研究課題/領域番号 |
22K03055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
出口 拓彦 奈良教育大学, 学校教育講座, 教授 (90382465)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 教員間いじめ / 学校 / 小学校 / 中学校 / 高等学校 / いじめへの対応 / 問題行動 / 教育心理学 / いじめ / 教員 / 相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
まず1年目は,主に児童生徒の「授業中の私語」の「制止」,および「教員間いじめ」そのもの(頻度)の規定因に焦点を当てる。次に2年目は,「教員間いじめ」の「制止」に焦点を当て,児童生徒から教員,学級集団から職場集団等,複数の対象について検討する。3年目は「制止」に関する調査だけでなく,得られた知見を基に,成員自らが問題行動を「制止」することを促すための指導案・研修案を作成し,その効果を検討する。そして,多様な個人が存在する教育場面での問題行動の防止策について考察するための理論的・方法論的な枠組みの形成を目指す。
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研究実績の概要 |
学校において「教員間いじめ」が第3者的に目撃された際,教員(学校長等を含む。以下も同様)によって,どのような「対応」が行われたのかや,「対応」に要した日数などについて,WEB調査によって実証的に検討した。この際,同一の学校に所属する複数の教員に回答を求め,かつ複数の学校で調査を行った。そして,日本全国の小・中・高等学校計49校に所属する161名の教員から回答を得た。これによって,「教員間いじめ」という問題への対応について,個人・組織という双方の観点から考察することが可能となった。 さらに,令和元年~令和3年度の間に収集した「教員間いじめ」に関するデータの分析も行った。まず,学校の「異動(移動)」と「教員間いじめ」との関連について検討した。「教員間いじめ」の被経験頻度に関する令和元年度と令和3年の相関係数を,「異動」の有無別に算出した結果,異動「有」の場合は「無」に比べて有意な相関が少ない傾向が見られた。つまり,ある学校において「教員間いじめ」を頻繁に受けていたとしても,別の学校に移れば必ずしも「教員間いじめ」を受けるとは限らない可能性が示された。このことから,「教員間いじめ」のターゲットになりやすい者(の個人的な特徴)は,「学校」によって変化しうるものと考えられた。 次に,自分と周囲の教員が持つ教師観(段階尺度等で評定)の相違と「教員間いじめ」の被経験頻度との関係を検討した。その結果,「自分が重視していることを他の教員は重視していない」(素点の差)という相違よりも,むしろ,「教師観に相違があること自体」(「差」を絶対値にしたもの)が,「教員間いじめ」を受ける原因となっている可能性が考えられた。 これらの研究成果は,日本教育心理学会総会と日本グループ・ダイナミックス学会大会で発表された。また,令和4年度に収集したデータについては,現在,分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように,「教員間いじめ」への対応に関するWEB調査を行い,49校161名の教員(学校長等を含む)から回答を得ることができた。このため,量的データに基づいた統計的な分析を行うことが可能になった。しかし,回答者数は200名には達しておらず,必ずしも「十分に多い」ものであるとは言いがたい部分もあると考えられる。 これについては,「教員間いじめ」への(組織的)対応という事項を扱った調査であったことから,回答への協力を得ることが比較的難しかった可能性が推測される。この点については,本研究課題に取り組んでいく上で避けることが困難な問題であると考えられ,今後も同様の問題が生じることを想定しつつ,(予算に占める調査費用の割合・バランスを考慮しながら,)より多くの方々に調査への協力を呼びかけるなどの対策を検討していくことが重要となると思われる。 以上のように,研究を進めていくにために必要なデータを得ることはできたが,回答者の人数が200名未満と,必ずしも十分であるとはみなしがたい部分もあった。このことから,総合的に判断すると「おおむね順調に進展している」状態にあると考えられる。特にデータ収集に関する問題は今後も継続すると予想されることから,調査等の計画を立てる際は引き続き慎重に検討していく必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,令和4年度に実施した調査データの分析を行う。そして,学校において「教員間いじめ」が第3者的に目撃された際,当該の学校に所属する教員(学校長等を含む)によって,どのような「対応」が行われたのかや,「対応」に要した日数等について,実証的に検討する。これによって,同一の組織に様々な立場で勤務している者たちが,「教員間いじめ」という否定的な問題に対して,具体的にどのような形で対応しているのか,という事項について考察することが可能となり,「いじめ」が生じた際に適切に対応していくための方法を検討する重要な手がかりが得られると考えられる。 さらに,上記の分析結果等を基にして,「教員間いじめ」への対応の「差」を生じさせる要因について考察し,仮説を精緻化する。そして,再度調査を行うことによって,精緻化した仮説を実証的に吟味していく。この際,「教員間いじめ」への対応の「有」「無」だけではなく,「対応」が教員個人によってなされたのか,複数の教員による協同によってなされた組織的なものなのか(組織的なものの場合,具体的にどのような形で複数の教員が対応したのか),といった事項についても着目する。 このようにして,(特定の教員のみに様々な負担が集中しない形で,)組織として「教員間いじめ」という問題行動に対応することができるようにするための方策を探っていく。また,「教員間いじめ」以外の問題行動への対応についても,関連する文献を調査するなどして併せて検討していく。
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