研究課題/領域番号 |
22K03070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
野上 俊一 中村学園大学, 教育学部, 教授 (30432826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 知的好奇心 / 最近接知識獲得モデル / ズレ低減モデル / 知識量 / 興味 / 知識活性 / 暗黙の知的好奇心 / プライミング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,主体的に深く学ぶための学習活動を支える知的好奇心の生起過程について,学習者をコンピテンス動機づけに基づく成長を希求する存在とみなし,「知っているからもっと知りたくなる」とする最近接知識獲得モデルの妥当性を知識ネットワークの活性度と形成の観点から検証することである。具体的には,学習課題に関連する知識の提示の仕方によって生じる既有知識の活性度や形成可能性の違いが学習課題に対する知的好奇心に影響するかを,関連知識を供与することが知的好奇心を高める足場かけとして機能するのか,プライミングパラダイムを用いて既有知識の活性度を上げることで知的好奇心は高まるのか否か,の点から検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,主体的に深く学ぶための学習活動を支える知的好奇心の生起過程について,主な先行研究で示されている「認知的葛藤を解消しようとする」というズレ低減モデル(discrepancy reduction model)に対して,学習者をコンピテンス動機づけに基づく成長を希求する存在とみなし,「知っているからもっと知りたくなる」とする最近接知識獲得モデル(proximal knowledge acquiring model)の妥当性を知識ネットワークの活性度と形成の観点から検証することである。 令和5年度は,最近接知識獲得モデルに基づけば学習者は自分自身のコンピテンスを高めるように知的好奇心を高め,探索や学習を行うことが予想されるため,それに伴って自分自身の知的好奇心に対する評価は高くなるのかを質問紙調査により検討した。具体的には,好奇心の下位分類である特性的な知的好奇心(西川・雨宮, 2015)と対人的好奇心(西川・雨宮・楠見, 2022)の自己評価に認知バイアスがあるか否か大学生94名を対象に質問紙調査を行った。経験への開放性に自己卑下的評価があること(外山・桜井,2001)から,知的好奇心の評価は自己卑下的であることも予想されたが,分析結果は自己卑下も自己高揚も示されなかった。一方,他者と強調することを大切と考える日本文化では調和性は自己高揚的な評価を示すこと(外山・桜井,2001)から,対人的好奇心の評価では自己高揚的であることを予想され,他者の感情への好奇心については自己高揚が示された。 モデルの妥当性検証に関しては,大学生を対象に学習課題の選択や余暇活動の選択において所持する知識量や経験量の違いによる影響があるか否かを明らかにするための予備的な面接調査を行った。その結果,学習課題や余暇活動で同様の選択をする者と異なる選択をする者がいることから領域固有性の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は大学生を対象に一般的な知的好奇心の程度と事前知識を統制した上で,関連知識の供与の有無によって,知識供与の前後の学習課題に対する知的好奇心や探索学習行動に差があるか否か,あるとすればどのような差があるかを検討する予定であった。この心理学実験及び質問紙調査に先立ち,関連知識の量と構造を測定する尺度開発が完成に至らず予定から遅れている。 一方で知的好奇心の生起についての一般的な心的モデルの検証に関連する,知的好奇心のパーソナリティ的側面の自己評価における特徴については質問紙調査を用いて実施した。さらに,同程度に分からない(活用できる知識がない)場合でも,その後に「知りたい」という気持ちが生起するか否か,「どのように知りたい」かが個人によって異なる可能性が面接調査から示された。単なる知識量と知的好奇心の程度の関数関係ではなく,多変量による説明モデルを作る必要性が示唆されたため,予定した実験や調査のデザイン検討に時間を要している。 総合的にやや遅れている状況ではあるが,令和6年度は研究デザインの構築を精力的に進め,当初目的を果たすように努める。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の調査を踏まえて,学習者のパーソナリティを考慮に入れた上で,学習者の持っている既有知識が少なくても関連知識を供与することが学習課題に対する知的好奇心を高める足場かけとして機能するのか否か,について,大学生を対象とした実験と質問紙調査を行う。具体的には,プライミング実験の手続き及び単純接触効果実験の手続きをベースにして,関連知識の供与の有無によって,知識供与の前後の学習課題に対する知的好奇心や探索学習行動に差があるか否か,あるとすればどのような差があるかを検討する。
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