研究課題/領域番号 |
22K03096
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石垣 琢麿 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70323920)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 病的信念 / 多次元アセスメント / メタ認知 / 強迫観念 / 妄想 / 自己否定的信念 / メタ認知トレーニング / 面接法 / 自己否定的思念 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではまず、シドニー大学のBrakouliasらが開発した客観的測定尺度Nepean Belief Scale(NBS)を用いて、種々の精神疾患に関して病的信念の多次元的異同を調べ、病的信念の実態を実証的かつ診断横断的に検討する。BrakouliasらはNBSの開発過程で強迫観念間の比較を行ったが、本研究ではうつ病や統合失調症も調査対象とする。次に、病的信念とメタ認知との関係を横断的・縦断的な調査によって検討する。病的信念とメタ認知との関係を横断的調査で検討し、さらに、種々の精神疾患に対してメタ認知トレーニング(MCT)による介入を行い、信念の変遷を多次元的・経時的に検討する。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、慢性期統合失調症の病的信念に対するNepean Beliefs Scale (NBS) の信頼性と妥当性を検証する研究を行い、下記の論文にまとめて発表した。強迫観念を調べる目的で開発されたNBSは、慢性統合失調症の支配観念や妄想を調査する場合も再検査信頼性、評価者間一致度、構成概念妥当性は高いことが本研究によって示された。NBSは先行研究によって急性期精神症や摂食障害の病的信念測定における信頼性と妥当性はすでに確認されており、本研究により適用範囲はさらに広がった。これにより、同じ尺度で多様な精神疾患の病的信念を測定、比較できるようになった。つまり、本研究課題の目的である病的信念の多次元アセスメントによる疾患比較が可能になった。 Takuma Ishigaki, Takeshi Shimada, Hiroki Tanoue, Naoki Yoshinaga, Yuki Nishiguchi, Ryotaro Ishikawa and Masahito Hosono (2023) Reliability and validity of the Nepean Beliefs Scale for delusions and overvalued ideas in chronic schizophrenia: analysis of a preliminary pilot study. Frontiers in Psychiatry 14: 1298429. doi: 10.3389/fpsyt.2023.1298429 2024年度はNBSを用いて、統合失調症の妄想とうつ病の自己否定的信念や強迫観念との比較を行い、病的信念における心理的成分の異同を確認する。また、メタ認知トレーニング(MCT)への参加前後で病的信念の心理的成分がどのように変化するかを調べる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発表した論文の研究参加者は28人の統合失調症の方々で、目標の50人には足りない。また、統合失調症との比較のために募集しているうつ病、強迫症は、現在のところそれぞれ10人、14人と十分な数に至っていない。研究を完成させるために、残された研究期間でさらに研究参加者を増やす必要がある。これまで以上に多くの医療機関に協力を要請しているところである。 ただし、本研究の目的である病的信念に対するメタ認知の影響に関しては、一般人口を対象としたオンライン調査を用いて興味深い結果を得ることができた。この研究は2024年度中に発表できると予想している。 また、メタ認知トレーニング(MCT)によるメタ認知機能の変化を測定するための自記式尺度「メタ認知的対処方略尺度(MCSS)」の開発も進んでおり、近日中に一般人口を対象としたオンライン調査を実施する予定である。MCSSが開発されれば、NBSとともに利用することで、MCTの参加者の認知的、メタ認知的変化を詳しく調べることができるようになり、病的信念をめぐる心理学的メカニズムをさらに深く理解できると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
臨床と方法論における多職種かつ有能な協力者を得ているので、研究の方針自体を変更する必要はない。 現在、研究参加者数が不足しているうつ病や強迫症は、精神科・心療内科クリニックの方が患者数は多いと考えられる。慢性期統合失調症の方々は、地方都市の精神科病院に協力を要請したが、今後は都市部のクリニックに協力要請の対象を広げる予定である。また、申請者が関与する一般社団法人MCT-Jネットワークでの研修会を通じ、医療機関に協力を要請する。
|