研究課題/領域番号 |
22K03140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
吉川 麻衣子 沖縄大学, 人文学部, 教授 (80612796)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 戦争体験者 / 沖縄 / 物語 / 語り合い / ICT / 共創 / フィールドワーク |
研究開始時の研究の概要 |
筆者は、1999年より沖縄戦体験者と共に心理学的研究を始めた。戦争による様々な影響を受けた人びとは今、自らの人生の物語・記憶・想いを次世代に遺すこと、地域をこえて平和を語らうことを望んでいる。 ①Covid-19の蔓延により失われた安心して語らえる場を再び創り、②世代間交流を主目的とした語らいの場を共創する。③地域(国)をこえて平和構築について考えることを主とした平和教育プログラムを企画し、④一連の研究を総括して電子書籍もしくは映像作品を制作する。情緒的にも物理的にも安心・安全な語らいの場の創出、国内外の人びととの語らいを可能にするため、ICTを導入した研究を構想している。
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研究実績の概要 |
① ICTを活用して全4回にわたり,世代や地域を超えた語らいの場を実施した。参加者はほぼ毎回同じで,8~10名が参加した。参加地域は沖縄県,広島県,京都府,東京都であり,年齢層は20代から90代までと幅広かった。前年度の参加者に1~3名が追加された。高齢の参加者も機器の使用に慣れ,前年度よりスムーズに活動を進めることができた。次年度も引き続きICTを活用した語らいの場を実施する予定であり,アメリカ合衆国ハワイ州の大学生も参加することになっている。
② 新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことに伴い,対面での語らいの場を再開し,おおむね2か月に1回のペースで全4回実施した。2005年から継続しているこの活動で,沈黙していた体験者たちが話し始めるようになったことを研究成果として学術論文にまとめ,令和6年度に学術雑誌に掲載される予定である。
③ 「平和教育プログラム」として,沖縄戦の戦跡を巡るフィールドワークを全3回実施した。1回目は沖縄戦体験者を招聘し,8名の参加者とともに主に南部戦跡を訪れた。2回目は糸数アブチラガマの地元ガイドを招聘し,13名で糸数壕を中心に活動した。3回目は20代の大学生をガイドに迎え,生まれ育った沖縄県読谷村をフィールドに選び,活動を行った。これらのフィールドワークを通じて,「沖縄戦」についての地域ならではの世代間伝承を聞くことは,体験者から話を聞くことや感じたことを語るだけでは得られない深い学びの機会となった。令和6年度には,広島県と沖縄県でフィールドワークを計画している。ICT機器で撮影し,遠隔地の人びとと共に学びを共有できるプログラムを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染状況による規制が緩和されたことにより,前年度やや遅れていた研究が進展した。ICTを活用した語りの場,対面での語りの場,そしてそれらを併用した語りの場など,さまざまな「平和教育のあり方」が発見された。また,広島県で平和教育に携わる人びととのネットワークを構築できた(その際の旅費を科研費で支出した)。次年度実施する本研究課題のサブテーマⅢ「地域をこえた平和教育プログラム」に向けた準備がほぼ整った。
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今後の研究の推進方策 |
①前年度に引き続き,研究協力者(戦争体験者)が他界した。また,高齢のために語らいやフィールドワーク等に参加できない方が増えている。そのため,令和6年度でサブテーマⅢ「地域をこえた平和教育プログラム」は終了し,令和7年度はサブテーマⅡ「世代間交流を主とする語らいの場」を継続実施しつつ,研究成果を書籍化する計画に変更する。
②当初の計画に含まれていた海外での調査および国際学会での成果発表は実施できなかった。円安の進行や国際情勢の影響で,予定以上の渡航費用を要し,研究全体の遂行にも影響を及ぼす可能性があったためである。次年度以降も現状の為替状況が続く場合,海外への出張を控え,研究成果を論文化して公表することに計画を変更したいと考えている。また,最終的な研究成果の書籍化に際しては,英語翻訳を付けて出版することも検討している。
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