研究課題/領域番号 |
22K03003
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
網本 貴一 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60294873)
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研究分担者 |
吉冨 健一 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (00437576)
片山 豪 高崎健康福祉大学, 人間発達学部, 教授 (60635754)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 教材開発 / ICT活用 / 個別最適な学び / 協働的な学び / 教員養成 |
研究開始時の研究の概要 |
化学・生物・地学の3分野について、時間軸と空間軸の2つの軸から捉えた素材を用い、個々の学びと協調的な学びとを統合させる教具としてのICT活用を含めた、HSW(How Science Works? どのように科学が役立っているか?)を基盤とする授業デザインに迫る。いずれも、調査・実験を含む基礎的研究を経て教材・教具を構築した後、授業実践や教員研修・教員養成へ展開するまでを研究の到達点とする。
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研究実績の概要 |
[化学分野] 網本は、高等学校理科(化学)を中心に、文脈に基づく科学探究を通じて生徒に確かな理科の学力を修得させるとともに、HSW((How Science Works?)やNOS(Nature of Science:科学の本質)を生徒に意識させる化学教材と学習プログラムの開発を進めた。具体的には、クロム(Ⅵ)イオンの状態分析と化学平衡,有機分子の立体配座と配座変換のエネルギー図、代謝の速度論と阻害に関する教材をそれぞれ新規に開発し、大学教員養成課程での授業実践を通じてその有効性を明らかにした。 [生物分野] 片山は、高等学校理科(生物)を中心に、個別最適な学びと協働的な学びを可能とする新規生物教材の開発や従来の教材の指導方法の確認を行った。特に新規教材に関しては、指導の個性化を確立させ、かつ安定した結果が得られるような最適条件を検討した。今までに検討済み、または従来の実験教材に関しては、試行的に学習の個別化の成立を検証する講座を行った。セントラルドグマを確認する無細胞タンパク質合成系の実験キットに関しては、実際に高校生に基本操作を習得した後,自ら立てた仮説を検証するための実験を計画し、実験を実施した。そして、その結果から考察し、結論を発表するなどの探究の過程を実践することができた。 [地学分野] 吉冨は、高等学校理科(地学)で行われる野外実習や野外調査において、地層の層理面や火成岩の節理面の走向傾斜を数多く計測した場合に,生徒が取得したデータを自ら集計することで、データの傾向を容易にかつ客観的に評価できるようなWebアプリケーションの開発を行った。具体的には、文部科学省が進めているGIGAスクール構想により学校現場で様々なOSの端末が使われていることに対応するため、OSやプラットフォームによらずWebブラウザを用いて野外調査の結果を集計し、ローズダイアグラムを作成し表示する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通り、今年度は教材開発と授業デザインを中心に基礎研究を進め、その成果を学会発表17件、論文公表2件として公表することができた。実験やICTを援用した学習プログラム開発とその実践・評価に向けて、次年度以降の基盤を形成できたと考えている。 一方で、コロナ禍対応で教育実践の場が大きく制限されたことで、研究課題に掲げた「個別最適な学びと協働的な学び」を念頭に置いた理科授業デザインの構成とその実践・普及は、次年度以降の課題となっているが、連携校との教育実践の機会の調整が徐々に始まりつつあり、今後の研究進展が期待される状況である。 これらの兼ね合いで、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
網本は、How Science Works?やNature of Scienceの視点で探究できる教材開発を継続させるとともに、これまでに開発してきた化学教材を個別最適な学びと協働的な学びの両方の視点から高等学校現場で実用的に取り入れることのできる学習プログラムへの再構成を試みる。また、個人レベルの理解度を教師が見取りながらクラス全体の協調的な学びに繋げる授業を実現するためのインターフェースを大学教員養成課程の中に整備し、ICT活用による理科授業の設計や改善の効果を検討する。 片山は、初年度と同様に個別最適な学びと協働的な学びを可能とする新規生物教材の開発や従来の教材の指導方法の確認を行う。初年度においてはICTの活用は、データの共有やディスカッション、発表原稿の共同作業などの協働的な学びにおけるツールでしかなかったので、個別最適な学びを促進させるような活用法を検討する。有用性のある教材は、教育現場で実践を行い、指導と評価の一体化につながるような評価方法も検討する。最終年度でまとめる指導資料の作成のために多くの教材と実践の事例を行っていく予定である。 吉冨は、GIGAスクール構想やリモート授業、社会全体のデジタル化などの社会的要請を踏まえ、中学校あるいは高等学校理科(地学)において活用できるICTを活用した教材の開発を継続して行う。特に第二分野や地学分野においては、実物を観察することが重視されているにもかかわらず、安全管理面や責任の所在などの理由で教員が生徒を引率して実際に野外に出ることは極めて難しい状況となっている。そこで実物の観察に換えることのできるような自然事象の形や変化を捉えた教材を作成することで、ただ見て終わるのではなく、そこから疑問を見いだし、学習につなげることのできる教材開発を行う。
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