研究課題/領域番号 |
22K03019
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
礒部 智加衣 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20420507)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 集団認知 / アンサンブル表情顔 / 受容と排斥 / 脅威状況 / 集団認知プロセス / 脅威状況下 |
研究開始時の研究の概要 |
集団からの受容・排斥のサインの瞬時の読み取りは、人にとって重要であると考えられる。そこで本研究では、アンサンブル表情顔を用いて、集団からの受容・拒否プロセスの検討を行う。具体的には、それぞれの表情(感情価)の分散が操作された複数の表情顔、すなわちアンサンブル表情顔を、集団メンバーのものとして画面に短時間提示し、メンバーからの受容感等に回答を求める実験を行う。また、脅威状況のプライミング後におけるアンサンブル表情顔への評価・反応を求め、防衛的な反応を検証する。脅威状況の違い、対象集団の違い、および設問による差異も検討する。さらに、受容・拒否に関わる個人特性による調整効果について検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究(Isobe, 2024)では、集団の存在を脅かされたとき、その集団が醸し出す雰囲気に対する知覚に偏りが生じるかどうかを実験的に検証した。参加者(N=37)には、まず集団の脅威を、新聞記事を読んでもらうことで操作した。次に、表情認知課題として、画面に呈示された6人の顔から集団の雰囲気を評価してもらった。呈示する6つの顔は、例えば嫌悪顔6つ、中立顔4つとリラックス顔2つというように、中立顔に対する表情顔(リラックス顔、もしくは嫌悪顔)の比率を操作した。分析の結果、参加者は、集団の存在に脅威を感じている場合、そうでない場合よりも、嫌悪の混合顔に対する雰囲気を否定的に評価することが示された。ただし、混合率と集団存在脅威との交互作用は認められなかった。また、個人特性として拒絶感受性・集団への愛着の調整効果を検討した。リラックス顔6つに対する雰囲気評価において、拒絶感受性(受容‐拒否への感受性)が高い人は、集団の存在脅威条件において統制条件に比べより雰囲気が良いと評価していた。集団愛着の効果は認められなかった。自身の集団の存在を脅かされたとき、人は嫌悪顔の成員が含まれると、その集団が醸し出す雰囲気をよりネガティブに知覚することより、ネガティブな状況の検知が行われやすくなる、もしくはネガティブ刺激による影響が増幅しやすいことが示唆された。 次に、集団の存在脅威が外集団成員の雰囲気認知にどのような影響を及ぼすかを検討するための予備実験を行った。Black Americanの表情顔を用いて同様の刺激作成をした。参加者(N=20)に表情認知課題のみを行ってもらった。日本人顔を用いた実験の結果と同様に、表情顔の比率が高まるほど、雰囲気がよい/悪いと段階的に評価されることが確認された。ただし、中立顔6つにおける雰囲気評価は中央値4と比較し悪くとらえられていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討により、集団の存在脅威状況の影響における個人特性の差を検討した。存在が脅威づけられた集団(日本)の影響は、集団への愛着(愛国心)が高い人のほうが低い人よりも大きいことが予測されたが、その効果は示されなかった。一方で受容‐拒否への感受性(拒絶感受性)のほうが調整効果を持つことが示された。また、次年度の実験で用いる刺激の確認を行い、測度として妥当であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
自集団存在脅威が、内集団の雰囲気認知に、特にネガティブな顔が含有される集団の雰囲気認知に影響することが確認された。次年度では、外集団成員の雰囲気認知に、存在脅威が及ぼす影響を検討する。外集団(African American)の表情顔を利用しアンサンブル知覚を測定することにより、自集団存在の脅威が顕現化された際に、外集団に排他的になるプロセスを明らかにすることを志す。
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