研究課題/領域番号 |
22K03056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉村 和美 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (20249288)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 発達 / アイデンティティ / 青年期 / 発達心理学 / ナラティブ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,日本人青年のアイデンティティ発達を妨げているものは何かを,日本社会における文化的価値観の変容がいかに青年に体験されているかに着目して解明する。文化的価値観が急激に変化しつつある日本社会では,青年に対する旧来の生き方への期待と新しい生き方への期待が混在し,そのはざまで現代青年はアイデンティティ形成の明確な方向を見失っている。異なる価値観のせめぎ合いの中でアイデンティティがどのように形成されるのかは,青年の自己語り(ナラティブ)の中に現れる。そこで,ナラティブ・アブローチを用いて大規模な青年の自己語りのデータを収集・分析する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,文化的価値観の変容という観点から見て,日本人青年のアイデンティティ発達を妨げているものは何かを,ナラティブ(自己語り)・アプローチによって,明らかにすることである。大学生300名を対象に,青年の自己語りを収集し,(1) 社会が彼らにどのようなアイデンティティ形成を期待しているのか,その様々な内容を抽出したうえで,(2) 個々の青年が,社会からの期待の様々な内容を,どのようにネゴシエーションさせながらアイデンティティを形作ろうとしているのか,その多様なあり方を分類することを目的とする。さらに,(3) 分類された自己語りの内容およびネゴシエーションの種類と,アイデンティティ・ステイタス(達成,早期完了,モラトリアム,拡散)および精神的健康との関連も検討する。 本年度は,このうち(1)および(2)について,分析を行った。具体的には,これまでに収集した104名の青年の語りを用いて,彼らの自己語りの中に見られる,(a) 青年が認識する,社会からのアイデンティティ形成への期待としての集団主義的な内容と個人的な内容を抽出する作業,および (b) 青年が,社会からの様々な期待(集団主義的な期待・個人主義的な期待)に対して,どのように対応しようとしているのか(あるいは,対応したのか),その多様なネゴシエーションのあり方を抽出する作業を行った。この作業は,テーマティック・アナリシス法に基づいて,申請者が研究協力者と共に進めてきた。その結果,(a)については,集団主義的な期待と個人主義的な期待の両方について様々な内容があることがわかった。また,(b)については,それら2つの期待の間のバランスの取り方について様々な内容が見られることがわかった。ただし,この作業は現在も継続中であり,現在見出されつつある具体的で多岐にわたる内容を整理・統合してカテゴリー化するには,さらなる作業が必要な状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,すでに得た104名のナラティブ(自己語り)から,青年が,「社会から期待されていると認識している,集団主義的な内容と個人主義的な内容」および「社会からのアイデンティティ形成の期待としての集団主義的・個人主義的な内容の,多様なネゴシエーションのあり方」をコード化するためのマニュアル作成を終え,仮説の検証作業に入ることになっていた。しかし,現在もまだマニュアルを作成中である。その理由は,質的なデータからマニュアルを作成する作業は,大量の逐語録を繰り返し読み込んで,複数の研究者で議論しながらカテゴリーを生成することが必要であるため,思った以上に時間がかかっているからである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,青年が「社会から期待されていると認識している,集団主義的な内容と個人主義的な内容」および「社会からのアイデンティティ形成の期待としての集団主義的・個人主義的な内容の,多様なネゴシエーションのあり方」をコード化するためのマニュアル作成を行う。そして,次年度前半に評定マニュア ルの作成を終えて,そのマニュアルをもとにデータのコードを行い,仮説1(青年の自己語りには, 社会からのアイデンティティ形成への期待として集団主義的な内容と個人主義的な内容の両方が現れ,その頻度は一方の内容だけが現れるより多い),仮説2(青年の自己語りには,社会からのアイデンティティ形成の期待としての集団主義的・個人主義的な内容の,多様なネゴシエーションのあり方が見られる),仮説3(文化的価値観のネゴシエーションのあり方とアイデンティティ・ ステイタスおよび精神的健康度は関連する)の検証を行う予定である。
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