研究課題/領域番号 |
22K03151
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福盛 英明 九州大学, キャンパスライフ・健康支援センター, 教授 (40304844)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | EXPスケール / 音声 / 特徴的特徴 / 評定 / 体験課程 / 基礎研究 / 自動判定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の将来にある究極の目的は、カウンセリングセッションやインタビュー等対話データの体験過程の段階(EXPレベル)を自動で判定する装置を開発することであるが、そのためにはまず第一歩として、EXPスケールにおける7つの段階の発言にはどのような言語的・音声的特徴があるかについての基礎的データの収集が必要である。本研究では、訓練されたEXPスケール評定者が、対話のEXP段階を評定し各段階に分類された発言データを用いて、テキスト・音声の特徴を特徴量として抽出するなど基礎的な知見を収集し、どの特徴量がEXP段階の差を明確にできるのかについて分析・吟味することを目的とする。
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研究実績の概要 |
Kleinら(1969)によって開発されたEXPスケールは、クライエント(または話者)の「話し方」に注目し、話者が内的体験を感じ、吟味しているかについて、訓練された評定者が録音・録画されたデータと逐語記録を観察し、評定基準に沿って評定するものである。本研究の目的は、EXPスケールにおける7つの段階の発言にはどのような言語的・音声的特徴があるかについて明らかにしてゆく基礎的研究である。訓練されたEXPスケール評定者が、トライアルカウンセリング、フォーカシング、 インタビューセッションのEXP段階を評定、各段階に分類された発言データを用いて、テキスト・音声の特徴量を収集し、どの特徴量がEXP段階の差を明確にできるのかについて分析・吟味し、基礎データを収集することである。今年度(1年目)は、EXPスケールの基準の見直しと評定経験者の経験の定量化(研究1)について探索的に取り組んだ。Klein(1969)のオリジナルEXPスケールの評定マニュアルに記載されている各段階の発言の特徴について、評定基準に不明瞭な点がないかを検討するために、2023年3月に、EXP評定経験者3名に協力を依頼し、短い音声データサンプルを実際に評定してもらった後にグループインタビューを行い、各段階を区別する際に用いている経験的特徴(主語、出来事と自己関与、感情語の使用など)と言語の特徴(基礎特徴、語彙量、意味密度など)と音声の特徴(ゆっくり語る、高さなど)の 評定体験を言語化してもらった。その結果、レベル1と2の間は音声的に異なることなどが明らかになった。また、評定者は、からだの感じへのアクセス、外在的内在化的な語り、いいよどみ、沈黙、速さ、同じピッチではないゆらぎ、息がまじる声(気質)、テンポ、いいよどみなどの音声学的特徴をもとに評定していることが語られた。本成果は2023年度に学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度(1年目)は、EXPスケールの基準の見直しと評定トレーニング経験者の経験の定量化の探索的研究(研究1)に取り組み、評定者の内的体験についてグループインタビューで探索的に明らかにした。評定者は、からだの感じへのアクセス、外在的内在化的な語り、いいよどみ、沈黙、速さ、同じピッチではないゆらぎ、息がまじる声(気質)、テンポ、いいよどみなどの音声学的特徴をもとに評定していることが語られるなど、今後の音声データの分析に役立つような視点を得ることができた。一方で、1年目は、EXPスケール評定サンプルの収集と評定者による評定・タグ付け(研究2)をスタートさせ、トライアルカウンセリング、インタビュー、フォーカシングの録音データを収集し、集められたデータの逐語録を作成し、次に1セッションを数分単位のセグメントに分割し、それぞれの発話について従来の手法(Klein,1969)に基づき、3人の評定者により合議しつつEXP評定し、評定値を算出し、それらの発言にタグ付けに着手する予定であったが、まだデータを収集できていない状況である。2年目は上記のデータを収集し、音声データのデータベースを作成してゆく。申請時の計画では、さまざまな人の音声データを収集し、分析する予定であったが、研究1で明らかになったこととして、多数ではなく、ある1名分のサンプルについて時系列に音声学的特徴の変化をみていくほうが、特徴がわかりやすくなるのではないかという意見がでた。確かにそのような分析は必要となるので、当初の研究計画にはない個別セッションの音声的特徴の時系列分析を行う必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
音声データのデータベースを作成してゆくと同時に、1名分のサンプルについて時系列に音声学的特徴の変化をみていくほうが、特徴がわかりやすくなるのではないかという意見を踏まえ、初の研究計画にはない個別セッションの音声的特徴の時系列分析も同時におこなってゆく。具体的には、2年目では、トライアルカウンセリング、インタビュー、フォーカシングの録音データを収集し、集められたデータの逐語録を作成し、次に1セッションを数分単位のセグメントに分割し、それぞれの発話について従来の手法(Klein,1969)に基づき、3人の評定者により合議しつつEXP評定し、評定値を算出し、それらの発言にタグ付けに着手する。音声データの収集について、まだデータ数が少ない段階では、この個人サンプルの音声学的特徴の時系列的分析をおこなってゆくことにする。例えばフォーカシングのある1つのセッションを題材とし、その音声データにおける変化について分析する。その後データベースのサンプル数が多くなってきた段階で、当初予定していた、テキスト特徴分析と音声特徴分析(研究3)にとりくんでゆく。研究3では、まずは30セグメントを目標として、タグ付けされた EXP レベルの各段階に分類された各発言を集め、特徴分析などを行う。まず発言テキストの基礎特徴、語彙量、意味密度の解析を進める。次に各段階の音声特徴の分析を行う。研究1で明らかになった指標(いいよどみ、沈黙、速さ、同じピッチではないゆらぎ、息がまじる声(気質)、テンポ、いいよどみ)などは、従来音声の分析に用いられてきた指標と比較し、ピッチなど使える指標については用い、息がまじる声などは、従来用いられてきた指標にできるだけ落とし込んだ指標を作成し、分析を行ってゆく。
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