研究課題/領域番号 |
22K03136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小野 久江 関西学院大学, 文学部, 教授 (40324925)
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研究分担者 |
竹谷 怜子 甲南女子大学, 人間科学部, 助教 (10846900)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 抑うつ状態 / COVID-19 / カウンセリング / 臨床心理学的介入 / メンタルヘルス |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が関連するメンタルヘルスの悪化が報告され、その対策として、利用しやすい相談支援方法の科学的検討が急がれる。対人関係カウンセリング(IPC)は、うつ病に効果が認められている対人関係療法から派生した簡易なカウンセリングで、臨床心理の専門家でなくても行える。そこで、本研究では、COVID-19が関連する抑うつ状態に対する、双方向オンラインで行うIPC(o-IPC)の効果を調べることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が関連するうつ状態などのメンタルヘルスの悪化に対して、オンラインで行う対人関係カウンセリングが有効であるかどうかを科学的に検討することである。対人関係カウンセリングは、臨床心理の専門家でなくても習得が可能な構造化された短期カウンセリング法である。このカウンセリングをオンラインで行うことができれば、感染症や災害時などにおけるメンタルヘルス対策に広く貢献できるものと考えられる。本研究では、COVID-19が関連するメンタルヘルスの悪化を来した人を広く対象としている。例えば、COVID-19によって友人関係が変わり孤独感が強いとか、COVID-19後遺症により健康面での不安が高いなどである。精神疾患の可能性が高いなどの場合は、本研究にには参加してもらわずに医療機関などを紹介している。 本研究における2023年度の研究参加は少数にとどまった。2023年5月にCOVID-19が5類に移行し、参加希望者が減少したことに加え、オンラインでの連絡が取れなくなった参加希望者が多かった。さらに、医療機関などへの紹介が必要な参加希望者の割合が3割近くとなり、実際に研究に参加可能であった者は2名であった。そこで、本研究の副次的目的として、COVID-19流行が収束した2023年12月において、うつ状態を呈することに対する臨床心理学的要因の検討を行った。その結果、COVID-19流行前からうつ状態を呈していた人やストレス対処方法として飲酒を用いる人がリスク高いことが示され、今後の対人関係カウンセリングを行う際の有益な情報を得たと考えた。 今後は、研究参加者の募集方法を変更し、参加者を確保し研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画段階(2021年度)においては、COVID-19関連のメンタルヘルスの悪化を訴え、本研究に参加しカウンセリングを受けたいとの申し出が多数あったことから、本研究の参加者を計60名に設定した。しかし、予想に反し、研究参加者の確保に困難を来し研究が遅れている。2023年5月にCOVID-19が5類感染症に移行した後、研究参加希望者数が減少した。そこで、2023年度から研究参加協力金を5000円から10000円に増額して研究参加希望者を募った。その結果、2023年度における研究参加希望者は19名となったが、スクリーニング可能であった者は7名となり、この7名中で本研究の参加基準を満たしカウンセリングを行えた者は2名に留まった。研究参加希望者においてスクリーニング脱落(オンラインでの連絡が取れなくなる)が多いことと、およびスクリーニングにて自殺の可能性が高い者の率が高い(約3割)ことが、研究への参加者数の確保を困難にしていると考えた。なお、本研究は、疾病の治療を目的としたものでなく、疾病段階に至らないメンタルヘルス状態の改善を目的としたカウンセリング効果を検討する研究であるため、組み入れ基準は自殺の危険が高くないものとしており、自殺の危険が高い可能性がある場合は、適切な相談期間や医療機関を紹介している。 応募者に希死念慮が高いことが少なくない状況を受け、COVID-19流行が落ち着いた時点(2023年12月)においても、強い抑うつ状態や自殺念慮を呈することに影響する臨床心理学的要因の検索を、本研究の副次的目的の一つとして行った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月より、参加者募集に際しより詳細な説明を行うことにする。すなわち、COVID-19関連での悩みや気分の落ち込みがカウンセリング対象となることを説明し、逆に治療を必要とする精神疾患や自殺の危険性が高い場合はカウンセリングの対象でないことを例を挙げて説明する。例えば、「COVID-19のため、友達と会えなくなって孤独」「COVID-19後遺症を相談できずに困っている」「COVID-19の影響で仕事が変わって経済的に不安」などのわかりやすい例示する。また、研究参加協力金10000円の支払いについても丁寧に説明を行う。すでに、2024年4月の1か月間に改善した方法で参加者募集を行ったところ、24名の研究参加希望者があり、16名の参加希望者とその後の連絡がとれ、11名の対象者の登録が終了している。このペースで参加者が集まれば、研究の遅れを回復でき、2024年度中に予定した計60名の参加が可能であると考えている。また、2024年度からは研究分担者1名ならびに研究協力者2名の3名でカウンセリングを行う予定としており、カウンセリングも順調に進行できるものと考えている。さらに、副次的目的として行ったCOVID-19感染症の流行収束後における抑うつ状態に影響する因子の結果は、今後の対人関係カウンセリングに有益な情報と考えられるため、この結果を第65回日本心身医学会総会、第21回うつ病学会総会にて発表するとともに、論文としても発表予定である。
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