研究課題/領域番号 |
22K02983
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
坂口 雅彦 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30221998)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 理科教育 / 生物学 / 数学 / 物理学 / 関連性 / 教員養成 / FUMIEテスト / 教科横断 |
研究開始時の研究の概要 |
将来理科を教える教員養成系の学生自身が,数学,物理学,化学,生物学,地学のいずれかに対する苦手意識を持ち,なかには嫌悪感を示す学生さえいる。義務教育教員養成段階において,その苦手意識を克服させ,将来,児童・生徒に有意義な理科授業を行い得る教員を養成する教育が必要である。自分の得意分野の理解に,苦手分野の知識・手法が役立ち,苦手分野の学びが重要であると気づき,苦手意識を克服する可能性を調べるため,本研究では,「生物学と物理学・数学の関連性を意識させる教材」を開発し,これらの教材が苦手克服や嫌悪感減少への効果を示すか,授業前後でアンケート調査と心理テスト(FUMIEテスト)を行い検証する。
|
研究実績の概要 |
小中学校で,将来理科の授業を行う教員養成系大学の理科コース所属学生自身が,数学及び物理学・化学・生物学・地学の理科4領域のいずれかに対する苦手意識を持ち,なかには嫌悪感を示す学生さえいる。従って,義務教育教員養成段階において,その苦手意識を克服させ,将来,児童・生徒に有意義な理科授業を行い得る教員を養成する教育が必要である。申請者は理数教員志望大学生に対し,生物学と,物理学・数学との関連性を意識させる教材「メンフクロウの音源定位」を開発し,この教材を使用した授業後,生物学の理解において数学・物理学が必要と回答した学生が増大したことを授業前後のアンケート調査で明らかにした(坂口,2012)。本研究では,心理テスト(FUMIEテスト)で上記教材の有効性(嫌悪感減少)を検証するとともに,その他の「生物学と物理学・数学の関連性を意識させる教材」を開発し,これらの教材が苦手克服や嫌悪感減少への効果を示すかを検証することを目的とし,授業前後でアンケート調査とFUMIEテストを行う。 前年度は,「メンフクロウの音源定位」の教材で授業を行い,授業前と授業後にFUMIEテストを行った。キーワードとして「数学」,「物理」,「生物」の3つを用いた。この有効性検証については生物学と物理学・数学との関連性を意識させない教材での授業前後でのFUMIEテストの結果との比較検討が必要で,これを本年度にゲノム編集等の倫理観を必要とする新技術を教材に授業を行い,両結果を解析した。 その結果,どちらの群でも授業前後での「数学」,「物理」,「生物」に対するIAS値に統計的に有意な変化は見られなかった。従って,心理テスト(FUMIEテスト)で上記教材の有効性(嫌悪感減少)を検証することはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,新型コロナ禍によるリモート授業ではFUMIEテストの実施は難しいところ,感染状況が若干改善され,対面での授業を行うことができ,生物学と,物理学・数学との関連性を意識させる教材「メンフクロウの音源定位」を用いてFUMIEテストを授業前後で行うことができた。しかし,この結果は,生物学と,物理学・数学との関連性を意識させない教材を用いてFUMIEテストを授業前後で行い,結果を比較検討する必要があり,ゲノム編集等の倫理観を必要とする新技術を教材に授業を本年度行い,授業前後でFUMIEテストを実施することができた。 その結果,どちらの群でも授業前後での「数学」,「物理」,「生物」に対するIAS値に統計的に有意な変化は見られなかった。従って,心理テスト(FUMIEテスト)で上記教材の有効性(嫌悪感減少)を検証することはできなかった。90分程の短い授業の前後ではIAS値に変化が観測できるほどの差は検出できない可能性がある。しかし,長期間でIAS値に変化があったとしても,その変化の原因は推定できないので,FUMIEテストで教材の効果を検証するのは難しい可能性がある。いずれにせよ,FUMIEテストで教材の効果を検証することは難しい可能性が分かったのは成果といえる。従って,アンケート調査によって教材の効果を検証していく事が有効と考えられるので,今後はこの方向で研究を進めていくこととした。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は研究の最終年度であるので,メンフクロウの音源定位以外の教材,具体的には,「酸の化学平衡における数学の利用」,「神経における電気緊張電位の軸索方向への電気的等価回路での説明」,「遺伝の孫世代における理論値3:1と実測値間の統計的検証」などの教材での授業前後でのアンケート調査を実施し,数学・物理学と生物学の関連性への意識改善が起きたかを検証する予定である。 さらに,新たな数学・物理学と生物学の関連性を意識させる教材として,事前調査で学生にとり身近で興味深いと判明した「魚釣り」「鳥の滑空」という題材の中で,「ウキ」と海水の比重差から浮力を考えさせる教材の開発,空気密度差による上昇気流と滑空性能との関係等を教材化できないか研究を推進する予定である。
|