研究課題/領域番号 |
22K03042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
安達 未来 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 准教授 (50733789)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | Precrastination / 先延ばし / 自己制御 / 意思決定 / Pre-crastination |
研究開始時の研究の概要 |
Procrastination(先延ばし)とは,取り組むべき課題を後回しにする非合理な傾向を指す。これまでそのメカニズムについて多くの知見が蓄積されてきた。一方で,やるべき課題を早めに片付けておくというPre-crastinationについても,近年検討されている。しかし,Pre-crastinationの背景にある自己制御や意思決定の規定因はいまだ明らかにされていない。本研究では,そのメカニズムを自己制御の考えにもとづきモデル化し,Pre-crastinationの効用を実践的なアプローチに紐づける。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,Pre-crastinationという新たな概念(身体的コストをはらってでも,すぐにタスクにとりかかろうとする傾向)のメカニズムを自己制御の観点から明らかにすることである。今年度はPre-crastinationという概念の定義を再考・拡張した。従来の知見は,実験的操作にもとづくものである一方,日常生活や場面を想定した実験的手法を用いた検討はあまりなされていなかった。そこで,場面想定法を用いてPre-crastinationの実態を明らかにし,知見を再現・拡張するとともに,どのようにわれわれの生活に関連する概念であるかを検証した。すなわち,人は認知的負荷,感情的負荷を伴うそれぞれのタスクに対し,それらの負荷を取り除くため負担や身体的コストを払っても,もしくは恐怖が高いほどタスクに早くとりかかるのか,これに自己制御がどうかかわるのかを検討した。その結果,1)認知的負荷と感情的負荷を取り除くために人はタスクに早くとりかかろうとする,2)身体的コスト,負担,恐怖が伴うとその傾向は緩やかになる,3)自己制御が2)の傾向を調整することが示された。さらに,認知的もしくは感情的負荷が,それぞれ課題にとりかかる順序に影響を与えること,認知的負荷を軽減させるため,もしくは後のネガティブな感情を軽減させるために,各状況に適した順序でタスクにとりかかることが,自己効力感を高めることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pre-crastinationについてのアンケート調査を,本邦において実施することで,従来の知見を再現・拡張することができた。加えて,その実態を日常生活や身近な場面を想定することで明らかにすることができた。 Pre-crastinationの背景には,認知的負荷をできるだけ軽減させようとする意識がかかわっている。そのため,認知的負荷を軽減させるため,簡単なタスクからとりかかることの効果が明らかにされている。一方で,好きなタスクからとりかかることで,後のタスクへのネガティブな感情が生じ,かえってパフォーマンスが低下することも指摘されている。このようにタスクのとりかかり順序に関する知見は一貫せず,認知的負荷の軽減のためか,もしくは後のネガティブな感情の軽減のためかについて整理されていないなか,タスクの締め切りまでの長さの違いを考慮した解釈を試みることで,新たな示唆を得ることができた。つまり,締め切りまでの長さが異なるそれぞれの状況に適した順序で課題にとりかかることで自己効力感が高まることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで示されてきた結果をもとに,Pre-crastinationを測定するための尺度を開発する予定である。これまでにも尺度化の試みは進められてきているものの,Big5や自己制御,衝動性などのパーソナリティ要因との関連についての知見は少なく,一貫していない。そこで,日本語版Pre-crastinationを測定する尺度の作成を試みる。またそれを用いて,効率的なタスクの取り組み方やとりかかり順序と自己効力感との関連を明らかにしていく。
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