研究課題/領域番号 |
22K03155
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
冨家 直明 北海道医療大学, 心理科学部, 教授 (50336286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 社会的情動スキル / コミュニケーションスキル / 自殺予防 / 小規模校 / 潜在ランク理論 / 健全発達 / ソーシャルスキル / 高校生 / 生徒指導 / 媒介分析 / 肯定的再評価 / スクールカウンセリング / 小規模小資源校 / 心の健康教育 / 抑うつ予防 |
研究開始時の研究の概要 |
スクールカウンセラーの配置時間の乏しい小間口の小規模小資源高校を対象に、高校生の社会情動的スキルの育成を通じた自殺予防及びメンタルヘルス改善効果の検証を行う。社会情動的スキルは社会的スキルと感情調節力の1つである肯定的再評価を取り上げ、心の健康教育の実装は教科内で実現可能な範囲でカリキュラム計画を立てる。メンタルヘルスのアウトカム指標は、学校現場での使いやすさやニーズ合致を考慮し、公開された既存尺度の項目を潜在ランク理論によって再合成したものを活用する。対象校において最大3年間の介入を経て、効果の検証を行う。
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研究実績の概要 |
令和4年の児童生徒の自殺者数は合計514人であり、このうち68.9%を高校生が占めていた。自殺の原因・動機は学校問題がもっとも多く、そのうち人間関係の悩みが男女ともに20%程度と学業不振に続く2番目の割合となっていた。また,令和4年に生徒指導提要が改訂され自殺予防教育の推進や発達支持的生徒指導が盛り込まれた。こうした背景から、学校現場においては、自殺のハイリスク者を抽出して早期の支援につなげるスクリーニングの導入が検討課題となっている。そこで今年度は、自殺予防教育に取り組んでいる高校において、既存の抑うつ尺度(DSRS-CやK10)から自殺関連項目を抽出し暫定的に自殺リスクの指標とするとともに、この指標に対して発達支持的生徒指導の成果指標であるコミュニケーションスキル尺度から予測できるかどうかを検証した。 DSRS-Cの自殺関連項目を抽出して、High(48名)、Middle(127名)、Low(107名)を順序性のある群に区別し、順序ロジスティック回帰分析を行った。学年、DSRSの活動性低下因子、K10合計と、コミュニケーションスキル尺度の拒否、緊張対処、相談の3つのスキルが抽出されるとともに、これらの変数群による判別的中率は、High(52.08%)、Middle(68.50%)、Low(77.57%)、全体(69.15%)と、高い予測力が示された。コミュニケーション力の育成が自殺関連項目の抑制に効果的であることを示していた。 さらに、児童生徒が自殺リスクを高める順序を明らかにするために、DSRS-Cの活動性因子と抑うつ因子、K10を投入して潜在ランク理論によって重症度別にランク化した。その結果、項目の配列には失敗が続くなどの活動性の低下からはじまり、ゆううつ感や心身症状の発生、絶望感や抑うつ症状を経て「生きていても仕方がないと思う」という項目に至ることが明らかとなった。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究のベースとなる調査研究を遂行できた。 (1)自殺予防教育に取り組んでいる高校において、DSRS-CとK10から自殺関連項目を抽出し暫定的に自殺リスクの指標とするとともに、この指標に対して発達支持的生徒指導の成果指標であるコミュニケーションスキル尺度から予測できるかどうかを検証した。調査の対象は、4つの高校の参加同意が得られた高校生282名(1年100名,2年96名,3年86名;男133,女149名)であった。DSRS-Cの自殺関連項目を抽出して、High(48名)、Middle(127名)、Low(107名)を順序性のある群に区別し、順序ロジスティック回帰分析を行った。学年、DSRS活動性低下因子、K10合計と、コミュニケーションスキル尺度の拒否、緊張対処、相談の3つのスキルが抽出されるとともに、これらの変数群による判別的中率は、High(52.08%)、Middle(68.50%)、Low(77.57%)、全体(69.15%)と、高い予測力が示された。(以上、日本カウンセリング学会にて発表) (2)加えて、児童生徒が自殺リスクを高める順序を明らかにするために、DSRS-Cの活動性因子尺度と抑うつ因子尺度、K10の全項目を投入して潜在ランク理論によって重症度別にランク化した。その結果、項目の配列には失敗が続くなどの活動性の低下からはじまり、ゆううつ感や心身症状の発生、絶望感や抑うつ症状を経て「生きていても仕方がないと思う」という項目に至っていることが発見できた。(以上、日本ストレスマネジメント学会にて発表) (3)これらの内容を含む、小規模小資源校に対する支援の方法について、日本認知・行動療法学会や公認心理師の会のシンポジウムなどで発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)本研究課題における主要な柱は、学校現場における自殺のハイリスク者を抽出用スクリーナーの開発であり、これまでに、DSRS-C、K10の項目を潜在ランクに基づいて並べ替え、そのリスク強度を評価できる手がかりを得ている。しかし、その妥当性を検証するには至っておらず、今後は当該生徒の抽出とインタビュー等、質的アプローチによってリスク強度の確証を行うことが必要である。すでにいくつかの調査協力校においてそのリストの作成は終わっており、倫理的承認を受けた後に、インタビューを実施することを予定している。 (2)(1)の結果を踏まえて、これまでに得られたデータを学術的に公表する(学会発表と論文投稿)。日本カウンセリング学会、日本ストレスマネジメント学会、日本認知・行動療法学会などにおいて、学術発表を行うとともに、学会誌への投稿に着手する。 (3)ストレス経験下の認知的再評価尺度であるPRASという尺度を作成し、かつその尺度構成にあたって必要十分なデータを取得していることから、これらの学術発表を行う。論文投稿を進めていく。 (4)コロナ明けの思春期をターゲットにしたメンタルヘルスに関する学術データがたくさん出てきていることから、先行研究の知見を取りまとめるチャンスが到来している。そこで当該内容に関するシステマティックレビューの作業を行いたい。 (5)心理教育を協力校において実施し、その効果検証を行う。心理教育の内容の決定については、各教育委員会や学校と協議し、学校教育方針や教科カリキュラムの進行方針に一致するとともに、本課題が要請する一定の基準を満たした内容となるよう協議を深めていく。
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