研究課題/領域番号 |
22K03061
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
椎名 乾平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60187317)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 評定尺度 / 歴史 / 心理測定 |
研究開始時の研究の概要 |
評定尺度は様々な学問で用いられて来たが、その基礎づけは不明瞭である。本研究の目的は「測定装置としての評定尺度」について歴史的な観点から再考することによりその基本特性を明らかにすることである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「測定装置としての評定尺度」の歴史的成り立ちを調べ、その基本特性を明らかにすることである。できれば将来の研究者を「評定尺度の由来が不明である不安」から解放したい。 予備調査より評定尺度には、単独であるいは相互に影響を与えながら発展してきた少なくとも八つの流れがあるのが明らかになってきたので、まずそれらを分類整理し、それぞれの流れの中で評定尺度がどのような役割を担ったのかを明らかにした。また評定尺度の創案者が特定できる場合は、測定精度や数値の性質にどの程度のスペック(機能仕様)を期待していたのかを明らかにし、これから新たに評定尺度を作成・使用する際の評価基準と指針を与えたい。 2022年度は評定尺度を歴史的観点から分類整理をした論文を出すことが出来た(昔の評定尺度, 2022, 心理学評論)。この論文の目的は、元々の文脈における評定尺度の起源を包括的に分類整理し、評定プロセスの隠された動作原理を可能な限り推測することであった。この研究の結果 リカート (1932年) より前に多くの事例、すなわち、ゴルトンとピアソンの統計的研究、美学 (ロジェ・ド・ピール)、教育評価 (ラグ)、産業心理学 (W. D. スコット)、精神物理学 (ボーフォール) 、が相互関係がほとんどない状況で存在したのが明らかになった。すなわち、時間軸上で評価すると評定尺度は自然発生するようであり、このことから評定尺度の根源が結局のところ人類の数値認知能力と数値産出能力にあるのではないかと主張された。 さらに現在最も使用されている評定手続きの一つであるGPA(Grade Point Average)の歴史について小論をまとめることが出来た。 学会発表では1600年頃のイエズス会での6段階教育評価について発表した。今後論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メインの研究は論文となったので、計画の半分ほどが達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り進める予定である。具体的には、主論文が出版され研究の大きな枠組みが確定できたので、歴史的に興味深いがやや特殊な問題、あるいは現在使用されている重要な評価方法の歴史について考察したい。具体的には 1)心理学史でも、教育評価史でも、見落とされて来たと思われるイエズス会での6段階教育評価の持つ問題を考えたい。すなわち、イエズス会の権勢とイエズス会学校の生徒であったデカルト等の影響により、イエズス会の6段階教育評価は後世の段階を用いる教育評価の範例となった可能性があり注目に値しよう。 2)上と関係するが心理学的にも美学的にも興味深いロジェ・ド・ピールの画家の採点表と実験美学との関係について調べたい。 3)17世紀科学革命や数量化革命というのは科学史で良く語られる概念である。それならば、評定尺度は、人文科学における数量化という大きな文脈の中で評価しなければならないのかもしれない。この可能性について心理学の立場から考えて見たい。 4)GPA(Grade Point Average)については既に小論をまとめたが、残された問題を考究したい。さらに現在の教育評価で注目されているルーブリックは最も新しく出現した評定尺度の一種と言えるのだろうが、その由来は不明確なので歴史的調査を試みたい。
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