研究課題/領域番号 |
22K03022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
綿村 英一郎 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (50732989)
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研究分担者 |
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 教授 (60377140)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 量刑判断 / AI / 人工知能 / 人間らしさ / 共感 / 司法 / 法廷 / 刑事裁判 / 信頼 / 裁判官 / 暗黙知 / 法と心理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,人工知能による裁判支援システムについて,人間視点のアプローチで検討を行うことである。具体的には,裁判官の判断を一般人と比較する心理学的実験を行うことで,人間裁判官の「プロらしさ」を抽出する。それによって,AIに実装すべきアビリティを明らかにし,そのアビリティをAIが担うことに対する社会的受容についての検証も行う。人間が人間を裁くことの意味について考察したい。
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研究実績の概要 |
2022年度に行った実験を論文化することができた。その実験では,人間の裁判官とヒューマノイド型のAI裁判官が被告人質問する様子(動画)を参加者に提示し,その反応を比較した。それぞれ被告人に対して共感的なふるまいをするverと比較的冷静なふるまいをする(共感的ではない)verの2種類があった。実験の結果,参加者たちは共感的なAI裁判官に対して人間裁判官と同等に信頼感を示し,その判決も妥当と評価していた。従来の研究によれば,市民はAIが道徳的判断を行うことに対して不安や抵抗感を表すことが知られていたが(アルゴリズム忌避傾向),この実験ではそのような傾向は示されなかった。その説明としては,生成系AIに対する慣れが忌避傾向を低減している可能性,先行研究における出版バイアスすなわちAIに対するネガティブな評価が報告されがちであった可能性も考えられる。上記論文を材料として,将来の司法に関する問題提起を一般向け書籍の中でも行った。さらに本年度は,法と心理学会第24回大会でシンポジウム「ロボット裁判官は人間社会をどう変えるのか?」を企画・実施した。AIと司法に詳しい研究者,研究分担者を交え,フロアと様々な可能性について議論した。その他,関連する研究をいくつか行い,法と経済学会および国際学会の場で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022,2023年度の2年間の研究により,本プロジェクトの大きな柱であった「AI裁判官に対する違和感の正体は何か?」,「AI裁判官は社会に受け入れられるようになるのか?」という問題をかなり突っ込んで調べることはできた。研究の派生で生じたアイデアをいくつか検証することもできた。しかし,裁判官を対象とした研究には遅れがあった。
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今後の研究の推進方策 |
(裁判官を対象とした調査に加え)市民を対象としたAI裁判官に対する評価を引き続き調べたい。その目的は「人間が裁くことの意義とは何か?」という問いについて社会の視点から考察するためである。司法の世界においてこれまで普遍的価値であった「客観性」をAIが高めることができることは確かである。この状況であえて人間に判断を委ねるとすれば,そこには客観性より重要な目的や意味があってのことである。しかし,人間が特別であることを支持する研究に偏って多く報告されているが,その問題に対して直接的にアプローチした実証的研究は今のところ見当たらない。2024年度はこの問題に取り組む予定である。さらに,AI裁判官に対する当事者視点での評価も調べたい。本プロジェクト含めこれまでの研究の多くは,AIが人を裁いている様子を第三者視点で評価させたものであった。しかし,被害者や加害者がAI裁判官に寄せる期待ないし警戒感は,第三者のそれとは別物と考えられる。また,2024年の秋には「AIと司法」をテーマにした書籍を執筆する予定である。この書籍は,AI先進国であるリトアニアの研究者からオファーを受けたもので,様々な国の研究に基づき将来の司法を構想する企画である。日本初の研究を紹介しつつ,国際共同研究の可能性を模索する。
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