に関する多くの研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「長野県は宇宙県」の活動で作られてきた大規模ネットワークを生かして、 研究者と市民の協働作業で「長野県は宇宙県」に関わる「天文文化」の100年間の解明を目指す「市民科学」のプロジェクトを進めてきた。現在、3つのテーマについて調査しながら、全国的な展開に進んでいるものもある。 (1) 日本初の市民天文同好会である「諏訪天文同好会」の活動の調査に関しては、戦後から現在までも含む100年間を「諏訪天文同好会」を軸として、各時代の天文学の状況や全国の研究者や市民科学者との交流の変化を調べている。この調査では、当時の人々が残した手紙などの1次資料の目録、アーカイブなどが必要で、今年度も引き続き「市民科学」的に行ってゆく予定である。 (2) 諏訪天文同好会の1960年代以降の自然保護運動・光害防止運動の調査によって、1972年の「日本星空を守る会」の活動が、国際的にも最も早い段階の「市民科学」活動であることを明らかにすることが出来た。これを踏まえて、現在の光害研究を行っている多くの方々に呼びかけた研究会(国立天文台研究集会)を開催し、光害の過去・現在・未来についての状況をまとめ、新しい「市民科学」的活動への道をつけた。 (3) 3人の長期太陽黒点観測者の太陽黒点スケッチのデジタル化と解析を行い、日本初の長期観測者、三澤勝衛の論文が受理・掲載された。掲載時にプレスリリースを行ない、多数に報道されると同時に、市民への共同研究の呼びかけを行ない賛同者を得ることが出来た。これも「市民科学」の活動の一貫である。同時に、長野県内の2名の長期観測者(田中氏70年間、藤森氏約70年間)の観測データのデジタル化・解析が進行中であり、科学論文として、論文化を進めている。 以上の活動の途上で、「長野県は宇宙県」の現状を立ち位置を示すために、7年間(2016年から2021年+2年間)の活動の報告書を製作した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初の課題を拡張した3つの課題を行なう。(1)諏訪天文同好会を軸とした100年間の天文学者と市民科学者の交流を通じた天文文化を調査し、「市民科学」の萌芽的事例とともに、最新の「市民科学」の事例賭して紹介する。(2)光害防止(星空保護)の国内外の運動の相互作用、および、環境省の光害調査の歴史を市民科学として読み解き、市民科学の萌芽の一つを明らかにする。(3)長期太陽黒点継続観測者(=市民科学者)3人のデータを「市民科学」プロジェクトによって、デジタル化・解析し、太陽活動の復元(長期的な太陽変動に関する参照データとなる国際太陽黒点相対数の改定作業)への科学的寄与を目指す。低緯度オーロラの観測キャンペーンなどを行ない、「市民科学」によるまた、宇宙天気予報の「市民科学」的研究の事例を行なう。
これら(1)~(3)の調査研究を市民と研究者の協働で行う「市民科学」プロジェクトを実践すると同時に、これらの成果が「市民や研究者」との集合知となるような仕組みを検討し、諸分野の研究者と共同研究を実施することで学際的な研究に発展させることにある。 最終的に、これら(1)~(3)に関わる多くの市民の参加による「市民科学」のプロジェクトを通じて、「市民科学」という用語が存在しなかった時代の市民による天文観測の活動や市民科学運動(自然保護運動や光害防止活動も含む)を、「市民科学」として捉え直すことによって、「市民科学」の成立の背景を探るとともに、最終的にこれからの「市民科学」のあり方を考える具体的なモデルとして提示したい。さらに、まとめとして、「市民科学」プロジェクトに参加していただいた市民や研究者の科学意識の変化を評価することによって、「市民科学」プロジェクトの科学教育(社会教育・環境教育、・・・)としての有効性と問題点を明らかにしたい。
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