研究課題/領域番号 |
22K03099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 美樹江 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (20536081)
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研究分担者 |
加藤 大樹 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (00509573)
浅井 継悟 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40776655)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 学校不適応感 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 抑うつ / 自尊感情 / ハーディネス / 心理的成長 / 予防的支援方法 / スクールカウンセラー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,学校不適応感が与える中・長期的影響を検証するとともに,学校不適応感後の心理的成長に必要な心理的支援法についても検討する。具体的には以下の3点を検討することで,スクールカウンセラーと教諭が連携し,学校不適応感後心理的成長モデルの構築を目指すものである。 1)縦断データを用いて学校不適応感が中・長期的に欠席日数や心理的側面にどのような影響を与えているか検証を行う。 2)学校不適応感の変移と心理的諸側面の発達との関連を検証し,学校不適応感後の心理的成長の様相を量的に解明する。 3)学校不適応感から心理的成長に至るプロセスの過程とその際に支えになった心理的援助について質的データを用いて検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は,学校不適応感が与える中・長期的影響を検証するとともに,学校不適応感後の心理的成長に必要な心理的支援法についても検討することが目的であった。この目的にそって今年度は以下を実施した。 本年度はまず短期縦断調査を通して,高校生の学校不適応感と抑うつと自尊感情の観点より検討を行った結果,被受容感の乏しさが自尊感情に有意な負の影響,社会的コンピテンスの不足と不適応徴候が抑うつに有意な正の影響を与えていることが明らかとなり,本研究結果はパーソナリティ研究に掲載予定である。 また,高校生の3年間の縦断調査より,ハーディネスとロールフルネスとの関連についても検討を行い,社会的ロールフルネスがコントロールを媒介して,チャレンジに有意な正の影響を与えている等,相互影響関係が示された。本結果についても感情心理学研究にて掲載予定である。 これまで学校不適応感については小学生版と高校生版は作成されていたが,中学生版については検討されていなかった。そのため,高校版を参考に中学生を対象とした学校不適応感尺度を作成し,信頼性と妥当性についても検証を行った。加えて,悩みごとの有無と学校不適応感との関連について検討したところ,悩みごとが有ると感じている生徒ほど悩みごとが無いと回答した生徒に比して,学校不適応感が有意に高い結果となった。また,「スクールカウンセラーに相談したいことがある」と回答した生徒はそうではない生徒よりも不適応徴候等が高い傾向がみられ,メンタルヘルス調査を用いた早期予防の必要性が示された。 加えて,現在小学校の3年間の欠席日数と学校不適応感との関連について検証を行い,国際学会にて発表予定としている。同時に,高校生におけるロールフルネスとビックファイブとの関連及び学校不適応感の経年変化に影響を及ぼしている要因についても縦断的見地より検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では,縦断的調査より学校不適応感が短・中・長期的にどのような影響を与えるか検討を行い,短期的には高校生の不適応徴候と社会的コンピテンスの不足が抑うつ感に影響を与えており,1学期に社会的コンピテンスが不足していると感じている生徒や不適応徴候が高い生徒には何らかの心理的支援をすることが抑うつを低減させ,不登校を予防する可能性についても示唆された。 一方,3年間の縦断的調査においては,ハーディネスと社会的ロールフルネス(役割満足感)との関連も示され,何らかの役割を通して満足感を得ている生徒はストレス状況下においてもコントロールしたり,チャレンジできる等の特性につながることが示された。とくに社会的ロールフルネスは,学校不適応感を抑制することも報告されており(鈴木・加藤,2019),何らかの役割を通して満足感を得られることは,学校不適応のようなストレス状況下でも,持ちこたえる力(ハーディネス)の育成につながっている可能性も考えられ,今後の学校不適応感後の心理的成長につながる知見を得ることができた。 小学生においては,不適応徴候と不適応要因が3年間の欠席日数に影響を与えている可能性も示され,今後その背景等について更なる検討を行う予定である。 さらに,中学生の学校不適応感のプロセスについても高校生と同様に社会的コンピテンスの不足が被受容感の乏しさを媒介して,不適応徴候に影響を与えていることが示された。そのうえで,スクールカウンセラーのメンタルヘルス調査を用いての予防的支援方法についても論文において纏めた。 なお,具体的な今年度の研究全体についての成果としては、関連論文2編(掲載予定)、学会発表2編について学術的発信を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では,高校生の学校不適応感の長期的影響過程について検討するために,学校不適応感の変移と抑制する要因及び助長する要因との関連について長年蓄積してきたデータを用いて検証を行う。 学校不適応感後心理的成長に関する研究では,学校不適応感後に心理的成長を促した要因について,大学生を対象に質問紙調査を実施する予定である。 加えて,教諭を対象に自由記述調査を実施し,学校不適応感を抱いていた児童・生徒がどのような支援を経て適応に至ったのかにについて尋ね,テキストマイニング等を用いて分析を行う予定としている。 さらに,教諭を対象に学校不適応感を抱いていた児童・生徒にどのような支援方法が有効であったかについ尋ねるなど,学校不適応感後の心理的成長過程について面接調査を実施する予定としている。
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