研究課題/領域番号 |
22K03199
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅野 倫子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40553607)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 視聴覚統合 / 映像 / 音楽 / 実験心理学 / 適合性 / 視聴覚コンテンツ / 認知心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,短い映画のような視聴覚コンテンツにおいて,映像と音楽がどのような情報を含むときに「適合している」(一体のものである)と感じられるのかや,その適合・不適合が視聴覚コンテンツ全体の解釈にどのような影響を与えるのか(例えば,不適合な場合に,どのような感性的効果が生み出されるのか)を,そのメカニズムを含めて,実験心理学的な手法により明らかにしようとするものである。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,短い映画のような視聴覚コンテンツにおいて映像と音楽が「適合している(適合していない)」と感じられる条件を特定し,そのように感じられる際の認知処理を実験心理学的手法により明らかにすることである。一般的な視聴覚統合では視覚と聴覚のタイミングや意味が不一致だと統合が促進されないが,映像と音楽の場合は,視聴覚情報の印象の不適合により,元の視覚情報や聴覚情報にはない印象(皮肉等)が創発される可能性が指摘されており,特殊な視聴覚統合として位置づけることができる。この着想に基づき,映像と音楽の適合性に寄与する情報の処理レベル(低次の知覚,中間的な感覚間協応,感情・意味等の高次処理)と,そのレベルが感性的な効果の生起のしかたに影響する可能性について,実験心理学的手法により明らかにする。 1年目である2022年度は,短い視聴覚コンテンツにおける映像と音楽の感情(感情価(ポジティブ,ネガティブ)や覚醒度の高低)における適合性が,視聴覚コンテンツへの没入感の強さに与える影響を心理学実験により検討した。その結果,感情価と覚醒度が共に不適合であるときに没入感が最も低く,その条件に比べて,いずれか片方が適合でもう片方が不適合であるときのほうが有意に高まることが示された。しかし,そのような感情価や覚醒度における適合性の効果は,教示によって映像と音楽の関係に注目するように誘導するなどの操作の影響を受けやすいことを示唆する結果も得られた。映像と音楽の主観的調和感についても調べた。これらの研究成果の一部について,国内学会および国際学会で発表した。 また,上記の実験的検討と並行して,映画など視聴覚コンテンツの鑑賞や読書における没入やその関連概念についての理論研究および実証研究の文献調査を行い,2年目以降の研究の理論的基盤を強化した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,全3年の研究実施期間の前半で,映像と音楽の適合性が生じる情報処理レベル(具体的には,テンポ,感情,感覚間協応に着目)を特定するための実験研究を行うことになっており,この計画に沿って,1年目は感情について検討した。その結果,感情価と覚醒度のそれぞれにおける適合性と没入感の関係を明らかにできただけでなく,教示が影響する可能性など,さらなる研究展開に繋がる成果を得た。また,2年目以降の研究の質を高めるために,関連する理論研究や実証研究の調査を充実させた。以上のように,おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画では,全3年間の研究実施期間の前半(2022年度~2023年度)に,映像と音楽の適合性が生じる情報処理レベル(特に映像と音楽のテンポ,感情,感覚間協応の3点に着目)について検討することになっている。これに従い,2年目にあたる2023年度は,映像と音楽の,テンポや感覚間協応における適合性の認知処理についての検討を進める。その上で,1年目に実施した感情についての研究結果との比較検討を行う。その後,後半の計画である,映像と音楽の(不)適合が生む感性的効果についての研究に着手する。
|