研究開始時の研究の概要 |
高等学校学習指導要領では, 「有性生殖の仕組みを減数分裂と関連付けて扱うこと。」とされている。有性生殖では, 遺伝的に多様な個体が生じる。遺伝的多様性を生む減数分裂では, 父方由来と母方由来の相同染色体が対合し, 二価染色体を形成して乗換えが起こる。しかし, 現行のすべての教科書では, 減数分裂中の染色体の構造を示す観察教材はない。 本研究では, 脊椎動物のメダカを用いて, 多様性を生む仕組みについてより理解を深めるために, 減数分裂中の染色体およびその構造を観察できる教材を開発する。有性生殖で配偶子に多様性が生じる仕組みを考える観察活動を考案し実践する。
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研究実績の概要 |
高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編では, 「交配実験の結果などの資料に基づいて, 有性生殖によって遺伝子の多様な組合せが生じることを見いだして理解させることがねらいである。」とされている。しかし, 昆虫以外の, 脊椎動物を材料とした減数分裂の教材は少なく, 動物で減数分裂時の染色体の動きの特徴が捉えられる観察教材が必要である。本研究では, メダカの減数分裂の全過程と染色体を可視化することにより, 有性生殖による配偶子の多様性に関する教材を開発することを目的とする。 本年度は, メダカの孵化直後から幼魚の時期までの, 卵巣内の卵母細胞の減数分裂の全過程を観察するため, 雌の稚仔魚や幼魚の組織切片標本の作製方法を確立した。稚仔魚において, 減数第一分裂前期の細糸期(レプトテン期), 合糸期(ザイゴデン期), 厚糸期(パキテン期), 複糸期(ディプロテン期)が識別可能になった。稚仔魚の成長に伴う初期の卵巣内の減数第一分裂前期が出現する過程を観察できた。これにより, 減数分裂の各ステージをより詳細に観察することが可能な組織切片標本を作製できると考えられる。卵巣の組織切片標本だけでなく, 胚や精巣・卵巣の懸濁液を用いて, ギムザ染色による方法を検討し, 減数分裂の各ステージを観察した。また, 卵巣の組織切片や雌の仔魚を用いてDNAを染色し, 蛍光顕微鏡や共焦点顕微鏡を用いた染色体の観察方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従って, メダカの稚仔魚から幼魚の卵巣内の卵母細胞の減数分裂の全過程が分かる標本を作製するため, 雌の卵巣の組織切片標本を作製し, 卵母細胞の発達段階を細胞学的に観察した。減数第一分裂前期の各ステージ(レプトテン期, ザイゴデン期, パキテン期, ディプロテン期)が識別できる組織切片を作製できたことにより, 卵母細胞の減数分裂が進行する様子をより詳細に観察することができた。
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